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転んだあとの杖

 このたびの海外旅行は、生まれて初めて保険を掛けた。腸閉塞の手術後4ヶ月、少し食べ過ぎると切断したお腹の筋膜がちくりと痛み、コルセットで保護していないとぽよよんとおなかが出てしまい、まだ完全復活とはいえない。
 主治医からの「行ってもいいけど、食べ過ぎないでくださいね」「アメリカでEmergencyに入れられたりするとひどいことされますよ」という不吉な忠告と、アメリカでの盲腸手術代は200万円という噂を聞いて、日頃何かにつけて不注意な私も、さすがに転ばぬ先の杖、という気持ちになった。

 結果的には、幸い保険のお世話になるような大きな事故はなかった。ということはつまり、小さな事故は発生したのである。

 その1。World Trade CenterからChina Town、SOHO経由Union Square・Washington Square・Madison Square Parkを総なめしてCentral Parkまで歩いた日、右足の親指に水ぶくれができた。つい爪切りで皮膚をV字にカットして水を抜いたら、翌日さらに深層部に水がたまった。爪切りがまずかったかと、今度は安全ピンで水を抜く。3日目もやはり水がたまり、初めて「水まめはつぶすな」と誰かが言っていたのを思い出す。
 いつもなら安全ピンで治るのに、というのはただの言い訳で、実はただでさえ人の言うことを聞かない性格が加齢のせいで記憶力さえ減退している証拠である。
 遅まきながら、ものは試しとそのままにしてみた。すると、水はたまったままだが歩いても特に痛くない。やはり人の言うことは信じるものである。

 その2。ホテルの部屋でキャスターつきのチェアに座ったまま横移動しようとしたら、左足の薬指にキャスターが触れた。まともな反射神経の持ち主なら、即座に椅子を止めるか足を引っ込めるのに、まずい、と頭ではわかっていながら体が動かず、そのままずるずる薬指はおろか小指までキャスターに轢き込んだ。さらにドン臭くも、アタマも身体もフリーズして、数秒間自分の体重と椅子の重量を2本の足指で受け止め続けてしまった。
 疲れて気力がなくなっていたのだ、というのはただの言い訳で、実はただでさえのろまな反射神経が加齢のせいでさらに機能不全に陥っている証拠である。
 ようやく尻を持ち上げてキャスターから指を引き抜くと、早速青黒くなり始めている。今度は頑張ってアタマを働かせ、製氷機からもらってきた氷をグラスにいれて足先に置いて冷やす。そのまま30分も冷やしたら、痛みも引いて青痣にならずに済んだ。

 その3。Bostonに着いて最初に訪れたPublic Garden。真っ青な空の下、緑の木々の間に輝く池の水面に、逆光で輪郭を天使のように煌めかせた鴨たち。シャッターチャーンス!と駆け寄って、歩道と芝生を隔てた低い柵を飛び越えた。と思ったら、柵の支柱のげんこつ状の鋼鉄に思いっきり右足の膝をぶつけてしまった。一瞬地球上のすべてが止まったような痛さ。
 池と鴨に気を取られていたのだ、というのはただの言い訳で、実はただでさえ鈍い運動神経が加齢のせいでさらに鈍重になっている証拠である。
 我慢して歩き続けていたが、痛みがどんどん増してくる。Pharmacyに飛び込んで湿布を探す。5枚で$7.99は高い気がするが、背に腹は代えられない。5枚のシートを1日2回取り替えて2日半。追加購入せずとも、無事膝の痛みは治まった。

 歳をとるにつれ、「転ばぬ先の杖」をどれほど用意しても、やっぱり転んでしまう。大切なのは、やってしまったあとにどれだけ迅速に対処できるか。
 「転んだあとの杖」、である。

<膝を強打した直後、痛さにめげずに撮影した写真↓>
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by miltlumi | 2014-09-28 12:28 | NY after 8 years | Comments(0)