つかぬことを伺いますが、天国を見たこと、ありますか? 私は、なんとつい先日、見てしまいました。 熱中症でアタマをヤラれたわけでも、交通事故で生死の境をさまよったわけでもない。「Medicha」という、メディテーションスタジオ。 座禅や瞑想が、マインドフルネスとかMeditationといった外来語として再輸入されて流行っている。集中力や創造性が高まり生産性が向上する云々と、禅の精神に真っ向から対立するような、思いっきり資本主義に毒されたような、現世利益的なメリットが喧伝されていて、正直私はアンチであった。一応、西麻布の永平寺別院長谷寺やビジネススクールのマインドフルネスコース、自宅で起き掛けに15分×1か月自主トレ、などトライしたが、全然効果なし。 それを知っている友人が、「思いのほか面白かった」とあえて紹介してくれたのが、Medichaである。 ネタばれになるので詳細は省くが、簡単にいうと、4ステップから成る1時間20分のコースで、最初の2ステップでは2つの空間を自由に行き来する。 そのうちの1つに足を踏み入れた瞬間、「天国」を感じた。 生死の境から生還した人々が「お花畑が見えた」「すごく美しい光に包まれた」「至福な気持ちがした」と証言している、あの感覚である。さすがに「死んだおばあちゃんが出てきて『まだ来るな』と手を振った」というような手の込んだ演出はないが、「♪天国よいとこ、一度はおいで♬」と皆を誘いたくなるような場所なのである。 2つめの空間は、いわば「墓場」。棺の中に横たわっていると、こんな光景を感じるんだろうなぁ、というような場所。でも、決して暗かったり悲しかったりするわけではない。深い、永い眠りにつく前の、安らいだ感覚。これなら死んでもいい、と思ってしまう。 科学的に説明すれば、つまるところ、あれこれ五感を刺激する仕掛けのある空間に身を置くことで、神経伝達物質であるエンドルフィンやらセロトニンが放出され、交感神経と副交感神経がバランスを取り戻し、心身ともにリラックスできたのである。 アタマではわかっているものの、その生理現象が教科書通りに自分の心身で速やかに起動するのを感得する体験は、なかなかすごい。 もっとずっと居続けたい、と後ろ髪をひかれながら、第3ステップへ。照明を落としたドーム型の部屋で、「手を床につけて、その感触を感じてみましょう」というインストラクションに従うと、来宮神社の大楠や高千穂の国見ケ丘やセドナのカチーナウーマンで感じたのと同じパワーが、ふつーの建物のふつーの床素材から伝わってくる(気がする)。 そこから先、インストラクションの問いかけは聞こえているけれど、答えを考えようにもやわやわとまとまらず、寝ているようで寝ていない、体と心がふわふわとほどけていくような、不思議な感覚。これが、いわゆるメディテーション、無我の境地か!? 最後のステップは、お香を焚いてお茶を飲む。はぁぁあ。 建物を出たら、ものすごい夕立だった。乗ってきたちゃりを置き去りにするわけにもいかず、土砂降りの中を漕ぎ出でる。夏の雨は、滝のプールに入ったようで、むしろ爽快だ。さっきの余韻をもう少し味わいたくて、雨宿りがてら広尾のオープンカフェに立ち寄る。 温かなカフェラテときめ細かなティラミスが、しみじみ美味しい。 隣のスキンヘッド男性のテーブルで、ビールジョッキが2つ水滴をしたたらせている。 額にバンダナを巻いた彼女がジョギングから戻り、二人でグラスを合わせる。 お向かいのベーカリーのディスプレイガラスが、大粒の雨に煙っている。 普段と変わらないはずの光景に、エンドルフィンだかセロトニンが放出されるのがわかる。安寧な気持ちは、実は毎朝感じることができるかもしれない。 甥っ子のイタリア新婚旅行土産のマグカップに、なみなみと注がれたコーヒーの香り。 暑さがまだ本気を出さないうちに開け放った窓から、熱心な鳥と蝉の声、そして風鈴。 差し込む朝陽とサンキャッチャーが創り出す、壁一面に揺れ動くプリズム。 窓の外には、植木屋さんが刈っても刈っても、気まぐれに伸びてくる植栽の緑。 天国は、一瞬で創り出せるのかもしれない。
by miltlumi
| 2019-08-30 09:46
| 私は私・徒然なるまま
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