2018年 02月 20日 ( 1 )

昼下がりの銀行にて

 断捨離の一環で、使っていないクレカ解約と銀行の休眠口座閉鎖を断行した友達を見習い、私も某銀行某支店に出向いた。高金利に惹かれて1度だけ定期預金を預けて満期解約したきりの口座だ。

 自動ドアを開けると、ホテルのドアマンみたいに男性が立っている。右手にはリビングルームのような白いソファの待合いコーナー。都市銀と違って、窓口は全て半個室形式だ。
 「ご解約とのことですが、弊行では優遇金利の定期預金をご用意しております」
 差し出されたパンフには「0.15%」という数字。ただいま預入れ中の0.10%との差に一瞬クラッとくるが、解約の初志貫徹。「いえ、結構です」

 にっこり即座に引き下がった彼女は、通帳が古いので新規に切り替えさせていただきます、と背後のドアの向こうに消える。解約するにも、一定のペーパーワークを経ないといけないのだ。さすが銀行。
 手持ち無沙汰なので、つい金利のことを思い返す。0.15マイナス0.10=0.05。100万円で年間5百円。ふむ。1千万円なら5千円。ほー。
 彼女はなかなか帰ってこない。10分経過。本を開くが、あいにくつまらない章である。

 ようやく戻ってきた彼女は、新旧2冊ずつ(定期と普通)通帳を手にしている。
 「通帳の切り替えができましたので、これから解約手続きをさせていただきます」
 えっ、なんでまとめてやらないの?という言葉が喉元まで出たが、ここは銀行。段取りは1つずつ。決してはしょってはいけない。目の前で私が記入した用紙の氏名と日付だって、彼女はきっちり3回指差し確認していた。
 「終わりましたらお呼びしますので、あちらでお待ちください」

 ということで白いソファへ。シフト交代したのか、最初のドアマンとちがう男性がやってきて、テーブルの上の雑誌数冊、わずか5度ほどのずれを直角に整えて、また立ち去る。取り澄ましたブティックのラックに整然と畳まれた服のように、手を伸ばす勇気がでない。
 間近のブースからは、株の乱高下とオリンピックの会話。東京オリンピックまでは大丈夫ですよきっと、とかなんとか、延々続いている。世間話より、そろそろ具体的な商品説明に入ったほうがいいんじゃないでしょうか。

 なんとなく鼻がぐすぐすする。ティッシュを探そうと立ち上がると、直角マンがすかさず近づいてくる。
 「何か?」
 「あの、ティッシュはどこかにありますか?」
 「それでしたらこれをお使いください」
 テーブルの上、直角雑誌の隣に、6つのポケットティッシュ入りのカゴ。がばりと全部失敬したら、直角マンはどう反応するだろう。

 まだ呼び出しがない。ソファの隣にいるデカい青い象のぬいぐるみ(あ、これ言ったら、どの銀行かわかっちゃうかな)をなでる。鼻の先がくるんと上向いて、スキージャンプ台みたいで可愛い。これ、欲しいな。しかしポケットティッシュとちがって、鞄に滑り込ませるには大きすぎる。でも、欲しい。

 ようやく番号を呼ばれる。「解約」というハンコが押された、さっき作られたばかりの通帳と共に、「残金がございました」と差し出されたのは、31円也。

 45分かけてGETした31円と、GETできなかったポケットティッシュと青い象への未練を手にしたまま、早春の陽光の中に踏み出した。





小さい春、みーつけた!



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by miltlumi | 2018-02-20 19:11 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(0)