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空き箱は、心の琴線に、どのように触れるか (下)

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 そのオフィスの主である、ダンディーな彼の元には、バレンタインデーになるとわんさかプレゼントが贈られてくる。おしゃれなおじ様に見下されぬよう、女性陣はめいっぱい張り込んだ高級ブランドのチョコやハンカチを選ぶ。そのパッケージの、色も材質も当然一級品である。
 会議中、脇に置いてあるチョコレートの山から、彼が気まぐれにひと箱取り出して「食べる?」と差し出す。ありがたく頂戴しながら、視線は箱の方にひたと張り付く。会議終了後、空になった箱はめでたく私の手の上へ。

 あいにく、そのオフィスには毎日行くわけではない。チョコが何粒か残っている箱を見て、早く食べ終わってくれないかなあ、と思いながら、次に出社したときには箱ごと失くなっている。
 「あの箱どうしたの!?」
 「え、捨てましたけど。あのチョコ、食べたかったですか?」
 「あ、いえ、その、チョコじゃなくて空き箱…」
 ちょっと迷った末、正社員の方々に、空き箱は全て捨てずにとっておいていただけるようお願いした。かくして2月下旬から4月にかけ(何しろプレゼント量が多いので、食べ尽くすまでに時間がかかるのだ)、私はオフィスに行くのが楽しみだった。

 空き箱のモチベーション。本末転倒もいいとこである。しかも、ゴミの一歩手前のブツよりよほど立派な、無印良品のアクリル収納ボックスを買うくらいのお給金はいただいているのに、そのお金より、空き箱がウレシイ。
 大竹氏が、バイト料で新品のキャンバスを買うより、ダンボールに創作意欲を掻き立てられたのと同じ類の思考回路である。どんなことに「そそられる」のかは、人それぞれである。

 付け加えるならば、私にプライバシーを開示してくれるありがたい友人(「整理」と聞くだけで気が遠くなるらしい)について。彼女のうちの整理のため、奮発して100円ショップのプラスチック箱複数種を持参したときのこと。直方体に見えたのに、いくつか並べてみると上部と下部の幅が微妙に違う。どうして?と思ったら、隣で既に気が遠くなりかけていた彼女の目が俄然輝きだし、「それはね、テーパーのせい」と、てきぱき説明を始めた。てぇぱぁ???
 無印のアクリルケースは一見100均と同じように見えるのに、なぜ10倍以上の値段なのか。それは6枚の板材を接着し、端面磨き処理もして手間がかかるから。100均はプラスチック射出成形で、型から抜けやすいようテーパー(角度)がつけてあって、その結果わずかに台形になる。
 モノ作りやデザインの仕事に関わっている彼女にとって、箱から連想されるのは「整理」ではなく「工業デザイン」。

 まったくもって、心の琴線の触れ方は、人それぞれである。

 余談だが、大竹伸朗のエッセイ「既にそこにあるもの」は、なかなか面白い。

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by miltlumi | 2012-04-21 17:11 | マンモスの干し肉 | Comments(0)