豪雪地帯の方々には申し訳ないが、そうでない地方の人にとって「雪」はロマンだ。天地が全て白く染まる。しかも毎年起こるわけじゃないというレア感が有難味を増す。
私が記憶している限り、東京(もしくは神奈川)の平野部が数10cmの雪らしい雪に覆われたのは、1967年(…年がばれる)、1980年、1994年、2001年(2002年だったかな)。一番最近の記憶が一番曖昧なのは、学校の何年生、という1年単位のプログレスがなくなったせいだ。 見事に積もった雪の一番の楽しみ方は単純。公園の芝生(が生えているだろうと思われる平地)の上に、両手両足を広げてばったりと仰向けに倒れこむこと。 雪の日でなくても、芝生の上に寝っ転がるのはとても気持ちいいが、①晴れた②週末の③昼間、という3条件を一つでも満たさず大の大人が単独行動をとると、泥酔してるとかアタマがヘンだとか誤解されかねない。その上、犬の糞なんぞが落ちていないか一応きちんと確かめないといけないし、無事倒れても起き上がった時に洋服に芝がついてチクチクするなど、楽しみに付随する負の副産物を考えると、ちょっと面倒になる。 その点、雪は全ての雑事を排してくれる。糞は勿論多少の石ころさえ雪のクッションで包み込んで、地面は遍く滑らかな曲線を描くから、基本的にどこに倒れこんでも大丈夫(とはいえ、漬物石大の石が隠れていないとも限らないので、いきなりアタマから倒れこまないよう配慮は必要である)。 あとからあとから落ちてくる雪片は天然の3D画像(もとい、こちらが本家か)。無限のかなたからふわりふわりと紡ぎだされてくる、その最初の点をみつけようと目を凝らして見つめるうちに、自分の方が天に昇って行っているような気分になる。 似たような浮遊感は水中でも感じられる。泳ぎが不得意な私の、お気に入りのプールの楽しみ方は、うつぶせで頭を水につけて、手足の力を完全に抜いてクラゲよろしくぷっかり浮くこと。プールの底に映る太陽の光がオーロラのようで、自分が上がってるか下がってるか、生きているか死んでいるかわからなくなる。至福の瞬間。 マウイのホテルのプールでこれをやっていたら、大声で「Are you OK!?」と叫ばれた。あまり人気の多い場所でやると、いささか面倒なことになりかねない。かといって人気のない場所でも、たまさか通りがかった人が声も掛けずにいきなり救急隊を呼んだりすると、さらに話はややこしくなる。とかくこの世は住みにくい。 話を戻すと、だから雪の日は、アタマがオカシイとか救急車を呼ぶとか、そういうハタ迷惑な(どっちが?)勘違いが影を潜めて、「ああ、雪を楽しんでるな」と素直に思ってもらえる、有難い日である。 あいにくこの週末は、大仰な天気予報にも関わらず、東京23区では全然積もらなかった。ばったり倒れるために、新幹線で雪国に行こうか。それともいっそマウイか。
by miltlumi
| 2011-02-13 11:07
| 機嫌よく一人暮らし
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