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階段にて

面識のない人とのミーティングがあった。連れの同僚も、先方とは電話で話したことしかない。
相手方の会社のロビーで待っていると、40代にはまだ届かないような、でも社会人としては立派に経歴を積みつつある感じの、眉の濃い男性がやってきた。

「あ」と思った。つやつやと焦げ茶に光る美しい杖をついていたのだ。

会議室は2階にあって、階段にて_a0165235_10454529.jpg
宝塚の舞台みたいな半円形の階段に向けて、
吹き抜けのロビーを横切っていく。
彼は、やはり少し足をひきずって歩く。

大理石の階段のふもとに着くと、
彼がにこやかに言う。
「会議室は階段を上がった右手ですので、
どうぞお先にお上がり下さい」
同僚が屈託なく尋ねる。
「お怪我されたのですか?」

「あ」と思った。美しい杖をついているのに。

「いえ、昔からです」
問われ慣れているのか、彼もすんなり答える。

私は、緩やかに微笑んで、歩調も緩めて、
同僚と彼の中間あたりで階段を上っていく。

階段の上からは、初夏の眩しい陽射しがさしこんでいた。
by miltlumi | 2011-06-26 10:50 | フォトアルバム | Comments(0)
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