歳相応に物忘れが頻発するようになり、「あれはどこに置いたっけ?」と家の中を探し回るときのもどかしさが日常茶飯の感情になりつつある。
東京に初雪予報が出された先日もそうだった。この冬初めて、去年買ったロングブーツを履こうと思った。が、ない。玄関横の物入れにあるはずが、ない。ロングブーツの箱は嵩張るので、別の場所に入れたんだっけ。一人暮らしの狭い家、しかも整理好きの私にとって、「開かずの間」とかパンドラの箱まがいの段ボールなどは皆無だから、ありそうな場所は限られている。クローゼットやら押入れやらを探したが、やはり見つからない。 ひとしきり探して、もう一度最初の物入れに立ち戻り、もしや…と思った。そこには、ロングブーツの代りに、ブーティ(ファッションに疎い殿方へ:ショートブーツのことです)の箱がてん、と置いてあるのである。 去年買ったのは、ロングブーツではなくて、ブーティだった、らしい。物忘れの初期段階では、ようやく思い出した時に「やっだーもうっ そうだったわ、忘れてたー」と膝を打つものである。それがこのたびは、ロングブーツよりずっと小さな箱を眼前にして、「これこれ、これだったわ」という感情が湧き起こらないのである。物忘れ症候群、第二段階に進んでしまったか。 箱から出てきたブーティは、確かに見覚えがある。アトレ恵比寿のカネマツで買った。でも、変だなあ。これとは別に、ロングブーツもゼッタイに買ったはず。しぶしぶブーティを履きながら、もやもやは晴れない。 帰宅しても、やはりロングブーツの“記憶”は消えない。それどころか、具体的なデザインまで思い浮かぶのである。履き口が折れ曲がっていてそれを伸ばすと膝が隠れるくらい長くなるのだ。まさか、旅行用のでっかいキャリーケースに入れた? もしかしたら、物入れの奥に忍者寺みたいな隠し扉があったっけ。あらぬ想像をする自分に自信が持てなくなってくる。冷蔵庫になぜだか靴下が入ってる、というボケ老人の話を思い浮かべ、背筋が寒くなる。 何度目かの探索も虚しく、ロングブーツは買わずにブーティを買った、という結論に至らざるを得ない。あのデザイン、単に夢だったんだろうか。私の記憶力はどうなっちゃったんだろう。 翌日も午後から雨の予報。ロングのレインブーツを履きながら、やっぱり「あの」ロングブーツのことが頭から離れない。降り始めた雨の中を美容院に向かい、もう20年来のつきあいになる同世代の美容師さんにこの話をすると、「ロングとブーティ、買うときどっちにしようか相当迷ったんじゃないの?」 …そうだったのか。言われてみれば、店員さんが折り返しを伸ばしながら「こうするともっとロングになりますよ」と鏡越しに微笑んだ記憶があるようなないような。 単にモノのありかを忘れるのではなく、買ったと思ったものは実は買っていなかった。。。 新種の物忘れ、である。とほほ。これからの人生、この新しい感情と、仲良くつきあっていかねばならない。
by miltlumi
| 2013-12-21 12:45
| 機嫌よく一人暮らし
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