カテゴリ:機嫌よく一人暮らし( 262 )

かけがえのない人たち

 今年の初め、筋トレで痛めた筋を治すために駆け込んだ整骨院に、いまだに通っている。肩の痛みはとっくの昔に解消したが、治療師さんの、骨盤矯正の手腕にハマった。30代半ばとおぼしき、すっきり系の面立ち。支払い時、つややかな低めの声で「次どうしますか?」と尋ねられると、ついガラケー(いまだにこれが私のスケジュール管理ツールだ)を引っ張り出して「じゃあ4週間後に」と予約してしまう。

 先週、首のホネをくりくりと調整しながら、彼が低い声をさらに低めて、私の耳元でささやいた。「実はボク…」どきっ。
 「独立することになったんです」
 あ、そういう話。がくっ(笑) 瞬時に気を取り直し、カーテンを隔てた先にいる彼の同僚を憚りながら、私も小声で応じる。
 「今度のお店、どこなんですか?」
 「あの…。まだ本決まりじゃないんですけど。名刺とか、お持ちですか?メールしますから」
 施術が終わり、支払いのクレカと一緒にしゃらっと名刺を渡し、共犯者めいた視線を交わす。

 帰り道、もしも彼のお店が遠すぎて通えなくなったらどうしよう、と思う。彼は、世界中の誰よりも、当の私自身よりも、私の骨格のことを熟知している。そのことに、不思議な気がする。
 大袈裟に言えば、赤の他人に自分の命あずけてる感。そういう人は、他にもいる。

 まず、行きつけの美容師さん。私の髪はくせ毛で、ちょっと見はわからないうねりを計算に入れてハサミを入れないと髪型が決まらない。もうかれこれ25年近い付き合いの彼女でないと、手に負えない(と信じている)。
 しかも2ヶ月に一度は必ず会って、旅行したの離婚したの彼ができたの別れたの、きちんとアップデートしているから、たぶん私のプライベートライフ熟知度も、学生時代の親友の次くらいだ。
 1歳年上で、西麻布の賃貸マンションに一人暮らしで、福島県に親兄姉がいる。もしも彼女が引退して福島に帰っちゃったら、1ヶ月おきに東北新幹線に乗って訪ねて行かねばならない。

 歯科医の先生にも12年間お世話になっている。美容院ほど頻繁ではないが、年に1・2回はかならず詰めたりかぶせたりしたモノがコロリと取れて、駆け込む。詰め物やかぶせ物がしっくり馴染むように調節する、そのきめ細かい技術たるや、お見事なのだ。
 歯科治療という状況の制約上、美容師ほど密な会話は出来ないが、「奥歯がこんなにすり減って…。日中も無意識に歯を食いしばってませんか?」「寝てる時、歯ぎしりしてますね」などと、自分では気づかないもう一人の自分の姿を次々暴かれる。健康だった歯がぽろりと欠けて、「どうしてこうなるんですか?」と尋ねたら、一言。「加齢、ですね」 …。ふん。アンタだって12年分、おんなじだけ加齢してるくせに。
 先生がもしも独立開業してしまったら、これまた追っかけて行こうと心に決めている。

 長く生きれば生きるほど、このような「かけがえのない」赤の他人、が増えていく。もしも彼らがいなくなったら、という不安は、彼らに対する掛け値なしの敬意と感謝の裏返しだ。


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by miltlumi | 2017-08-11 15:48 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(2)

危機

 昨夜、ついに「若年性アルツハイマー」をググってしまった。いよいよヤバい。危機である。

 先月モントリオールに行ったとき、生れて初めて、前代未聞の失敗をしでかした。ホテルをダブルブッキングしていたのである。
 ダウンタウンでの仕事が16日までだから、翌日から車で1時間半のリゾート地のB&Bで2泊3日のプチ夏休みをとる、つもりが、予約を16日から入れていたのだ。ダウンタウンのホテルの部屋をシェアしていた仲間が旅慣れた人で、「だったら私も1足先に次の目的地に行くわ」と即決してくれ、ダウンタウンのホテルもペナルティーなしで1日早くチェックアウトさせてくれたおかげで、大過なく乗り切れた。
 1泊予約し忘れて宿無しになるより、ダブルブッキングでよかったね~、と彼女に慰められたものの、会社員時代の一時期は年に10回近く海外出張していた身としては、かなりショックだ。
 しかも、最終日の早朝、母からの電話でたたき起こされた。「なんでまだカナダにいるの?今日帰国じゃなかったの!?」と言われ、「時差あるんだから羽田は明日だよっ」と無愛想な声を出したものの、あとで見直したら、旅程連絡メールで帰国日を翌日にするのを忘れていた。これまた前代未聞である。

 時差ボケもなく日常復帰。。。するつもりで、歯医者の予約のあとに仕事の予定をいれた。なのに、当日すっかり歯医者を忘れて自宅でごそごそしていて、予約時間の1時間前に気づいた。慌てて着替えて飛び出し、事なきを得たが、出掛ける前にと思っていたシャンプーをする時間がなかった。髪が多少汗臭くて歯医者さんと仕事仲間に迷惑かけたかも。だけど間に合ってよかった、と自分を慰めてみたが、問題の本質はそこではない。

 それ以外も、友達とのランチで5,700円の割り勘が一人2,750円になったり、この3ヶ月間に5回も自転車で転んだり(これはアルツハイマー的な話とはちがうが)、挙げ始めれば枚挙にいとまはない。しかし、その程度ならまだ単なる「加齢」で笑い飛ばせる。決定打は、これ↓である。

 かなり年下の女性との仕事中。私の正確な年齢を知らない相手に、ちょっと謙遜してみた。
 「私なんてもうかなりトシだから…。お母様、おいくつ?」
 「えっと、うちの母は○○さんと同い年です」
 ○○さんは、日本人なら誰でも知っている有名人だ。そして、私の年齢に縁ある人。
 「あ~、私も、○○さんと同い年なのよ。ということはお母様とも同い年ね」
 「えっ!!!!!」
 相手は驚愕の表情を浮かべる。自慢じゃないが、私は実年齢よりは若く見られることが多い。まあ、悪い気はしない。

 しかし3日後。その仕事のフォローをしていて、突然思い出した。私が同い年なのは、○○さんではなく、○○さんの妻のほうだっ…。思いっきり蛍光灯状態ではあるが、その女性に謝罪と訂正のメッセージを送った。「家でもやもや考えてしまいました」と即レスだった。

 ちなみに、○○さん、の「○○」に当てはまる人名は「安倍晋三」である。
 
 …どこでどういうシナプスを開発すれば、自分が安倍首相と同い年、という思考が生まれるのか。仮に一瞬そう思ったとしても、口に出した瞬間、間違いに気づくだろうが。普通は。もう、私は自分の脳みそが信用できない。

 「若年性アルツハイマー」のチェックリストは、いずれも心当たりがあった。


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by miltlumi | 2017-08-02 17:45 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(0)

風に締め出される、またの名を1Q84事件

 部屋には開け放した窓から涼しげな皐月の風が流れている。爽やかな土曜日。夕方からのホームパーティの料理作りがひと段落したところで、バゲットを買いに玄関を出る。扉が閉まりかけたその隙間。10㎝ほどの隙間に風圧がかかり、ひゅうぅ、と風が強まったと思うと、ガチン、バタンッ。 …? ガチン? まさか。

 そぉっとドアを開けようとして、予感的中。恐るべき事態が発生していた。中途半端に浮いていたU字ロックが風に煽られ、ロックされてしまったのだ。

 …うそでしょ。あはは。

 って、ここで笑ってどうする。玄関外の物置から棒を取り出し、ドアの隙間からU字ロックを外そうと試みる。もちろん、そんな小手先で外からロックが開くはずがない。っていうか、それで外れたら、ロックの意味を成さないではないか。冷静な思考回路が自分をたしなめる。


 そうだ。セコム。数年前、旅行先のホテルの部屋の金庫に家の鍵を置き忘れ、帰国早々お世話になったことを思い出す。管理人室に行き、かくかくしかじか。しかしあいにく今日の担当は、仲良しのA氏ではなく、保守的なB氏。

 「セコムさんは、マンションとの契約上合い鍵は預かってますが、家の中のことは関知しませんよ」

 「え、じゃあ、どうすればいいんですか!?」

 「管理室は共用部分にしか責任がありませんから」

 むかっ。毎月きちんきちんと管理費を払ってる住民が、自分ちから締め出されたっていうのに、なんだ、その他人事モードは。しかしここで怒鳴ったところでロックが外れるわけもない。冷静な思考回路は、再びウルトラCを思いつく。

 「じゃあ、ハシゴ貸してください」

ベランダの窓を開けたままにしていたのだ。うちは2階なので、1階のうちのテラスからハシゴでベランダによじ登れる。なんたる幸運。って、窓を開けていたから風が通ってロックが煽られ、この悲劇が起こったとも言えるが。ともあれ、B氏はあくまで保守的である。

 「階下のお宅に立ち入らないといけないじゃないですか」

 「これからお断りしてきます」

 「でも、ハシゴ落ちたら危ないですよ」

 「構いません!!」

 とっとと〇号室に行き、いつもテラスで子供と遊んでいる若いお父さんに了解をとると、いやいやハシゴを運んできた管理人と共にテラスに侵入する。


 通常は「く」の字で使うハシゴを一直線に伸ばすと、かろうじてベランダの手摺の1mほど下に届く。

 「普通はこういう使い方しないんですよ」

 あくまでネガティブなB氏は無視。が、足に履いた9.5㎝ヒールのミュールは無視できない。つい最近読み直した村上春樹の「1Q84」の青豆(知らない人は1Q84を読んでね)を思い出す。ぴっぴっとヒールを脱ぐと、バッグにぼんぼんっと突っ込み、はしっとばかりにハシゴを登り始める。どきどき。


 ハシゴの上まで到達。手を伸ばし、1ヶ月前の体力測定で30kg以上をマークした握力で手摺をがしっと掴む。

 「手摺、つかみましたっ」

 不安げに私を見上げているであろうB氏に報告する。ハシゴ最上段に足をかけ、むぎゅっと体を持ち上げて、さらりとベランダに着地。

 「ありがとうございました~」


 妙に新しい気持ちで、見慣れたはずのベッドルームに足を踏み入れる。そこが1Q84もどきの新たな世界だったら。一抹の不安が脳裡をよぎるが、今はそれよりバゲットが先決だ。

 玄関で、閉まっていたU字ロックを開け、今度はしっかりと畳み込み、慎重にドアを開ける。階下のお父さんとB氏にお礼を言い、メゾンカイザーに向かったのであった。


 それにしても、風に締め出されるなんて。U字ロックは最後まできちんと畳みましょう、とマンション掲示板に貼り紙しようとして、こんな記事を見つけた。





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by miltlumi | 2017-05-29 21:33 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(4)

節分の日の出来事

 節分。快晴。春の訪れ。暦の上で、新しい季節が始まる。
 「八方塞がり」だった昨年からようやく解放される、と心も軽く、出雲大社分祠でいただいた福豆の豆まきを、朝からいそいそと執り行った。歳の数だけ豆を食べているうちに出掛ける時間が迫り、急いで支度を整える。今日は朝から晩までてんでばらばらな用事が目白押し。あの会議にはこのノート、この会議にはあの資料。忘れ物しないようにしなきゃ、と思いながらも、電車の時刻を気にして家を飛び出す。

 駅への道すがら、夜の勉強会の参考図書を忘れたことに、早速気づく。あ、やっぱり。何か忘れてると思ったんだ。でもこれならたいしたことない。隣の人に見せてもらえばいいや。他力本願、である。
 地下鉄への階段を降りる前に、2番目の忘れ物に気づく。最初の会議に必要な書類を印刷し忘れた。あいたっ。これはちょっとマズい。自分で作った資料を説明する立場なのに。でも、事前に相手方にメールで送ってある。秘書さん、優しそうな人だったよね、とスマホからメールで印刷依頼。即レス。ありがたいことである。
 2度あることは3度ある。というけれど、まさかまだ他に忘れ物なかったっけ。

 やっぱりあった。次の会議、非常勤で働いている会社の従業員用セキュリティカード。あああ。これは結構マズい。総合受付に行くと、いろいろ職務尋問されて紙を書かされて厄介なのだ。ここでも頼るは秘書さん。電話をして、わざわざゲートまでお迎えに来てもらう。ホント、お手数おかけします…。

 会議が終わり、彼らは全社員総会で別の場所にある会議室へ移動、というので、私もとっとと退散する。…と、エレベーターの中で、ゲートを出るにもカードが必要なことを思い出す。げげげっ。これはかなり本格的にマズい。とりあえずゲートに行くも、1カード1タッチで1人ずつ、ピッピと出入りする中、紛れて出て行くことは不可能。テナント企業社員専用ゲートだから、警備員もいない。
 策のないまま再びエレベーターを昇る。当然ながら、オフィスに入ることもできない。カード不要の秘密の出口はないものかとうろうろするが、ドラえもんじゃない限り、そんなもんあるはずもない。

 なんの勝算もなく、みたびエレベーターへ。そこに、地獄に仏。警備員さま!! 見た目も明らかな制服姿に、聞かずもがなの問いかけをする。
 「あの、警備員の方ですか?」
 「…? はい。でも、〇〇証券の専任ですが」
 〇〇も△△もカンケーない。かくかくしかじか、出来るだけしおらしい表情を作ってお願いする。
 「つまり、出て行ければいいんですね」
 「はい。すみません。お願いします」
 人目を盗んでピピッとカードをかざした警備員さんに、ゲートの外から深々とお辞儀をしたのであった。

 「八方塞がり」をうまく乗り切るには、まわりをぐるり囲む人たちに助けを乞うしかないという。ということで昨年は色々な人に助けていただいた。最終日の節分の日、まさにその集大成とも言える「人様の情け」オンパレードであった。
 新しい季節が始まって1週間。相変わらず人の助けで生きている、今日この頃である。


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by miltlumi | 2017-02-10 10:29 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(0)

永遠の松田聖子

 元旦が日曜日だったせいで、仕事始めと思ったらすぐ成人の日の3連休。昨日からようやく、街も人も通常のペースに戻った感じがする。毎朝同じ時間に同じ場所に通勤する習慣のない私も、仕事外出のためにきちんと身繕いする作業が再開した。
 出掛けない日はノーメイクの顔を鏡に映して、しげしげと覗き込む。一昨年は、新たなしみやしわを見つけるたび「げげっ」と驚いていたのが、昨年からタメ息に変わり、年末には静かな諦めが浮かぶようになっていた。確実に歳はとっていく。
 とはいえ、1月初めはその諦念がちょっと揺らぐ。なぜかといえば、年末に観たTVのせいなのだ。

 子供の頃から全然TVっ子でなく、今でも夜7時のNHKニュース(すみません、飲み会がない限りこの時間うちにいるんです)、週末はそれに続き「ブラタモリ」、「ダーウィンが来た」から大河ドラマの梯子、くらいがせいぜいである。
 それが、年末年始だけは一変。帰省先の母と兄一家の家では、朝から晩まで50インチの大画面いっぱいに、騒がしい色と音とともに、妙に眉の整った男の子たちや個性があるんだかないんだかわからない女の子集団が飛んだり跳ねたりしている。
 「神ってる」というコトバがそこらじゅうで連発されるのも、ピコ太郎のCM露出度がこんなに高いのも、12月30日に初めて目の当たりにした。

 大晦日の夜は、傘寿を越えた母のために紅白歌合戦と決まっている。それでも彼女は小林明子と美川憲一がいないのが不服そうだ。
 紅白どちらの歌もイントロとともに口ずさみ始める甥っ子の横で、私は「ダーウィンが来た」の珍獣を見るのと同じ視線を投げる。ときたま登場する馴染みの顔にも、「TOKIOもおっさんになったなぁ~」といった感想ばかり。

 とそのとき。出た。松田聖子。

 いつものように(って、年1回、紅白のときしか知らないけど)、こめかみの皮膚を思いっきり引っ張り上げるアップのヘアスタイルで、ぴんぴんの肌。まっ白なデコルテ。
 決して誰も、全然まったく気にもしてないとは思うけれど、何を隠そう、松田聖子は私と同い年なのだ。正確には、彼女のほうが1ヶ月年上である。
 それなのに、なんだこの肌は。キレイ過ぎるじゃないか。
 相手は押しも押されぬ歌手、女優。美肌のためなら世界中どこへでも行く(細胞が生まれ変わる28日周期を早めるためのピーリングを、彼女がLAかどっかでやってると聞いたことがある)財力と根性。同い年というだけで、美しくあることが仕事である彼女と、自分を比べるほうが間違っている。

 それでもやっぱり、気になる。「聖子ちゃんカット」が一世を風靡した頃から、クラスメートとともに同い年の対抗意識を燃やした仲(?)である。結婚も出産も離婚も再婚も、とても他人とは思えなかった。その彼女の、経年変化、のなさ。
 画面に近寄って、まじまじと見つめてしまった。
 所属事務所からの厳命なのか、NHKカメラマンの気配り精神なのか、顔を大写しにしたアングルが2秒以上続くことはなかった…ような気がする。

 というわけで、仕事始めの外出にあたり、経年変化と諦念について、さまざまな思いが胸を去来したのであった。


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by miltlumi | 2017-01-11 15:40 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(2)

年末小景

 今朝の朝ご飯は、ローストオニオンディップ添え丸かじりきゅうり1本とコーヒーだった。明日から実家で年末年始を過ごすので、今日中に冷蔵庫の野菜室を空にしないといけないのだ。
 のんびりする間もなく、大掃除開始。今年はさぼりにさぼって全て後伸ばし、昨日の晩に最も難物の換気扇とガスコンロまわりをやっつけたから、多少は気持ちが軽い。順番を間違えないよう、まずカーテンを取り外し、洗濯機が回っている間に窓ガラス拭きと網戸洗い。腰高窓の網戸は取り外してお風呂場で洗う。ベランダは、アロエの花に引き寄せられた小鳥たちが落し物をしていくので、水洗いをしないといけない。
 昼ご飯(ブロッコリーとしめじと玉ネギのガーリックオイルスパゲティときゅうり1本)のあと、掃除機をかけてフローリングの床を2回雑巾がけしてから、ワックス塗り。キッチンは2度塗りしたほうがいいのだが、今年は断念。その代わりに玄関の石タイルに専用のワックスを塗りこむと、黒光りして美しい。
 ワックスを乾かしている間に、お風呂の掃除。天井の換気扇は定期的に洗っているが、湯船のエプロン外しは年1回だけのスペシャルである。

 すべて終了したのは午後4時。やればできるものである。ぴかぴかのお風呂はもう汚したくないので、慣れない雑巾がけで強張った身体をほぐしがてらスポーツジムの大風呂に行くことにする。
 年内最終日の夕方ということで、案の定サウナはめいっぱい混んでいた。ひるまず奥の高い段に体育座りをして見回すと、みなさま常連の顔見知り同士らしく、おしゃべりの輪ができている。このジムは、場所柄いわゆる「有閑マダム」系が多く、平均年齢はおそらく私より10才くらい上だ。
 「今日はダンナが夕飯いらないから、友だちと忘年会なのよ」とはしゃいでいる50代後半。
 「その友だちって、51才なんだけど、なーんと電撃アメリカ人と結婚してハワイ島に行くのよ。タイのリトリートで一緒になった人なんですって。ハワイ島に家2軒持ってる海洋学者。60過ぎで、最初はじじいだと思ったんだけど、やりたいことがいろいろ一致してて、決めたんですって」
 ふーん。リトリートか。クリスマス3連休をタイで過ごしたのに、脇目もふらずにひたすら金ぴかの仏様に手を合わせていた自分が悔やまれる。
 リトリート、ねえ。でも、別に、ハワイ島になんて住みたくないし。
 ま、リトリートで出会えるのは、ハワイ在住者だけとは限らないし。
 あ、それよりそもそも私、リトリートなんて興味あるんだっけ。

 それにしても、マンダリンオリエンタルのアフタヌーンティーは最高に美味しかったっけ。

 思いは、散々に乱れ飛ぶ。
 来年、いいことがありますように。
 ***
 今年も1年、ご愛読ありがとうございました。
 来年が、みなさまにとって佳い年になりますように。
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by miltlumi | 2016-12-29 22:02 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(0)

無印編 塞翁が馬

塞翁が馬。禍福はあざなえる縄のごとし、とも言う。

福)真夜中に素晴らしいクローゼット収納改造計画を思いついた。
禍)そのために必要な無印の収納ケース6個をなかなか買いにいけなかった。
福)ミッドタウンから平日2日間限定ポイント10倍キャンペーン(つまり10%引き)のDMが来て、対象店舗に無印が入っていた。
禍)金曜日に勇んで行ったら、対応してくれた店員が新人の中国人女性で、こちらの質問にひとつも答えられなかった。
福)代りにやってきた中国人男性の店員が、イケメンだった。
禍)送料節約のためちゃりで運ぼうと、ケースの四隅を養生してくれるよう頼んだら、二人の中国人の梱包材の使い方がめちゃくちゃだった。
福)見かねて自分でやり始め、彼らと応援に入った日本人女性の3人が3個やる時間で私が3個仕上げた。
禍)さすがに6個は持ち帰れないので、まず3個だけ受け取って駐輪場に向かったが、途中で彼らの梱包がぼろりと落ちた。
禍)しかも3個だけでもとてもちゃりでは運べない大きさであることが発覚した。
福)3個を持って店に戻り、配送依頼をしたら、対応した日本人女性店員の感じがとてもよかった。
福)しかも配送料金が予想よりずっと安い金額だった。
禍)最速の配送日が当日どころか3日後の月曜日で、週末に改造計画を実行しようとしていた予定が狂った。
福)無印のためを思い、日本人女性店員に梱包材の件を指摘したら、とても丁寧な謝罪と的確な対応をしてくれた。
禍)月曜日に配送されてきた段ボールが、雨でぐしゃりと濡れていた。
福)中のケースには影響がなかった。
禍)ケースを見ると心がときめかず、実は今使っている小引き出しのキャビネットをすごく愛していること、無印は無駄な買い物だったことに気づいた。
福)じっくり考え、洋服ではなく鞄を入れる案を思いついてようやく心ときめき、整理コンサルのサンプルケースにしようと”Before”の写真を撮った。
禍)鞄を入れてみたら、全然すっきりせず、しかもケースごと置くと棚がかしいでしまった。
福)再度考え直して、鞄ではなくジーンズ類を入れる案を思いついて、これなら絶対今よりすっきりすると確信した。
禍)心が逸り、早速ジーンズを引っ張り出してケースにいれ始めてから、”Before”の写真を撮り忘れたことに気づいた。
福)期待どおりジーンズがすっきり納まり、せめても、ということで”After”の写真を撮った。
禍)収納整理などしているヒマはなく、仕事をしなければならないことを思い出した。
福)PCに向かったとき、この話を「塞翁が馬」シリーズとして、ブログに書くことを思いついた。
禍)ブログなど書いているヒマはなく、仕事をしなければならないことを思い出した。

…かくして、禍福はあざなえる縄のごとく、延々と続くのであった。
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by miltlumi | 2016-10-19 15:29 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(2)

正しい葡萄の食べ方

 ネット通販で買い物もしていないのに、宅配便屋さんがやってきた。何かと思ってドアを開け、差し出された箱を覗きこんだら、差出人は仕事関係の方だった。「葡萄ですよ」とお兄さんがわざわざ教えてくれる。わあ、葡萄。いそいそと包みを開けると、大きな実でずっしりぎっしり重いピオーネの房が3つ。わあい、と立て続けに2・3粒、口の中に放り込んだ。

 子供の頃、葡萄といえば薄ぼんやりした海老茶色のデラウェアと決まっていた。ひと粒ずつ枝からむしってちゅっと押えて皮から実だけを吸い込む。大きな口を開けてがぶりとやれば好きなだけ果肉を頬張れる梨やバナナとちがい、あの小ささはあまりに頼りない。両手の親指と人差し指を使って出来る限りの速さで粒をむしっては口に運び…とやっていた。
 ところが隣の兄は、ひと房全部の粒をむしり取ったかと思うと、ざらざらっと一気に口の中に流し込んだ。あっけにとられて眺めていたら、兄はしばらく口をもぐもぐと動かしていたが、ごくりと飲み込んだかと思うと、大口開けてべえっと差し出した舌の上に、平べったい海老茶色の物体が。実だけ吸い取られた皮の塊であった。

 そうなのだ。葡萄は美味しいけれど、あの皮が面倒なのだ。中学くらいからだろうか、マスカットや巨峰が出回り出すと、粒が大きくなったのは嬉しいが、爪の間を紫色に染めていちいち皮をむくのが面倒だし、第一最後にタネをプッと吐き出さないといけない。
 20代後半で赴任したトロントの八百屋さんで「Seedless」と書かれた粒の細長い葡萄を発見したときは感動だった。タネがないだけでなく、皮ごと食べられる。
 野菜も果物も、皮と実の境目のところに一番栄養があるという。葡萄の境目は、実そのものよりほんの少し硬くて、でも甘味と渋味がほどよく調和して、美味しさという点でも絶品。でも指で皮をむくと、どうしてもあの境目の絶妙な部分が皮のほうにくっついていって、あとにはふるふるした薄緑の実しか残らない。
 だから、皮をむく手間もなく、境目ごと丸ごと味わえる北米の葡萄は、最高だった。デラウェアの3倍くらいの大きさのひと房を、ぺろりと一気食べしていた。

 最近の日本の葡萄は、種なし改良こそ進んだものの、皮ごと食べられる品種はまだ少ない。それでも、兄のスーパーな食べ方とトロントでの経験に洗脳されてしまった私は、お行儀の悪いことに、巨峰もピオーネもつい皮ごと口に入れてしまう。口の中で皮と実をくにくにと分けて、舌と上あごと歯を使って例の境目を皮からこそげとり、実と一緒に飲み込む。これぞ、最も正しい葡萄の食べ方である。

 件のピオーネも、そのように口の中でもぐもぐやりながら、不意に気づいた。そもそもこの葡萄、何の理由で彼は私に送ってきたんだろう。お中元や暑中見舞いの季節ではないし、最近何か特別の計らいをした記憶もない。もちろんメッセージカードなど添えられていない。げげ、もしかして、本当は私宛じゃなかったのかも!? 初物のピオーネの実の大きさと甘さへの感動が大きい分、不安が増大する。
 急いでお礼のメールを出したら、「ふるさと納税で葡萄の木を1本持っているので、皆さんに配っています」というお返事。ほっ。
 有難い気持ち新たに、久しぶりに指で丁寧に皮をむいてみた。一番美味しく熟したタイミングで摘み取られた葡萄は、例の薄紫の境目をちゃあんと実のほうに残して、するりとむけた。有難や、旬の味覚。
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by miltlumi | 2016-09-21 17:52 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(0)

正しい葡萄の食べ方

 ネット通販で買い物もしていないのに、宅配便屋さんがやってきた。何かと思ってドアを開け、差し出された箱を覗きこんだら、差出人は仕事関係の方だった。「葡萄ですよ」とお兄さんがわざわざ教えてくれる。わあ、葡萄。いそいそと包みを開けると、大きな実でずっしりぎっしり重いピオーネの房が3つ。わあい、と立て続けに2・3粒、口の中に放り込んだ。

 子供の頃、葡萄といえば薄ぼんやりした海老茶色のデラウェアと決まっていた。ひと粒ずつ枝からむしってちゅっと押えて皮から実だけを吸い込む。大きな口を開けてがぶりとやれば好きなだけ果肉を頬張れる梨やバナナとちがい、あの小ささはあまりに頼りない。両手の親指と人差し指を使って出来る限りの速さで粒をむしっては口に運び…とやっていた。
 ところが隣の兄は、ひと房全部の粒をむしり取ったかと思うと、ざらざらっと一気に口の中に流し込んだ。あっけにとられて眺めていたら、兄はしばらく口をもぐもぐと動かしていたが、ごくりと飲み込んだかと思うと、大口開けてべえっと差し出した舌の上に、平べったい海老茶色の物体が。実だけ吸い取られた皮の塊であった。

 そうなのだ。葡萄は美味しいけれど、あの皮が面倒なのだ。中学くらいからだろうか、マスカットや巨峰が出回り出すと、粒が大きくなったのは嬉しいが、爪の間を紫色に染めていちいち皮をむくのが面倒だし、第一最後にタネをプッと吐き出さないといけない。
 20代後半で赴任したトロントの八百屋さんで「Seedless」と書かれた粒の細長い葡萄を発見したときは感動だった。タネがないだけでなく、皮ごと食べられる。
 野菜も果物も、皮と実の境目のところに一番栄養があるという。葡萄の境目は、実そのものよりほんの少し硬くて、でも甘味と渋味がほどよく調和して、美味しさという点でも絶品。でも指で皮をむくと、どうしてもあの境目の絶妙な部分が皮のほうにくっついていって、あとにはふるふるした薄緑の実しか残らない。
 だから、皮をむく手間もなく、境目ごと丸ごと味わえる北米の葡萄は、最高だった。デラウェアの3倍くらいの大きさのひと房を、ぺろりと一気食べしていた。

 最近の日本の葡萄は、種なし改良こそ進んだものの、皮ごと食べられる品種はまだ少ない。それでも、兄のスーパーな食べ方とトロントでの経験に洗脳されてしまった私は、お行儀の悪いことに、巨峰もピオーネもつい皮ごと口に入れてしまう。口の中で皮と実をくにくにと分けて、舌と上あごと歯を使って例の境目を皮からこそげとり、実と一緒に飲み込む。これぞ、最も正しい葡萄の食べ方である。

 件のピオーネも、そのように口の中でもぐもぐやりながら、不意に気づいた。そもそもこの葡萄、何の理由で彼は私に送ってきたんだろう。お中元や暑中見舞いの季節ではないし、最近何か特別の計らいをした記憶もない。もちろんメッセージカードなど添えられていない。げげ、もしかして、本当は私宛じゃなかったのかも!? 初物のピオーネの実の大きさと甘さへの感動が大きい分、不安が増大する。
 急いでお礼のメールを出したら、「ふるさと納税で葡萄の木を1本持っているので、皆さんに配っています」というお返事。ほっ。
 有難い気持ち新たに、久しぶりに指で丁寧に皮をむいてみた。一番美味しく熟したタイミングで摘み取られた葡萄は、例の薄紫の境目をちゃあんと実のほうに残して、するりとむけた。有難や、旬の味覚。
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by miltlumi | 2016-09-21 17:52 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(0)

自分へのご褒美

 先週後半から今週にかけて、ちょっと時間のかかる仕事に没頭した。日頃はいろんな仕事を支離滅裂にやっているので、のべ何十時間も要するひとつの課題に連日取り組むのは、なかなか新鮮である。考えてみれば、会社員時代も、おんなじ業務を1日中やり続けるなんてめったになかった。
 このようなハードワークには、当然ながら「自分へのご褒美」がつきものである。途中、ちょいと用事で仕事中断して日本橋に行ったついでに、三越でケーキを買う。ずらり名店が並ぶデパ地下でケーキを1個だけ選ぶのは至難の業だ。2個3個買えばいいかというと、それでは「ご褒美」の有難味が薄れる。
 うちに帰ると、仕事を再開する前に先にご褒美を食べてしまった。今夜はもう頑張るしかない。

 …というわけで、トイレにも立たずべったり机に向かうこと3時間42分。気づけば午前様である。やればできるものだ。いやあ、プチ達成感。さすが、BEL AMERのチョコモンブランは効果絶大。
 やっぱり、仕事の後は(も)ご褒美でしょ。しかしケーキはもうない。まあ夜中に食べると胃にもたれるし。代りに、疲れた身体と脳みそを和ませてくれる何か、が欲しい。普通の人なら、頭のクールダウンも兼ねて、お気に入りの音楽を聴いたりゆっくりお風呂に入ったり、ぼんやり画集を眺めたりするのだろう。

 私も、つい好きな趣味に走った。それは、クローゼットの整理収納。…ん!?

 整理整頓が何より好きな私は、日頃からヒマさえあれば引き出し整理をしていて、収納スペースの秩序はほぼ完璧である。なのに、というから、だからこそ、こともあろうに夜も真夜中、余白の美を体現しているクローゼット内の有効利用について、検討を始めてしまったのである。

 そもそも引き出し1つ、ガラ空きじゃん。靴下類が引き出し3つに分散してるのは非効率じゃないか。たたんで縦置きした衣類の高さが引き出しの深さの半分ってことは、ここにデッドスペースがある。
 やおら物差しを取り出し、無印良品サイトとセシールのカタログを見比べながら、最適な引き出しの組み合わせを考える。
 でも、そうやってスペースセーブして捻出した空間を、何に使うのか。う~ん。別室のタンスの中のオフシーズンの服をこちらに集結させれば、衣替えの必要がなくなる。じゃあ、タンスに空いたスペースは。えっと、えっと。
 整理し直す必要のないものを整理しようとしているのだから、ただでさえ疲れている脳みそは堂々巡りするばかり。でもなんだかアル中患者のように、ぐらぐらするアタマの重さが妙に快感で、もうやめられないとまらない。
 ようやくベストな計画が結論づけられたところで、午前2時。まずい、まだ仕事は道半ばだった。明日(今日か)も朝から頑張らねば。

 というわけで、頑張って仕上げた仕事を無事提出し、うきうきと無印良品のお店に向かったのである。帰りがけ、スーパーで久しぶりに夕飯の食材を見繕った後、入口に置かれた鉢植えも買った。
 ベランダに新入りとして加わった深紫のノボタン。鰤カマの塩焼きに秋茄子の煮浸し、ピーマンとしめじの和え物と若芽のお味噌汁。そしてクローゼット収納。会社員時代、ご褒美といえばうん万円の洋服や靴だった身としては、ささやかなものである。


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by miltlumi | 2016-09-15 13:08 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(2)