神様の棲み処

長年あこがれていた高千穂に、ようやく行ってきた。

元はと言えば、友人がFacebookにアップしていた天安河原(あまのやすがわら)の写真が、あまりのパワーに満ちていたのがきっかけだ。
「これ、どこ?」と尋ねたら、高千穂の天岩戸神社の奥にあると。
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すごかった。
すでに写真を見ているのだから、予想はしていたが、それでも吃驚するほど、すごかった。
初日に行って、翌日合流した友だちと、もう一度行ってしまった。
帰りがけ、雲間からお天道様が顔を出し、峡谷から立ち上る朝霧に一条の光が差した。
まさに、天照大神、天岩戸からお出まし。
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天岩戸神社から高千穂の町に戻る道沿いは、美しい棚田である。
縄文の時代から日本人の祖先がここに住みつき、だんだんと稲作を始めたのだろう。日本の原風景。
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国見ケ丘に着いたのは、もう昼過ぎだったので、雲海は期待していなかった。
招き入れられたお茶屋さんの人によれば、あの幻想的な風景が見られるのは11月くらいまでだとか。
視界が開けている分、阿蘇から連なる山々と、谷あいに点在する高千穂の集落が見通せる。
九州の「へそ」に近いこの絶景ポイントに、「気」が集まっているのが感じられる。
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この連山のいたるところに大小さまざまな神社がある。最後にどこかひとつ、というわけで、直感で選んだ二上(ふたかみ)神社。
伊邪那岐と伊邪那美の二人の神様を祀る。
これまた、すごかった。
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町中からはずれて、しかもかなりの山道を登った奥にあるので、参拝者も少ないのか、見上げる石段はすっかり苔むしている。
境内には、私たち以外誰もいない。
拝殿では、神主さんと巫女さんが向かい合って朝のお勤めをしている。
思わず頭を低くする。

***
あれから3週間。
今頃になってブログにアップしたのは、高千穂の「がまだぜ市場」で買い求めた古代米のせいである。
お米やそば粉、しいたけ、かぼす、あのエリアは食の宝庫。
小匙に1杯まぜるだけで、ご飯が赤く染まるよ、と友だちに教えられた。

お正月を実家で過ごしたあと、自宅に戻ってご飯を炊くのは2度目。
毎日お赤飯が食べられるなんて、しあわせ、と思った。

一方、九州ほどではないが、スーパーで売っていた大根は今が旬である。
ずっしりと重いお大根。すべすべの白い肌。しあわせ。
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思わず二つを並べて写真を撮って、自分で笑ってしまった。
私ったら、こんなささやかなものだけで、しあわせを感じられるなんて。
なんて安上がりなんだろう。

次の瞬間、高千穂の旅のことを改めて思い出した。あの時間。
なんて贅沢だったんだろう。

ということで、みなさまにも、贅沢なしあわせの御裾分けです。
(ちなみに、お大根は、丸のまま、ではなく、先っちょを大根おろしにして頂きました)


# by miltlumi | 2019-01-10 22:34 | フォトアルバム | Comments(0)

新しい日記帳

 毎年この時期になると、丸善で外国に住む友だち向けのクリスマスカードと翌年のダイアリーを買うのだけれど、今年はそこに日記帳が加わった。といっても、「日記帳」という特別な棚にある”いかにも”っぽい「日記帳」ではなく、お目当てはB6サイズくらい、ぶ厚めの普通のノートである。結構真剣に見繕って、着ていたレザーコートと同じ鮮やかなオレンジ色の表紙を選ぶ。

 生まれて初めての記念すべき「日記帳」は、表紙にスヌーピーが寝ている赤いB5判ノートだった。小学2年生の9月。夏休みの宿題に飽き足らず、2学期に入ってからも自主的に続けたのだろうか。きっかけはもはや憶えていない。
 以来、延々今日に至るまで、そのときどきの気分で選んだ様々なデザイン、様々な大きさの日記帳。サンリオのキャラクターノート(中学の頃)からリバティー調の布張り(トロントに住んでいた二十代後半)まで、数えてみたら、31冊。

 8歳の頃から絶え間なく、しっかりきっちり毎日書いていたわけでは、決してない。平均して1か月に何回、とも言えないほど、頻度も書く分量もばらついている。途中、平気で1年も2年もブランクが空いたこともある。それは大抵、何の疑問も持たずに仕事に明け暮れていた、ある意味平和な時期なのだ。
 何かが起こって、心に波風が立つと、やおら書き始める。日記帳のページの残りが少なくなると、慌てて買いに行く。

 31冊目だけが、何かのワークショップに参加したときに配布された平凡なB6リングノート。半透明の若緑がキレイだから、という理由は後付けで、新しい日記帳選びという大切な作業を怠った、という事実が、当時のすさんだ気分と切羽詰まった状況を象徴している。結果的にB6サイズはとても使いやすいことに気づいたのは、ケガの功名なのだが。
 だから、「今日は日記帳を買うぞ」という勇んで出掛け、楽しくお気に入りの色を選べたことが、今の自分の健やかさの印みたいで、ちょっと嬉しかった。

 朝食を食べながら、ダイニングテーブルに乗っかったままのオレンジ色のノートを見て、ふと思い立つ。引き出しを開けて、年代順に並んだ31冊から、でたらめに1冊抜き取ってみる。
 あの頃の私がいる。すっかり忘れていた想いが綴られている。まさに「青春の一頁」、心の隅にはうすぼんやりした懐かしさしか残っていないのに、いきなり当時の生々しい、赤裸々な自分の気持ちに直面する。
 読んでみて、気づく。あのとき、あの状況で、こう考えたことは、大きな間違いだった。一瞬、胸にずきりと痛みが走る。

 このまま読み続けたら、今に戻って来られなくなりそうで、わざとパタンと音を立てて、古い日記帳を閉じる。
 いずれにしろ、済んだことだ。それはそれ。今は今。
 冷めてしまったコーヒーを飲んで、穏やかな気持ちを取り戻す。

 新しい日記帳は、そこから始める。

追記:
それでもやっぱり、「大きな間違いだった」という痛みは、強烈だったようだ。
今朝、当時のことがデフォルメされた、ものすごくリアルな夢を見てしまった。。。
読まなきゃよかった、と思わないでもない(><)


# by miltlumi | 2018-11-30 21:51 | 私は私・徒然なるまま | Comments(2)

コインパーキングを踏み倒す

 友人のAさんと一緒に、彼女のだんな様(B氏)が出演するライブを聴きに行った。二人は、ライブが終わったその足でクルマで羽田に乗り付け、最終便でタイに飛んで、翌朝タイ人の友人の結婚式に参列するという。かなりの強行軍である。
 「アンコールがさくっと終わればいいね」
 久しぶりのライブの音を楽しみながらも、時間が気になって途中で腕時計を外してしまった。が、そんな心配をするまでもなく、アンコールの2曲目が大喝采の中フェイドアウトすると、かっきり9時半。
 余韻に酔いしれる彼女と私の横で、B氏はそそくさと楽器を片付けて荷造りすると、車を取りに近くのパーキングに走って行った。

 なかなか戻ってこないな、と思っていると、ライブハウスの電話が鳴る。B氏からだった。パーキングから車が出せないから、2人で来てほしい、という。
 クルマが出せない? 2人で来てって、どういうこと? 
 アタマに「?マーク」をいくつも浮かべながら現場に向かうと、精算機の電源が根こそぎ落ちていて、うんともすんとも言わない。
 「管理会社に電話したんですか?」
 「何度電話しても誰も出ないんだよ! あ~っ、これじゃあ飛行機乗れないよぉ!」
 B氏が声を荒げるのは、めちゃめちゃ珍しいことだ。実は、私にとってB氏は、「こういう人と結婚したらシアワセになれるだろうな」リストのトップ3に入る憧れの男性である。物知りで器用で、最安値の家電選びから家具の組み立て、生活上の難題解決はもちろん、不測の事態にも慌てず騒がず、冷静に迅速に対応できる、頼り甲斐満点のタイプなのだ。
 その彼が、アセっている。ヤバい。
 「えーっ、車出せなかったらどうなるの!?」
 有事はB氏に頼り切りのAさんが、さらに慌てる。私は念のため、看板に書かれた管理会社の電話番号にかけてみる。じーっ、じーっ、じーっ。出ろー、このー。

 B氏は、管理会社より自力本願である。
 「だから、この板、2人で踏んだら動くかもしれないから!」
 えっ。そんな。機械でしか動かないんじゃ…。とはいえ、B氏に従ってみるしかない。Aさんが運転席に座り、B氏と私がロック板に乗っかる。電話の呼び出し音が途切れる。
 「はい、〇〇管理会社です」
 出た! かくかくしかじか、状況を説明する。
 「これから羽田に行かなきゃいけないんです! 飛行機乗り遅れるわけにいかないんです!」
 B氏が乗り移ったように私が叫ぶ。
 「それなら、板に乗ってください。ちょっと動くでしょう。それで乗り越えちゃってください」
 えっ。そんな。やっぱりB氏の解決策が正しいのか。だったら電話した意味ないじゃん。
 「踏めって、言ってます!」
 「よし! せーのっ」
 うんしょっ、と二人で踏むと、数㎝ロック板が沈む。
 「ゆっくり進むんだ! もっとゆっくり!」
 B氏がAさんに指示を出す。じわっ、じわっ。後輪が板に乗り上げかかった途端、かくっと板の抵抗が消え、べたりと沈み、すいーっと車、脱出成功。
 「やった~! 出ました! ところでこれ、とーぉぜん、駐車料金はタダですよね!」
 思わず強気の発言。
 「あ、はい、結構です」

 かくして、車をライブハウス前につけ、キーボードその他をちゃっちゃか積み込み、二人は羽田へと走り去ったのだった。
 テールランプに手を振りながら、私は思った。
 コインパーキングって、ああすれば(文字通り)踏み倒せるじゃん…。

 ググってみたら、「コインパーキングの不正出庫で罰金10万円」みたいな書き込みがぞろぞろ出てきた。…そうだよね。監視カメラで全部撮られてるもんね。後から追跡されるに決まってるよね。
 であれば、あのとき電話で強気の“料金交渉”をして、ちゃんと「タダ」の言質をとった意味は、あったわけだ。いや、でも、あんな緊急事態、悪いのは管理会社のほうだ。料金払いたくたって、機械が動いてなかったんだし。ぶつぶつ。

 翌朝。Aさんから、余裕で最終便に間に合い、無事常夏のスワンナプーム国際空港に到着した、というメッセージが入った。おしどり夫婦は、タイの若きカップルににこやかに祝福を贈っていることだろう。


# by miltlumi | 2018-11-20 22:38 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(2)