年末調整の季節である。役職員1名の会社を作っているので、この時期になると税務署から「年末調整のしかた」という分厚いマニュアルが送られてくる。この手のことは税理士さんに丸投げしているので、これこれこういう書類が来ましたけど…とメールでお伺いをたてる。即座に返事が来る。
「あのマニュアルは、焚きつけにするくらいありますので、納付書だけ送ってください」 わはは。と笑ったあと、ふと我に返った。この人、私より10歳以上若いはず。「焚きつけ」って実際見たことあるのかしら。 私なんて、小さい頃住んでいた木造平屋建ての社宅は、幼稚園くらいまでは正真正銘「焚きつけ」が必要なお風呂だったもんね。彼はお父様の税理士事務所で働いているので、きっと父親の独り言をパクっているのだろう。 と思うと、この手の常套句、枚挙にいとまがない。 出来の悪い息子を持つ夫婦の会話、その1。 「あの野郎、ろくでもないことばっかりしやがって。二度とうちの敷居をまたがせないぞ」 「あら、うちはバリアフリーにしたから、もう敷居なんてありませんよ」 出来の悪い息子を持つ夫婦の会話、その2。 「あの野郎、毎晩毎晩ほっつき歩きやがって。座敷牢にでも入れておけ」 「この狭いうちにお座敷なんてありません。あっても、あの子に独り占めさせる余裕はありません」 出来の悪い息子を持つ夫婦の会話、その3。 「あの野郎、こんな悪さばっかりしてたら、とても畳の上では死ねねえぜ」 「何言ってんの。全部フローリングにしちゃったんだから、あなただって畳の上では死ねませんよ」 結婚前の娘と父親の会話、その1。 「お前の相手、ちょっと頼りなかないか。どうもこう、大黒柱ってタマじゃない気がする」 「大丈夫です。うちを建てるときはツーバーフォーにするから」 結婚前の娘と父親の会話、その2。 「おまえ、親にあれこれ嫁入り道具をせびるのもいいけど、手鍋下げても、って気持ちが一番大切だよ」 「あ、お鍋はいらないから。その代わり電子レンジお願い。スチームつきのやつね」 結婚前の娘と父親の会話、その3。 「あちらに嫁に行ったらな、まず最初にあちらのお袋さんから味噌汁の味を教わるんだぞ」 「ほんだしかしら、それともシマヤだしの素? 『料亭の味』ならだし入り味噌だから楽なんだけど」 きりがないな。それにしても、こういうのみんな、ホンモノをリアルタイムで垣間見たことがあるのは、「戦前生まれ」の親を持つ、私たちが最後の世代かもしれない。 私の母は、嫁入り道具だった中華鍋をかれこれ50年以上も使い続けている。
by miltlumi
| 2013-11-03 10:18
| 機嫌よく一人暮らし
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