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Intimidated

 Intimidate、という単語を、昔トロントに赴任したての頃に覚えた。日本にいる頃からつきあいがあったGregが、オフィスのメンバーの人と成りを教えてくれるのに「Dennisは見かけはIntimidatingだけど実は優しくて…」と言いかけて、「Intimidateの意味、わかるか?」と尋ねたのだ。正直に首を振ると、私が理解できる平坦な英語で説明してくれた。
 人を威嚇する、怯えさせる、という意味。「ate」で終わる動詞は、aから遡って3つめの母音にアクセント、という受験英語の知識を思い出し、前から2番目の「i」にアクセントを置いて、Intimidate、Intimidating、と何度もつぶやいてみた。

 最近、その単語をあのときのように、でも受け身形で、Intimidated、とつぶやくことが多い。駅コンコースの両側にずらり並んだ何十台もの液晶ディスプレイに、一斉に航空会社やPCメーカーの広告が映し出されるとき。Eメールの受信ボックスに、「今だけ70%OFF!」とか「ポイント5倍キャンペーン!!」「アンケートに答えて○○GET!」といった件名がずらり並んでいるのを見たとき。バナー広告をついクリックしたら「実感できなかったら全額返金!」「今すぐお申込み!!」という執拗な文句とともにしつこく点滅する「申し込み」マークが目に飛び込んでくるとき。
 マーケティングという名のもとの、強迫に近い暴挙のように感じるのは、私が被害妄想気味だからだろうか。世の中、不況でモノが売れなくなったという。それと反比例してIT技術やネットワーク環境が格段に発展した。モノやサービスを売る人たちは、この文明の利器を駆使して、消費者の物欲を煽るだけ煽ろうとしている。

 近頃の若者たちは、不要な宣伝メールは視界に入れることなく自動振り分けしたりして、煩わしさを感じたりしていないのかもしれない。カカクコムや口コミサイトの使い方を熟知して、効率よく必要な情報だけを入手する手立てに長けているのかもしれない。ましてや、毎日何通も飛び込んでくるあの手のEメールにいちいちIntimidateされるなんて、私一人よほど神経質な人間なのかもしれない。
 それでもやはり、「ネットワーク社会」と言われるこの時代、ターゲット広告とかポイント制による顧客囲い込みとかリコメンデーション機能とか、消費者の財布のひもをひたすら必要以上に緩ませようとするタクティクスに多くの企業が血眼になっている(ように見える)現状を見るにつけ、生活の本当の豊かさとは何か、ということを考えざるを得ない。見方を換えれば、IT・ネットワーク技術という素晴らしい手段を手に入れたというのに、それを活用して人間がやることといえば、単なるモノ売り。人間から物事を考える時間を奪い、欲しくもないものを欲しい気分にさせて、24時間ひたすら消費を煽る。
 今の時代の流れそのものに、私はIntimidateされている。

 Perfection of means and confusion of aims seems, in my opinion, to characterize our age.
 (思うに、手段は完全になったというのに目的が混乱している、それが今の時代の特徴ではないか。)
 アインシュタインの言葉である。
by miltlumi | 2012-12-07 07:22 | アインシュタインの言葉 | Comments(0)