なめてはいけない (上)

 探究心が薄いタイプである。表面だけぺろんと舐めて、「あ、わかった、そういうことね」と納得し、それ以上突っ込むことをしない。「そういうこと」が「そういうこと」であればそれでもいいのだが、世の中、想定外、ということが頻発する。
 妙義山がそれであった。軽井沢の手前、唐突に現れる水墨画みたいな峻嶮な山並みを何度か目にしたことがあった。まあつまり、そういうものだと思っていた。

 間近に見るともっとスゴイ、というので、このたび行ってまいりました。たしかにスゴイ。いきなり切り立った岩の壁。「屏風岩」という名前そのもの。麓の駐車場からいきなりそそり立つ景色に驚嘆しつつ、十分わかった、と私の浅はかな探究心はそこで終止符を打った、はずだった。
 ところが、連れが「第一石門ってとこまで行ってみない?」と言い出した。

a0165235_923572.jpg 天然の石の門。そういうの、カナディアンロッキーでもメルボルンのポートキャンベルでも見たことあるし。でも「すぐそこだから」と言われ、手ぶらでぶらぶら登り始める。出てきたのは、屈強な鎖が垂れ下がった岩肌。「かにのこてしらべ」と看板が張り付いている。あ、わかった、この鎖につかまって登るのね。そういう場所があるとガイドブックに書いてあったから、さほど驚かない。日頃ジムで鍛えた握力・脚力にモノを言わせ、難なくクリア。
 ほどなく見えてきた第一石門。なんや、大したことないやん。と思ったら、実は意外に遠い。親切な高尾山あたりとちがって、丸太の階段なんてものはなく、先人が踏み固めた天然自然の岩や木の根を登って行く。ようやくたどり着くとその高さにびっくり。しかも門をくぐるにはまず相当な傾斜の岩をよじ登らねばならない。ちょ、ちょっと、ワイルドじゃない? ちょっとだけ想定外。まあでも、これで石門クリア、よくわかりました。

 引き返そうとしたら、再び連れが「第二石門が見えるとこまで行ってみようよ」 えっ。そんなん、いくつ見ても一緒じゃん。それより軽井沢のカフェは? という言葉を飲み込み、岩肌に白く描かれた矢印の方向に進む。先ほどにも増してワイルドな急坂、というより崖? 
 上から降りてきた夫婦連れに「第二石門までどのくらいですか?」と尋ねると、「ああ、そこ登ったらすぐですよ」と言われ、気を取り直して進む。そして出てきたのは、どわーんと立ちはだかる岩のはるか上にぽかりと青空をくり抜いた第二石門。見えた。あれか。第一より狭いみたい。高いね。わかった。ありがとう。

 「せっかくだから、行ってみない?」 私とちがって探究心旺盛は連れは、先へ先へとのめりこんでいく。もう十二分にわかったのになあ。まあでも、たしかにせっかくだし。こうやって、私一人では決して行かなかったであろうところに行き、面白い体験をしたことが何度もあるし、わりと近そうだし。軽く思ってさらに踏み込んだのが運のつき、であった。
                                   ・・・(中)につづく
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by miltlumi | 2013-11-16 09:04 | フォトアルバム | Comments(0)
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