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ふと気づくと、舞台の脇の縁台に小学生の男の子たちが鈴なりになって、真剣な眼差しでダンサーに見入っている。 「メガワティちゃん(仮名)は、算数はできないけどレゴンはぴか一だな」なんて胸をときめかしているのだろうか。あるいは、「僕も頑張って練習して、スマルノさん(ウガル担当の織田裕二の仮名)みたいになりたい」と志を新たにしているのかも。 中にはさすがに飽きてきたのか、舞台の際で鬼ごっこを始めて、事務局のお姉さんに注意を受けている子供もいる。 寺院の隣の人家から、犬の鳴き声がとどろく。 それでも、踊り手も楽隊も揺るぐことなく、淡々と伝統芸能を紡ぎだしていく。 9時前、始まった時と同様、唐突に演目が終わる。全観客による精いっぱいの拍手も、4人では広い寺院にこだまするほどの迫力には程遠い。そのせいでもなかろうが、楽隊員一同によるお辞儀もなければ、カーテンコールも、もちろんアンコールもない。 頭の中ではまだキンカラした音が響き渡り、目を閉じれば金糸も艶やかなフルメイクの踊り手のしなやかな動き。 「すごかったね」語彙の貧困さを恥じながらも、そう言って感心するしかない。 半分夢見心地で、タクシーを求めて道路を歩き始めた私たちの背中から、大きな声。振り向くと先ほどのグリーンの制服の、行きがけとはちがう太ったお兄さん。身振りを読み解くに、さっきのジープでセンターまで送ってくれるらしい。最後まで手作り感覚の、ヤマサリグループ。 踊り手のべ11名、楽団員は多分20名強。750円の入場料4人分ではとてもペイしないのに、とつい計算してしまうのは、西欧資本主義に毒された頭の悲しい性。 後日ガイドに聞いたところによると、元々バリ舞踊は、村人による村の寺院の神様への捧げものとして、村ごとに発展した独特の音楽と踊り。観光芸能として確立されたのは、20世紀に入って後、西欧人の手によるらしい。 それでも、ガムランやバリ舞踊だけで食べて行くのは困難で、昼間は皆、普通の仕事についているという。いくつかのグループを掛け持ちする奏者もいる。 でもそれは、アルバイト料目当てではなく、純粋にガムランを演奏したいから。踊りたいから。信心深いバリニーズにとって、舞踊と音楽は神への捧げものだから。目の前の観光客が4人でも4,000人でも関係なく、最高の演技をすることを誇りとしているのだろう。 「バリ舞踊はウブドだけじゃありません。どこにもあります。うちの村には観光客あまり来ませんけど、踊りは素晴らしい。宣伝してないから。踊りのよさと観光は関係ない」 きっぱりと言い放つガイドの言葉には、おらが村への誇りと自信があふれていた。
by miltlumi
| 2011-02-07 08:03
| Vacation in Bali
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