小さい頃、クリスマスが楽しみだった。小学校2年生までサンタクロースを信じていた。キリスト教系の幼稚園だったせいで、当然神様も信じていたが、神様はふつう世俗的な役割は果たさないし定期的にその存在を誇示したりしない。だからサンタクロースの存在感は圧倒的だった。
その年、兄はクリスマスプレゼントとして、サンタさんに自転車をお願いしていた。私が学校から帰ってくると、なんと自転車屋さんがピカピカの自転車をうちの玄関の前に置こうとしているではないか。どうして!? 目を丸くする私に、母は「自転車は大きすぎてサンタさんの袋に入らないから、自転車屋さんが代わりに持ってくるように頼まれたんですって」 すごい。小田原(当時私が住んでいた)のスズキ自転車にまでサンタさんは連絡つけられるんだ。サンタクロースが絶対に存在する揺るぎない証拠ではないか。翌日、私は学校で意気揚々とこの話を友達に披露し、「だからやっぱりサンタクロースはいるのよ」と断言した。 母は、さすがにあのときはもう年貢の納め時だと思った。ところが、とっさの言い訳を大真面目に信じた小学校1年の娘の純粋さ(?)に、一抹の不安さえ感じたらしい。信じる者は救われる。心の底から信じていれば、怪しげな状況証拠でさえ自分の信じるものを補強する材料になる。 翌年、我が家で「サンタクロースはお父さんでした」宣言が下された。 でも実はその前に、集団下校の途中、うちの少し向こうにある国鉄の社宅に住んでいた聖子ちゃんに、「サンタクロースなんていないんだってさ」とささやかれたのだ。そのとき自分がどう感じたのか、全然記憶にない。でも、うちのすぐ隣を流れる幅2mくらいの小さな川の橋の上で、その日は曇天だったことだけはよく憶えている。 だから、家庭内の宣言にはもはや驚かなかった。それから後のクリスマス、信心深い気持ちはもとより、現実的な親からのプレゼントも伴わなくなった(「お年玉と一緒にしましょう」ってことだったか)。 今年の4月。何の脈絡もなく、やぶからぼうに、思った。 「今年のクリスマスイブは、二人で過ごすんだ」 一緒に過ごす人の影も形もないのに、「過ごしたい」とか「過ごせればいいな」ではなく、「過ごす」。これからお見合いをしようとか、意中の人に告白しようとか、そういうステップを一気に通り越して、とにかくクリスマスには二人、という信念が、あのとき空から降ってきた。 信じる者は救われるか。イブまであと1ヶ月。
by miltlumi
| 2010-11-24 08:19
| 私は私・徒然なるまま
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