カテゴリ:フォトアルバム( 165 )

天空橋

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天空橋という駅が好きだ。
羽田空港まであとひとつ、の場所に相応しい、素晴らしい名前だと思う。
おおらかに広がるイメージと裏腹に、地下に潜ってしまうところがなかなか番狂わせっぽくて侮れない。

ホームの壁面の藍色のタイルが、宇宙が透けてみえそうな高い空を思わせる。
一方で、もしかしたらこれは海の底の色なんじゃないかとも思う。

天空橋は無人駅で、プチ海ほたるみたいに海の上にぽつんと浮かんでいる。
ホームからエレベーター(この駅にはエスカレーターはない)で地上に上がる。
ホーム階から改札階まで、ビル3階分くらいの長さがある。
エレベーターの扉が開くと、そこはいきなり屋外である。
大田区と羽田の間の凪いだ運河のような、でもなぜか茫洋とした海が、眼前に広がっている。
一瞬呆然として、それからくすりと笑ってしまう。だって、天空橋なんだから。

…そんな想像が次から次へと思い浮かんで、村上春樹ばりの小説さえ書けそうな気がする。
(というのも、村上春樹の小説で私が一番好きな「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」の冒頭に、延々としたエレベーターの描写が出てくるのだ)

天空橋で降りる人を見たことがない。
でもそれは、私が勝手に都合の悪いものを視界から消しているだけかもしれない。
この駅に乗降客は似合わない。
けれど、いつかは、降り立ってみたい気がする。
北海道や福岡や、JFKやシャルルドゴールに行くついで、ではなく、
天空橋に行くために京急に乗って、天空橋で降りる。
そのときは、スーツケースの代わりに、色とりどりの風船を持っていきたいと思う。



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by miltlumi | 2017-07-28 10:21 | フォトアルバム | Comments(0)

朝の虹

サンキャッチャーを買った。
東向きの窓から部屋に差し込む朝陽が、きっともっときらきらになる。
突然、そう思いついたのだ。
ネット注文が届いたのは雨の午後。翌朝の天気予報は、晴れ。
目覚めて、わくわくしながらリビングに足を踏み入れたら、
全然きらきらしていない。
カーテンレールをするすると行ったり来たりさせると、
ようやくプリズムの光が壁に散乱する。
意外に角度に繊細なのだ。

しかも、朝の太陽は思った以上に動きが速い。
ちょっと経つと、スワロフスキと太陽の位置がずれて虹が消えてしまう。
またするするとレールを滑らせる。
そして、太陽の光、キャッチ。その、繰り返し。
朝から夢中で、私の太陽を追いかけている。

名前も忘れてしまったある詩人が、細かい言葉は忘れてしまったが、
こんなことを書いていたっけ。

 -ほんのささやかな植物でも、鉢植えを買って庭に置く。雨が降る。
 -ああ、私のあの花に、雨が降っている、と思う。
 -鉢植えがないときは、外に雨が降っていることなど、気にも留めなかったのに。

そういえば、そういうものがもう一つあった。
昔からベランダの物干しにぶら下がっている、JFKのお土産屋さんで買った
アメリカインディアンの風鈴。
少し風が強いと、窓を閉めていても、リンリンという澄んだ音色が聞こえてくる。
ああ、私の風鈴に、風が吹いている、と思う。
もっと吹いてくれないかな、とも思う。

今朝はその風鈴がそよとも動かない穏やかな日である。
サンキャッチャー越しに外を覗いたら、
アロエの花にちょうどメジロが飛んできたところだった。

サンキャッチャーで太陽とつながり
鉢植えで雨とつながり
風鈴で風とつながり
アロエの花で鳥とつながり
からだじゅうで、私は自然とつながる
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by miltlumi | 2017-02-14 20:18 | フォトアルバム | Comments(2)

秋の日

久しぶりに会った友達に、最近幸せだなあって感じたのはどんなとき?と尋ねたら、
あ、うん、あったあった、と言いながら、顎に手をあてて考え込んでしまった。
視線で促すと、えと、なんだっけなあ、たいしたことじゃないんだけど、というので、
そうだよね、ちょっとしたことだよね、と助け舟を出す。

私なんて、朝起きてすぐテレビつけるのやめて、窓開いて朝ごはん食べてたら、
マンションの植栽の木でたくさん鳥が鳴いてるのが聴こえて、あー幸せって思った。
それが、木を剪定したらね、途端に鳥が来なくなっちゃったの。あれ、巣があったのかも。

そうそう、この前犬と散歩してたら、雉の親子が道渡ってたんだよ。母鳥の後、何羽も。
犬、びっくりしちゃってわんわん吠えるもんだから、
鳥もびっくりしてうわあっと飛び上がっちゃってさ、ちょっと悪いことしたなって思った。

あと、大学時代の先輩たちと行った古民家レストランで、
生牡蠣とかアヒージョとかすっごく美味しくて、
あっちのテーブルでは中近東やロシアがどーしたこーしたって時事問題議論してるのに、
こっちはさっきから美味しいねーって言葉しか発してませんね、って笑い合ったの。

それ以外もなんかあったなあ。忘れちゃったなあ。

お互いしばし沈黙し、それぞれ記憶をたどってみたけれど、
具体的な光景は一向に浮かんでこない。
それでもなんだか、ふんわりあったかな気持ちになった、
そのときの感触だけはちゃんと甦っていて、
差し向かいのふたりの間のテーブルの、その上の空気がほろほろと緩んでいく。

うちに帰って、思い出した。
ベランダに置いた、鉢植えのノボタンが一輪咲いたこと。
年下の女性にメッセージ送ったら、読んでて涙出そうになりました、という返事をもらったこと。

今朝、いつものように自転車で職場に向かっていたら、空が秋たけなわの色で、
耳を切る風が、マッフルを付けたくなる前ぎりぎりの冷たさだった。
昨日の友達にメールしようかな、と思いながら、
いつもより少しだけ頑張って上り坂をこいでいった。
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by miltlumi | 2016-10-27 14:44 | フォトアルバム | Comments(0)

春の収穫

連休前半は、母と一緒に実家へ。
兄の家の隣に引っ越してしまった母が、たまに泊りに行くほかは空き家になっている家。

1日目。いまだに残っている亡き父の背広の整理。
カンカンと耳障りな音をたてる衣装箱。
樟脳の香り。

2日目。草木が自由気ままに伸びている庭の手入れ。
久しぶりに地面に触れて、はびこるドクダミと野苺の地下茎と戦う。
土の香り。

家の北側から母の得意げな声が聞こえた。
「ほら」 差し出された両手いっぱいに、蕗。
はんぶんこにして、それぞれ持ち帰る。

「細いやつもちゃんと筋とるのよ。でも指が真っ黒になるからね」
何度も言われた言い付けを守り、鰹節で炊く。
春の香り。

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by miltlumi | 2016-05-03 11:22 | フォトアルバム | Comments(2)

港区定点観測

毎年毎年毎年、やっぱり足が向いてしまう。やっぱり撮ってしまう。
それでも毎年毎年毎年、ちょっとずつちがう。桜も。私も。

2016年4月6日@青山墓地
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2015年3月31日@東京ミッドタウン
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2014年3月29日@青山墓地から六本木ヒルズ
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2013年3月21日@新国立美術館
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2012年4月2日@青山墓地
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by miltlumi | 2016-04-06 21:52 | フォトアルバム | Comments(2)

夜中の空港にて

 夜半過ぎに出る国際便を待ってラウンジで時間をつぶしていた。チェックイン後のホテルで夕飯は食べたし、飛行機が離陸したらすぐに軽食が出されるのだが、こういうときは何となく口さびしくなる。フードコーナーに並んでいるミーゴレンや肉まんにはさすがに手が伸びない。欧米の空港では定番なはずのプレッツェルやポテトチップス、あるいはスニッカーズのチョコバーやハーシーズのキスチョコが見当たらない。
 代わりに目についたのはチョコレート色をした渦巻き模様のキノコの傘みたいなスナック菓子。たぶん、ほんのり甘い味だろう。昭和の駄菓子屋さんのような分厚いガラス壜から大きなステンレスのスプーンでがさりとひとすくいして、小皿に盛る。
 ソファに戻ってからりと噛むと、マリービスケットを10倍固くしたような風味だった。不規則な形をした茶色とクリーム色の極細縞は、見れば見るほどキノコに似ている。

 向かい側の対面4人掛けテーブルに、ウェストポーチをつけた男性と髪の長い女性二人、そして二人の小さな男の子がやってくる。ソファを1つ荷物置き場にしていた連れが、ごとごとと方向を変えて彼らに差し出す。あ、すみません、と男性は丁寧にお礼を言うと、どかりと背もたれに身体をあずけて早速仮眠を始める。女性二人がそれぞれ男の子を横に座らせ、対面する。どういう関係だろうか。
 レモンイエローのTシャツを着た3歳くらいの下の子のほうが、FUN WITH FOODと書かれた箱をばりばりと破る。取り出したのは、ショッキングピンクのフライパンとお鍋とおたまとフライ返しと目玉焼きとレンジ。女の子だったのか、と見つめ直したが、坊ちゃん刈りも社会の窓付きの半ズボンも、明らかに私とは別の性を示している。世の中変わったものである。
 紺色Tシャツの上の子のほうがちょっかいを出す。レモンイエローが手でそれを押しのけると、お兄ちゃんが平手で弟の顔を殴った。それでも弟はひるまず遊び続ける。

 キノコの傘をこりこりと食べながら、男の子のおままごと光景を見ていたら、レモンイエローと目があった。私は速やかにキノコの傘を右手のひとさし指と中指にかぶせてVサインを作ると、ほんの少し彼のほうに差し出す。子どもの顔が、ハイビスカスが開花するようにぱあっとほぐれる。

 あまり見つめ合っていると女たちに目撃されそうなので、そこそこにして手を引っ込める。カメラを取り出して、キノコを左手に植え替える。レモンイエローを背景ぼかしにして、記念撮影。搭乗開始のアナウンスが流れる前に、5人はままごとを片付けて去って行った。友人が言う。
 「歳の離れたお姉ちゃんだったね」
 ようやく、家族構成の謎が解けた。
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by miltlumi | 2016-01-07 09:25 | フォトアルバム | Comments(0)

謹んで初春のお慶びを申し上げます

暖かなお正月
いつものように丹沢の麓の母と兄の家で
いつものお節料理をいただける有難さ

夕方に近くの段々畑まで走って行って影絵になった富士山撮影
絶好のシャッターチャンスに鳴った携帯
母から「暗くなると危ないから早く帰ってらっしゃい」
今や立派な中年女性をいつまでティーンエイジャー扱いするつもりだろう

遅ればせながら今年もよろしくお願い申し上げます。

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by miltlumi | 2016-01-04 21:41 | フォトアルバム | Comments(2)

真夏のクリスマス@Bali

クリスマスイブを、クリスマスイブらしくなく過ごすとき
必ず思い出すのは、海援隊の「母に捧げるバラード」
歌というよりは、武田鉄矢がどこかで語っていたエピソード

クリスマスに友達はサンタからのプレゼントをもらうのに
僕だけ何もなくて、母になんでうちにはサンタクロースが来ないのかと尋ねたら
「うちは仏教じゃけん、サンタは来ん」
今から思えば、鉛筆の1本でもくれればよかったものの
頑固な母は、子供に小さな甘やかしをすることさえなかった

今年のクリスマスイブはヒンドゥー教の国で過ごした
サンタクロースもクリスマスプレゼントも関係ないと思っていたのに
常夏の太陽が照り輝くプールサイドのウェイターや民族衣装のウェイトレスたちが
朝から赤い三角帽子をかぶってフローズンドリンクを運んでいた

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by miltlumi | 2015-12-26 11:35 | フォトアルバム | Comments(2)

梅雨時の家庭栽培

今朝起きたら、うちの中に、き、き、きのこが生えていた。。。

30年前の男子大学生の北向き4畳半の下宿みたいな話だが、事実である。
もちろん、妙齢の女性(自分で言うのもなんだが…)の一人暮らしの空間に
万年床とかカップラーメンの汁が残った容器があるわけではなく、
きのこが生まれたのは、窓際に置いたアボカドの鉢植えの中。

毎朝、歯磨きがてら部屋の中の観葉植物に声を掛けて
ひとりひとりの成長ぶりをチェックする習慣があり、
昨日の朝には影も形もなかったので、昨夜のうちに生えたにちがいない。
1ヶ月半前に、ディップにしたアボカドの種を植えておいたから、
もしかしてその芽かも…と自分に信じ込ませようとしたが、
どこからどう見てもきのこなのだ。

歯磨きのうがいももどかしく、ベランダに置いてある園芸用シャベルを持ってきて、
おそるおそるきのこの根元を掘ろうとして、念のため記念撮影をする。
生っしろい物体の下の地中には、やはりころりとしたアボカドの種は存在しない。

シャベルで掘り返して新聞紙の上に置いて、しげしげと眺める。
えのきだけ、に見えなくもない。
食べられるのかしら。。。と思う。
でも、食べずに捨てた。

梅雨が明けるまで、
毎朝どきどきしながらアボカドの鉢を覗き込むことになりそうだ。
それにしても、どこから菌糸が入り込んだのだろう。
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by miltlumi | 2015-07-11 14:09 | フォトアルバム | Comments(0)

八ヶ岳をバックに

4月下旬。平日午前11時36分。
山梨県道608号線長坂町白井沢付近。
時折行き違う軽トラックの他、クルマも人影もほとんどない。
晴天。

突然、前方の畑に10頭近い鹿の大群!
こちらのクルマに驚いたのか、地響きをたてて猛ダッシュで逃げる。
二手に分かれ、一方はクルマの目の前を横切り、もう一方はそのまま畑の中を突進。

カメラのスイッチをオンにする手ももどかしくシャッターを切ったが、
画面に納まっていたのは最後の1匹だけ。

あまりに突然の出来事に、しばらく声も出ない。
近頃、人里に鹿が出てくる被害が増えていることは聞いていたけれど。
前日散歩した別荘地の一画の、定住者らしき古屋の軒先に出ていた看板。
「鹿の肉、売ります」
ジビエ、などという生易しいものじゃない。

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by miltlumi | 2015-04-28 09:39 | フォトアルバム | Comments(0)