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今頃、紅白歌合戦

 このたびの紅白歌合戦にヤラれた。お年玉年賀はがきの当選発表も終わり、世の中すっかり日常に戻ったのに、まだ私は紅白を引きずっている。
 ここ10年ほど、夜7時のNHKニュースからなし崩しで見るのは前半だけで、途中で「つまらん」と吐き捨てて、律儀に最後まで見ようという母を茶の間に残してとっとと寝てしまうパターンだったのに。

 この大晦日は、母の家の隣に住む兄のところで義姉特製の田舎蕎麦を食べているうちに、紅白歌合戦が始まった。最近人気だというお笑い芸人や何度見ても見分けのつかないジャニーズ系の男の子たちの大写しに目がくらくらする(兄の家のTVは50インチのブラビアだ)。早くもとっとと退散したくなる。
 ところが、夕飯の後片付けが終わると、正月恒例の家族麻雀が前倒しで始まってしまった。牌をかき混ぜるじゃらじゃらという音と、TVからの聴き慣れないメロディー。アルファベット3文字の名のもとにおんなじような顔をした大量の少女たちがきゃぴきゃぴな衣装を着て飛んだり跳ねたりしている。21歳の甥っ子が、画面にくぎ付けになって一緒に口ずさむ。「おまえの番だぞ」と何度も父親に怒られる。
 伍代夏子や香西かおりの番が来ると、今度は母が、酒と女がどーしたこーしたと歌う。その声がひときわ高くなり、合い間に「うほほ」というほくそ笑みが加わると、引きのいい証拠である。母は萬子で染め抜くのが好きなのだ。
 こうやって若い子と年寄りを取り込むだけでは物足りんとばかりに、「花子とアン」や「マッサン」の出演者がぞろぞろ出てきて面白くもない掛け合いをやる。つまらん、と思うのだが、麻雀を途中で放り出して席を立つわけにはいかない。

 と、ようやく私の知っている歌手が出てきた。「セーラー服と機関銃」の頃からなぜか目が離せなかった、薬師丸ひろ子。しかも歌うは「Woman “Wの悲劇”より」。あの透明な声とメロディーがぴったり一致して、本当に好きなのだ。これまでの沈黙を破り、甥っ子と母に対抗して歌い始めた。
 テロップなしで2番まで歌う自分の美声(?)に酔ううちに、役満を振り込んでしまった。しかしちょうど「ああ時の河を渡る船に」のサビである。八千点を差し出しながらなお歌い続ける。「こいつ悔しいくせに、歌うたってるから文句も言えないでやがんの」と兄にからかわれても、「せめて朝の陽が射すまで」と歌い上げて終わるまで、何も言えない。あー、久しぶりの薬師丸ひろ子、気持ちよかった~。しかし手元の点棒がスカスカだ。

 あとはもう麻雀を続けながら、福山はヅラかどうかを議論し、中島みゆきのフリフリの衣装にこいつ何歳だ!?と悪態をつき、三輪明宏の素顔をもっとアップで映せと迫り、大トリの松田聖子までなだれ込む。聖子ちゃんカットはしたことはないけど、やっぱり同い年の彼女の動向は常に気になるのだ。
 というわけで、結局白組が勝つところまで見届けた。悔しいけれど、「全員参加で歌おう」というNHKの目論見にまんまとはまってしまった。

 以来、私の頭の中では薬師丸ひろ子メドレーが鳴り響いている。この週末は家事をしながら薬師丸ひろ子の2枚組CDを引っ張り出して聴きまくった。やはり声が若かった。
by miltlumi | 2015-01-20 19:56 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(0)
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