ユーミンの「卒業写真」を聴くたびに、高校のときに同級だったO君を思い出す。野球部で、坊主頭で、日焼けしたクラスのリーダー格。なんとなく女子を仕切っていた私とは、学級委員ペア、ではなく、先生の目を盗んで宴会をするときの幹事ペア、だった。
高校2年の10月の修学旅行の夜。密かに想いを寄せていたT君に、旅館の庭先に呼び出された。どきどきする私の耳に飛び込んできた彼の言葉は、「おれKさんのことが好きなんだけど、彼女誰が好きか知ってる?」 Kさんが好きなのはラグビー部のD君。眩暈を抑えながら「さあ…」とにこやかにごまかした私は、男女数名がたむろする部屋に呆然と戻った。 O君が「XXさん、飲もうぜ!」と差し出したコークハイ。思えば、あの頃が一番アルコールに強かった。今はワイングラス1杯を2時間かけて舐める程度なのに、そのコークハイを一気に飲み干して、あとは気持ちが悪くなったふりをして顔を伏せて声をたてずに泣いたっけ。T君とのことを知らないO君が、私が急性アル中になったのでは、と的外れな心配をしていたのがおかしいと思える程度には、私は冷静さは保っていた。 次の夜、二つ離れた組の卓球部のM君が私に大告白をする。「好きです!」 それまで顔も知らなかった存在が、私の中で一気にクローズアップされる。O君に尋ねる。「M君って、どんな人?」「いいやつだよ」数ヵ月後、M君とつきあうようになった。ところが3年生の12月、例の校内模試直前フラレ事件ね。 卒業式の後、O君の自宅に集まって飲み明かした夜、ラジカセの即席カラオケで中島みゆきの「時代」を歌っていた私は、お酒の勢いも手伝って今度はおおっぴらに泣き出してしまった。M君を推した責任を感じたのか、O君はあれこれと私を慰めてくれた。 完璧に失念していたのだが、最近「思い出ボックス」を久しぶりに開いたら、O君からの手紙が何通も出てきた。大学に入ってからも、クラスで気になる男の子がいるとか、学園祭で演劇をやることになったとか、そういうヨシなしゴトをちょこちょこ綴っては、浪人中の彼に手紙をだしていたのだ。そのたび彼は律儀な返事を送ってくれていた。クラス会の幹事は、もちろん2人の共同作業だった。 就職して、赴任して、結婚して、離婚して、転職して… 20代、30代は「自分」の「今」に忙しい。その間ずっと、O君とは年賀状だけの付き合いだった。 5年前、大手町に転職してほどなく、隣のビルのコンビニで飲み物を買っていたら、O君にそっくりな後ろ姿を見かけた。でも、まさかね…と思う間もなく振り向いたその人は、O君その人。お互いのオフィスビルが隣同士だったのだ。外資系金融機関で働く彼は、もう坊主頭ではなく、ダブルのスーツが似合うビジネスマンになっていた。 前回のクラス会からもう1年。そろそろ日程調整を始めようか。
by miltlumi
| 2010-08-31 06:46
| 私は私・徒然なるまま
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