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正しい風邪の引き方 (下)

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 風邪3日目は、あいにく朝から仕事の予定が入っていた。書き忘れていたが、風邪を引いたら、初期に病院に行って体温を測った後は、決して再び体温計に手を伸ばしてはいけない。特にどうしても仕事に行かねばならない時はなおさらである。
 体温を測ってみて、まだ37度以上あったりしたら、もうその数字を見ただけでアタマがクラクラして通勤電車に乗る勇気が大いに削がれるし、逆に平熱に戻っていたりしたら、なんだかソンをしたような、仕事のために生きてんのか!?みたいなやけっぱちな気持ちになる。
 だから、ともかく多少頭がふらふらしても、体温を測ってみようなどという往生際の悪いことはせず、とっとと会社に行く。電車の中では、ちゃんと日経新聞を読むこと(昨日とらなかった朝刊と夕刊も含め、ボリューム満点である)。

 仕事中は、気持ちいつもより動作がのろくなるが、それも「あり」だ。会社勤めをしている頃、つらい身体に鞭打って出社して、回転の遅くなった頭を何とか動かして、赤く腫れた喉からしぼり出すしわがれた声でモノを言うと、「そのくらいのペースのほうがちょうどいい」とホメられたものだった。
 ようやく最低限やることだけやって、「風邪なんで」と言いながらオフィスを辞し(ホワイトボードに「早退」と書かずに退社できるのは、しがない業務委託員の数少ない特権である)、遅めのランチをとりに外に出る。ここ数日で何十回目かの「栄養つけなきゃ」をつぶやきながら、それでも入る店がなかなか決まらないのは、風邪のせいで決断力が鈍っている証拠である。やっと入ったカレー屋さんでホワイトソースベースのドリアを注文するのも、やはり的確な判断力が失われているとしか思えない。
 ドリンクバーのグレープフルーツジュースを何杯もおかわりし、喉の痛みが昨日より薄らいでいるのに安心しつつ、ドリアが水臭い、と思わずむかっとする。でも、風邪のせいで味覚がおかしいのかも。風邪は全ての怒りの輪郭をぼやけさせ、和らげる特効薬である。 

 そして4日目。朝、やはり6時過ぎに目覚める。幸い今日は仕事はない。「大事をとらなきゃ」と再び目をつぶるが、8時から後はもう寝られない。とりあえず起きて朝食を食べて、しばらくパジャマのままぐずぐずする。鼻のあたりは、ますます「外在化」が進み、すっかり威力は衰えた風邪菌の最後の1片がくすぶっている。再びベッドに戻りたい気分にならない。病は着実に快方に向かっている。
 着替えて、改めてコーヒーを淹れて、さてどうしようか。真っ先に思いついたことを行動に移す。すなわち、スポーツジムに行って、いつもの自転車と筋トレに加えて、ジャクジーとサウナで汗を流して、体内に残っている風邪菌とクスリのデトックス
 病み上がりに無理すると死ぬよ~、というもう一人の自分の声を遠く聞きながら、サウナで「今日は汗の出がいい」と悦に入る。体重は、病み上がりのくせにいつもより1kgちょっと多かった。「栄養をつけ」過ぎてしまったようである。

 かくして、5月の風邪は4日間でご退散いただいた。なかなか順調な経過であった。明日から、「栄養つける」ための無茶食いができなくなるのが、ちょっと名残惜しい。
by miltlumi | 2012-05-26 20:32 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(0)
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