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ええかっこしい

 その昔、まだ既婚で夫と仲良しだった頃、週末は必ず一緒にスーパーへ行った。1週間の食材や洗剤その他日用品が入ったレジ袋を、二人で平等に分担したものだ。中でも大荷物になるのが、当時飼っていた2匹の犬のためのペットシーツである。100枚入り50㎝×60㎝×20㎝、けっこうずっしりくるし、何しろかさばる。だが、なぜか夫がそれを持ってくれることは決してなかった。代わりに5kgのお米とかCCレモンのPETボトルとかお醤油を持ってくれるのだから、別に文句はないのだが、どうしてだろう…。ある日、ふと気づいて尋ねてみた。
 「もしかして、『クン太』って書いてあるから、持つの嫌なの?」
 案の定、「…うん。」という答え。なんたるええかっこしい。ペットシーツの横っ腹には、思いっきりでかく商品名が表示されていて、それが彼には気恥ずかしいのだった。

 仕事の同僚で、プライベートでもかなり仲のよい男性がいた。彼は米国赴任中だったので、お互いの出張時にはよく一緒に食事したりしていた。
 あるとき彼の東京出張の際、JFKの免税店で化粧品を頼んだことがある。愛用している美容液の在庫がなくなり、近いうちに私が出張する予定もなかったので、何気なく彼に頼んだのである。別にヘンな店でヘンなものを買うようお願いしたわけではないし、二人の仲なのだから…という甘えもあった。
 しかし、彼はその依頼を見事に無視した。「店になかった」とか見え透いた嘘をつくわけでもなく、その話題に一切触れようとしなかった。後日共通の知人から聞いたところによると、「あいつ、オレに化粧品買ってこいだなんて…」と憤慨していたそうだ。考えてみれば、彼もすごいええかっこしいで、服装や髪形や持つ鞄などに非常に気を遣う人間だった。こういうヤツに限って、ミラノのブランドショップで彼女用の下着を買うことには何の抵抗も示さなかったりするのだ、たぶん。

 会社を辞めて、その同僚と会うことも海外出張の機会もなくなってしまった。例の美容液の調達は、昨今もっぱら現役サラリーマンの兄にお願いしている。彼は、ええかっこしようにも気を遣うほどの髪の毛を保持していない。あるときマスカラの在庫もなくなったので、おそるおそる頼んでみた。ランコムのなんたらかんたらのウォータープルーフ。難しいかなあ、と思っていたら、帰国早々「言われた名前のやつは廃番だそうだ」という連絡が入った。
 「で、後継機種(兄はクルマ会社勤務である)がいくつかあって、『ながーくするのがいいか、ふとーくするのがいいか』と訊かれたから、『ながくてふとくするやつにしろ』と言ったら、これを勧められた」と、ランコムの新製品、もちろんウォータープルーフを取り出してきた。
 ブラザーコンプレックスと言われるのを覚悟の上だが、ええかっこしいじゃない人が好きだ。

 9月の旅行以来ハマっている韓国コスメ。先頃ソウルに旅行予定の男性に、おそるおそる頼んでみた。あっけらかんと「いくつ買ってくればいい?」と尋ねられた。
 やっぱり、ええかっこしいじゃない人が好きだ。
by miltlumi | 2012-11-16 14:47 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(2)
Commented by touhoutakaya at 2012-11-18 01:44
お兄様、ナイス!

以前からちょくちょくお邪魔させていただいているのですが、コメントするのは初めてです。
お兄様がナイスすぎて、つい。
これからも更新楽しみにしております。
Commented by miltlumi at 2012-11-18 08:56
touhoutakayaさん、コメントありがとうございます! 
自分で言うのもなんですが、おっしゃるとおり、兄はナイスです(笑)。マスカラが何するモノか知ってたってこともオドロキです(笑)
これからもどしどしコメントしてくださいね! よろしくお願いします♪
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