なめくじとポルシェ

 先週の日経夕刊社会面に掲載された小さな記事に、目が釘付けになった。

 8年前、友だちと酒を飲んでいた19歳の男性がふざけてナメクジを食べ、その中にいた寄生虫が原因で昏睡状態に陥った。420日後にようやく意識が回復したが、脳に重い障害が残って車椅子生活を強いられ、このほど亡くなったという。
 亡くなった男性には謹んで哀悼の意を表したい。が、しかし、ナメクジ、ですよ。なんであんなモノ、食べようと思うかなぁ。

 そこで思い出したのは、村上春樹の「ノルウェイの森」である。
 主人公と同じ学生寮に住んでいた永沢さんという東大生が、上級生とのごたごたを解決すべく、「ナメクジ飲め」と言われて3匹飲んだ、というエピソードだ。
 「それ以来、誰も俺に対して何も言えなくなったよ。…あんなナメクジ3匹も飲める人間なんて俺の他には誰もいないんだ」
 オーストラリアでの詳しい経緯は不明だが、少なくとも春樹ワールドにおいては、ナメクジを飲むのは、「強さ」の象徴なのだ。男は強くあらねばならないのだ。

 さらに思い出す。「進化心理学を学びたいあなたへ」(*)という本に書かれていた、「男性の武器と装飾品」に、のこと。
 人間を始め多くの動物において、生殖相手を選ぶのはメスである。そのためオスは様々な進化の産物を身につけている。ライバルを蹴倒す「武器」として、牡鹿の角、そして人間男性の高い攻撃性(だから男性は女性に比べて戦争映画が好きなのだ)。メスに選ばれるための「装飾品」として、雄クジャクの尾羽、そして人間男性の自慢話(!?)や喫煙(!?)。

 …そうか。オジサンたちが自慢話好きなのは、クジャクの尾羽やシオマネキのでかいハサミと同じく、「オレって、イケてるでしょ?」というメスへのアピール手段だったのか。。。

 では「喫煙」とは? 
 タバコは明らかに健康に悪い。それをあえて摂取することは、逆の見方をすれば、健康を害する“ハンディキャップを背負いながらも(生存・生殖)競争に対処する余裕がある”(*P.107)証拠になる。「オレって、カラダに悪いことやっても丈夫だから」と暗に誇示しているというわけだ。さらに、男性が女性よりリスクテイク傾向が強いのも、同じロジックで「性的魅力」とみなされる、というのである。

 「ナメクジを飲む」という、女性には到底考えられない無謀な行為も、いわば女性の気を惹くための「リスクテイク」の一例なのだ。 
 ここで、村上春樹ファンの男性は反論するかもしれない。
「永沢さんがナメクジ飲んだのは、男子学生寮。その勇敢な姿にヨロめいてくれる女子が周りで見ていたわけではないじゃないか」
 ところが、男性の「リスクテイク行動で人目を惹く」傾向は、それを見る女性(というか他者)の有無に関わらず発動してしまうらしい。ある心理学者の研究によると、(「高いステイタス」という一種の装飾品となる)ポルシェを運転する男性は、テストステロンレベルが増加する。しかも、人目の多い繁華街だろうとさびれた道路だろうと、同じように増加するという(*P.352)。

 リスクテイクは男性の本能…か。
 それにしても、リスクとリワードのバランスは、よく考えたほうがいい。
 カノジョの気を惹くなら、寄生虫入りナメクジよりポルシェのほうが有効でしょう。
 あ、でも、ポルシェの金銭的リスクを考えると…。

 男の子って、大変そう。女に生まれてよかった、と思う。


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# by miltlumi | 2018-11-14 17:16 | マンモス系の生態 | Comments(0)

なめくじとポルシェ

 先週の日経夕刊社会面に掲載された小さな記事に、目が釘付けになった。

 8年前、友だちと酒を飲んでいた19歳の男性がふざけてナメクジを食べ、その中にいた寄生虫が原因で昏睡状態に陥った。420日後にようやく意識が回復したが、脳に重い障害が残って車椅子生活を強いられ、このほど亡くなったという。
 亡くなった男性には謹んで哀悼の意を表したい。が、しかし、ナメクジ、ですよ。なんであんなモノ、食べようと思うかなぁ。

 そこで思い出したのは、村上春樹の「ノルウェイの森」である。
 主人公と同じ学生寮に住んでいた永沢さんという東大生が、上級生とのごたごたを解決すべく、「ナメクジ飲め」と言われて3匹飲んだ、というエピソードだ。
 「それ以来、誰も俺に対して何も言えなくなったよ。…あんなナメクジ3匹も飲める人間なんて俺の他には誰もいないんだ」
 オーストラリアでの詳しい経緯は不明だが、少なくとも春樹ワールドにおいては、ナメクジを飲むのは、「強さ」の象徴なのだ。男は強くあらねばならないのだ。

 さらに思い出す。「進化心理学を学びたいあなたへ」(*)という本に書かれていた、「男性の武器と装飾品」に、のこと。
 人間を始め多くの動物において、生殖相手を選ぶのはメスである。そのためオスは様々な進化の産物を身につけている。ライバルを蹴倒す「武器」として、牡鹿の角、そして人間男性の高い攻撃性(だから男性は女性に比べて戦争映画が好きなのだ)。メスに選ばれるための「装飾品」として、雄クジャクの尾羽、そして人間男性の自慢話(!?)や喫煙(!?)。

 …そうか。オジサンたちが自慢話好きなのは、クジャクの尾羽やシオマネキのでかいハサミと同じく、「オレって、イケてるでしょ?」というメスへのアピール手段だったのか。。。

 では「喫煙」とは? 
 タバコは明らかに健康に悪い。それをあえて摂取することは、逆の見方をすれば、健康を害する“ハンディキャップを背負いながらも(生存・生殖)競争に対処する余裕がある”(*P.107)証拠になる。「オレって、カラダに悪いことやっても丈夫だから」と暗に誇示しているというわけだ。さらに、男性が女性よりリスクテイク傾向が強いのも、同じロジックで「性的魅力」とみなされる、というのである。

 「ナメクジを飲む」という、女性には到底考えられない無謀な行為も、いわば女性の気を惹くための「リスクテイク」の一例なのだ。 
 ここで、村上春樹ファンの男性は反論するかもしれない。
「永沢さんがナメクジ飲んだのは、男子学生寮。その勇敢な姿にヨロめいてくれる女子が周りで見ていたわけではないじゃないか」
 ところが、男性の「リスクテイク行動で人目を惹く」傾向は、それを見る女性(というか他者)の有無に関わらず発動してしまうらしい。ある心理学者の研究によると、(「高いステイタス」という一種の装飾品となる)ポルシェを運転する男性は、テストステロンレベルが増加する。しかも、人目の多い繁華街だろうとさびれた道路だろうと、同じように増加するという(*P.352)。

 リスクテイクは男性の本能…か。
 それにしても、リスクとリワードのバランスは、よく考えたほうがいい。
 カノジョの気を惹くなら、寄生虫入りナメクジよりポルシェのほうが有効でしょう。
 あ、でも、ポルシェの金銭的リスクを考えると…。

 男の子って、大変そう。女に生まれてよかった、と思う。


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# by miltlumi | 2018-11-14 17:16 | マンモス系の生態 | Comments(2)

ヒヤシンスのミステリー

鉢植えしていたヒヤシンスの芽が出た。
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去年の暮れに友だちからいただいた球根。
今年の初春、窓際の水栽培で可愛い花を咲かせてくれた。
「土に埋めておくと、また来年も芽が出るよ」と教えられ、
ベランダの植木鉢に植えておいた。
緑の葉がすくすく伸びているモッコウバラや石楠花の隣で、
土色の殺風景な植木鉢は、ちょっと肩身が狭かったのだけれど。

鮮やかな硬い芽が3つ。
正方形の1つの角が欠けている。
4つめはどうしたんだろう。
シャベルでおそるおそる掘ってみる。
…何もない。

そこで思い返す。
友だちからいただいたのは、3つだけだったっけ。
植えるとき、球根を正三角形のかたちにちゃんと置かなかっただけかしら。
ボケたな、と一人、苦笑してしまう。

部屋に戻り、春に撮った写真を探してみると、白・ピンク・紅色・紫。
やっぱり4つ。
…4つめはどうしたんだろう。
さっきより深く、シャベルで掘ってみるが、やはりない。
ベランダの、ミステリー。
a0165235_14373742.jpg
鳥が掘り返して食べたんだろうか。
たしか1つの球根がすごく痩せてたから、植えずに捨てたんだっけ。
いずれにしても、ないものはない。
ない球根から、芽は出ない。
3つだけ。正三角形に配置し直そうか。
でも、伸び始めた根を傷つけたら大変だから、
そのまま、4人目が欠けたまま、春を待つことにした。

立冬は過ぎたけれど、窓の外の八重桜は紅葉さえ始まっていない。
季節をふたつ、ヒヤシンスは先取りしている。




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# by miltlumi | 2018-11-10 14:45 | フォトアルバム | Comments(0)