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キッチンハイターの自己責任的使用方法

 使うたびに思うのだが、キッチンハイターはすごい。お醤油やコーヒー、カレー等々で摩訶不思議なパステルに染まったお膳拭きが、瞬く間にすっきり真っ白になる。指紋をも溶かすその威力に敬意を表しながら、これって飲んだら死ねるんじゃないかと、ふと思った。
 ボトルには「まぜるな危険」とはあるものの、「これは飲み物ではありません」とは書かれていない。PETボトルのように透明でもなければ2リットルサイズでもなく、また冷蔵庫で保管するわけでもないのだから、100人に1人もいない物好きへの警告はスペースの無駄か。
 
 でも、最近の世の中は、ごく少数の人々のためのこの手の「予防的」措置が多すぎるような気がする。私自身がそういう措置に助けられたりもするから、エラそうなことは言えないが、やはり過剰すぎる。
 キッチンハイターを誤飲して死んだら、花王を訴えられるか。たぶん、否。では、ピンク色の石けんを幼児がぼりぼり食べて死んだら、どうか。消費者センターは「子供がお菓子と見紛うようなキレイな色の石けんにはしかるべき注意書きを書くべし」と騒ぎ立てるのではないか。コドモが字を読めるかどうかまで、石けんメーカーは責任をとらねばならないのか。そんなの、自己責任でしょ。

 「自己責任」という言葉が、数年前に日本中を席巻したとき、国じゅうがものすごく険悪な雰囲気になった。険悪になったということ自体、日本社会の未熟性を象徴している。
 ヨーロッパに長く住んでいる友達が久しぶりに帰郷して、一緒にお茶をした。カフェの入り口で、「段差があるのでお気をつけください」といううら若き店員の言葉に、思わず彼女がつぶやいた。「ここで転んで骨折ったって、お店を訴えたりしないわよ」
 その通り。イタリアの街中のカフェなんて、段差どころか石畳ででこぼこだし、それこそ犬の糞は落ち放題。だからって誰も他人を訴えたりしない。自分で気をつけるだけのことである。

 どうして日本人は、とっても基本的なことができなくなってしまったのだろう。自分が反省する代わりに他人を訴追する。サービス提供者は、訴えられても「こちらはやるべきことやってます」と言えるようどんどん注意書きを加える。それを怠った会社が叩かれる。叩かれた会社は、万全を期して、あらゆる間抜けな状況を想定した注意書きをひねり出す。
 かくして商品のパッケージは過剰な注意書きで満艦飾。デパート、地下鉄、あらゆる公共の場は「ご注意ください」の自動音声で大賑わい。
 
 「自殺したい人はキッチンハイター1本を頑張って飲み干しましょう。途中でのどが焼ける感覚がありますが、それは効果が出ている証拠です」
 「キッチンハイターで顔を洗ったら、角質がとれてすべすべのお肌になります」とネットに投稿したら、さて、商品の注意書きは改訂されるだろうか。
by miltlumi | 2011-03-08 10:34 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(0)
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