カテゴリ:マンモス系の生態( 74 )

フェアの反対語

 フェアじゃないことがすごく嫌いだ。
 卑近な話だが、お酒を飲まない私が、がんがんワインを開ける輩と飲みに行って、最後に「ワリカンね」と言われると、「それはないでしょー」と思う(だけでなく、顔に出てると思う)。自分が飲んだ分まで人に払わせるのは、フェアじゃない。
 もちろん、「飲み放題」の場合は、こちらは慎ましくジンジャエール2杯のところ、まわりが何杯ビールを飲もうがサワーと日本酒をちゃんぽんにしようが、どうでもいい。だって、「飲み放題」コースに乗ったのは自分なんだから。

 まあ、この程度のフェアネスなら、話はラクだ。けれども、社会の(というより会社の?)中における「フェアネス」となると、俄然フクザツ怪奇、意味不明。少なくとも私及び私の周りにいる女性にとっては。
 幸い私は「会社」という組織から中途退出してしまったが、そこにまだいる女性たちと話をすると、たいがい「会社って、フェアじゃないよね」という話になる。
 曰く、こっちが一生懸命働いてるのに、どうして〇〇さんは一日中新聞読んでるだけで私より給料が高いのか。
 曰く、こっちが会議で正しいことを言ってるのに、どうしてスルーされちゃって、後から同じような発言をした〇〇君が褒められるのか。
 「女性活躍推進」とか言ったって、所詮こんなもんよね。
 その場に居合わせた女性一同、ほぉっとため息をつき、遠い目をする。

 こうして近頃もやもやしていたら、尊敬して止まない内田樹氏の本がAmazonから届いた。いそいそとページをめくって、いきなり目ウロコをくらった。
 まず、「フェア」の反対語は「アンフェア」ではなく、「ファウル」。
 野球で、ダイヤモンドの中に飛んだ打球はフェアだけど、その外だとファウルという、あれ。
 で、フェアかファウルかの境界線は、人間が恣意的に決める。
 決めないと、ゲームが始まらないから。
 そして、例えば個々の能力差に応じて「ハンディ」をつけるのがフェアかどうか、客観的な基準は存在しない。
 なぜって、その判断は恣意的だから。
 でも、ひとつだけ明らかなことがある。
 それは、フェアかファウルかを決める目的は、「ゲームをするため」だということ。
 そう決めたほうが、ゲームがより真剣に、愉快にできる、と判断されれば、それが「フェア」と見做される。
 そう決めたほうが、ゲームプレイヤー全員の総和として、利益が大きい、と判断されれば、「フェア」なのだ。

 ものすごく納得してしまった。

 今の会社は、なんだかんだ言ってまだまだまだまだ男社会である。資本主義に基づく経済ゲームの参加者のマジョリティーを占める男性が、より愉快にプレイできること、総和としての利益が大きいこと。これが、ゲームのルールの判断基準である。
 時給や勤務時間の算数計算やら事業戦略戦術上の効率やら、「『客観的に見て』フェア」と思われることを主張しても、ゲームのルールに則っていなければ、「ファウル」になってしまうのだ。

 さすが、内田先生。深い。
 たしかに、相手がガンガン飲んで支払は全額こちら、でもフェア、なこともある。後輩と飲みに行くときとか。自分の中で、全く別のルールが適用されている。なるほど。

 じゃあ、ルールも知らないままゲームに放り込まれたマイノリティーたちはどうすればいいのか。最近、真剣にこのことについて考えている。


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by miltlumi | 2016-12-15 22:50 | マンモス系の生態 | Comments(0)

オトコ脳について考える

 男らしい男性と面と向かっていると、なんだか落ち着かない、不思議な気分になることがある。ここでいう「男らしい」とは、胸板が厚いとかハンマー投げがうまいとかマンモス狩りが得意だとかいうことではない。脳みそが典型的に男、という意味である。

 一緒にいて、ふと会話が途切れ、しばらくお互い黙ったまま、という時間が生じる。恋愛関係にない限り、それも火がついてから3ヶ月以内でない限り、そういう沈黙の間、お互いの瞳をじっと見つめ合う、などというこっ恥ずかしい芸当は出来るものではない。
 それぞれアサッテの方向を向き、相手について、あるいはまったくちがう事柄、たとえば「今日の夕飯のおかず、冷蔵庫に何が入っていたっけ」とか「明日の会議のプレゼン、あのページをやっぱり最後に持って行こう」とか、何やら思索に耽る。…と思っていたのだが、男性の場合そうではない。
 そういうとき男性は、何も考えていないのである。

 男脳女脳の話が巷にあふれ、それぞれの思考の遺伝的なちがいがあれこれと取沙汰されている。その中で、私がいちばん驚いたのは、なんと、男性が休んでいるとき、その脳みそ全体の実に7割が、完全に活動を停止するということ。それに対して女性は、脳みその9割が活動状態にあるそうだ。
 もともと人間は脳みその1割しか使っていない云々の議論があり、「脳みそ全体」とは何を指すかという問題はある。ただ、いずれにしろそれは分母の話。分子だけで見て、男が3に対して女が9、というのは、あまりに顕著な違いである。カンタンに言えば、女性は男性の3倍、モノを考えているのだ。
 あなおそろしや。

 黙したまま語らぬ男性に対して、「今、何考えてるの?」と尋ねたことのある女性は、私だけではないと思う。古今東西、そう問われた男性の答えはたいがい同じである。
 「何も考えてないよ」。
 またまた~。考えてないなんてあり得ないでしょ。何か考えてるに決まってるじゃない。隠しごとでもあるかしら。で、そのあとの女性の思考は二手に分かれる。
 やだこの人、私のこと好きになっちゃったのかしら。なんてって告白しようか悩んでるんだわ(楽観タイプ)。
 やだこの人、私のこと退屈だと思ってるのかしら。席を立つ言い訳を巡らしてるにちがいないわ(悲観タイプ)。
 両方とも、ブー。正解は「本当に何も考えていない」。

 心理学者や脳科学者が証明したこの科学的事実を知って以来、私は楽観主義も悲観主義も捨て去り、ただその表情をじっと眺める。この人は今、正真正銘なんにも考えていないのだ。完全停止している脳みその姿を想像する。
 茫洋としたススキ野原の上をそよぐ風。いかん、葉が動いているではないか。
 低い雲の垂れこめる空の下に広がる砂漠。いずこからラクダが…。いかんいかん。
 常に9割動く女性脳を持った私は、「何も考えてない男性の脳みそ」に関して、どうしても何も考えられない。ちがう。「何も考えられない」と考えているのだから、やっぱり何か考えている。男性脳には、決してなれない。

 ちなみに、このブログは夕飯の支度をしているとき思いついた。ワカメを水に入れてもどしながら次はきゅうりを刻もうと計画し、同時にそういえばあの人からメールの返事が来てないなあと思いつつ、である。その間ずっと頭の中にユーミンの「メトロポリスの片隅で」がBGMで流れていた。


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by miltlumi | 2016-10-10 11:59 | マンモス系の生態 | Comments(2)

今さらのアナ雪(下)

 一方、アナのほうはもっとわかりやすい。エルサの秘密を知る由もないまま(=重要な企業秘密は蚊帳の外)そのとばっちりを受けて一般社会から隔絶されていた(=閉鎖的な内勤業務だけ)のが、突然外界への門戸が開かれて有頂天(初出張?初赴任?)となる。そこで出会った他国の王子様に一目惚れして、いきなり結婚の約束(Due Diligenceなしで合併覚書締結)。
 こうした展開にまつわるラーニングポイントは、以下のとおり。

 教訓その3。ビジネス界では性悪説を腹に据えておくこと。
 女性は一般的に男性より正義感が強く(心理学の研究調査でそのような結果が出たとどこかで読んだ)、また世間知らずである。そのような女性がビジネスの現場、特に他社との交渉といった社外とのフロントに立ったとき、相手もフェアに行動するだろうという根拠のない性善説に囚われることが多い(少なくとも私はそうだった)。
 ところが男は、自分の目的達成のためならどんなに汚い手(?)も平気で使う。自国で王座に就く望みのないハンス王子の策略は、その典型。まんまと信じてしまったアナがバカだった、と言わざるを得ない。信頼関係はビジネスの基本だが、むやみに他人を信用すると馬鹿を見る。まずは疑ってかかる、性悪説から入るほうが無難である。
 などと偉そうなことを言う私も、ハンスの素顔が明らかになった瞬間、思わず「え~っ」と声を上げてしまった。ディズニーワールドに浸って「ステキな王子様♡」とのほほんと画面を眺めていた私は、まだまだ世間知らずである。

 教訓その4。「同志」を見極めよ。
 世間知らずな私がもう1ヶ所、「え~っ」と声を上げてしまったシーンは、アナを甦らせる抱擁を与えたのがクリストフではなくエルサだった場面だ。ここでもディズニーにやられた。信頼できる人は俗世間での地位とかに関係ないんだよねー、スヴェン、もっと速く走れ!と手に汗握ってクリストフを応援していたのに、最後のどんでん返し。
 これも示唆的である。ごく少人数の女性が孤軍奮闘していた時代は去り、少しずつではあるが女性の同志が増えてきている。社内外問わず、頼れる者は実は同性。メディアが「女性社員同士の足の引っ張り合い」などと面白おかしく騒ぐこともあるが、あれこそが男性による女性への暗黙の「揚げ足取り」である。女性の嫉妬など可愛いもので、ビジネス界における男性の嫉妬ほど怖いものはない。それこそ神経戦の戦術ノウハウにかけては年季がちがう。
 もちろん、真の意味で女性を応援してくれるビジネスマンもいるが、羊の皮をかぶった狼クリストフがいないとも限らない。相手を見極める冷静な目を養うことが肝要だ。

 それにしても、ディズニー童話も変わった、と思う。白雪姫もシンデレラも眠れる森の美女も、みんな最後は「王子様と幸せに暮らしました」だったのに、ここではアナを救ったのが王子様ではなく、野趣あふれるクリストフでもなく、同性の姉であるエルサだったとは。
 人生の大先輩であるビジネスウーマンが、ふと漏らした言葉が思い出される。
 「オトコは裏切るけど、仕事は裏切らないからね」

 「アナと雪の女王」が日本人女性に大受けだったことが、結局のところ妙に納得できた。 (おしまい)


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by miltlumi | 2015-11-02 21:30 | マンモス系の生態 | Comments(2)

ぶひっ

 ものすごく真面目な会議(って、真面目じゃない会議など本来あってはならないのだが)で、思わず「ぶひっ」と言いそうになることがある。

 営業会議で、ターゲットクライアントにつけ入ろうとするライバル会社があるらしい、という話になった。東京大学の学部と大学院を卒業した優秀な若者が、つかんだ噂を憤懣やるかたないという口調で報告する。
 「あいつら、汚い手を使ってしきりにクライアントにアキナミを送ってるんですよ」
 ぶひっ。アキナミ? 送る? 秋波? …それって、シュウハ、じゃないですか? 
 議論の焦点はそのライバルをどう出し抜くかに移っている。場違いな笑いを漏らすわけにもいかず、しかしもう会議に集中できない。秋風と間違えてないか。いや、秋風は秋と飽きの掛詞、失恋の予兆を示す常套句だ。恋の始めの思わせぶりな目線とはちがう。秋きぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる。いや、これは古今和歌集、ただの季節の歌だ。
 ふと、彼が理系であったことを思い出す。いや、理系文系関係ない。一回り以上年下の将来を嘱望された彼が、この先一生「アキナミ」と言い続け、陰で「ぶひっ」とか思われるのは忍びない。会議後、私は勇気を出して、彼を会議室の隅に手招きした。
 「あれ、アキナミじゃなくてシュウハって言うのよ」
 彼の顔が真っ赤になった。でも、これは人助けだと思う。

 助けてあげられない場合もある。相手が目上だったり、ものすごーくプライドの高い人だったりすると、さすがにこちらも躊躇する。
 以前勤めていた会社での新規事業戦略会議。部門をひとつ新設して1年後に新製品を発表しようというプランを話し合う中で、私の上司がとるべき戦略の講釈を垂れた。
 「うちのプロダクツをいかに迅速に市場でフッキュウさせるか、そのために…」
 ぶひっ。フッキュウ? 復旧って、まだ最初の商品を出してもいないのに? 前後の脈絡から想像するに、それが「普及」の意味であることに気づいた。こちらも早稲田大学を出た秀才である。
 その後、この上司は役員も出席する会議で新製品がリリースされるまで繰り返し「フッキュウ」戦略を熱弁した。そのたび、私は下を向いて「ぶひっ」とつぶやくしかなかった。

 最新の「ぶひっ」は、トップが不正を主導した場合、部下はどう対処できるかできないかという、これまた真剣な議論。この手の修羅場に何度も立ち会った経験豊かな方が重々しく発言する。
 「通常であれば、そうなったら部下はあがらえないですよ」
 ぶひっ。あがらえない。あがらう。あが…。あら? あらがう、だよね。 

 思惑(おもわく)が「シワク」になったり、下ネタ(シモネタ)が「ゲネタ」になったりする現場に居合わせたこともある。いずれも心の中で「ぶひっ」と思いながらも、ご本人を正す勇気が出なかった。
 ちなみに、なぜこの手の間違いに対して「ぶひっ」という擬音が発せられるのか、自分でもよくわからない。


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by miltlumi | 2015-08-27 22:09 | マンモス系の生態 | Comments(0)

呼ぶもの

 英語にはいささか自信があったのだが、この歳になるまで全然知らなかった単語がある。
 Calling。天職、と訳す。ご存じでした?

 元はと言えば、昨秋受講したコロンビアビジネススクールのネット通信教育である。リーダーシップを学ぶ講座の中での「あなたにとって仕事とは?」というセッション。いかにもアメリカのビジネススクールにありがちな展開で、「仕事(Work)には3つの種類があります」と来た。
 その1。Work as Job。Jobとは、生活のため、物質的な利益を得るために働くこと。
 その2。Work as Career。Careerとは、物質的もしくは精神的報酬(Reward)を得るために働くこと。組織の中での「Advancement」を伴う。例えば、高給、特権、権力、ステイタス。
 その3。Work as Calling。Callingとは、より本質的な喜びを得るために働くこと。単なる金稼ぎ(Job)やAdvancement(Career)ではなく、Fulfillment。

 面白いもので、この手の説明においては和訳するよりも英単語そのままのほうがニュアンスが伝わり易い場合がある(と私が勝手に考えているだけだが)。
 Advancementを和訳すると、昇進・昇級、進歩、いわば前進。先のブログに書いた猪型、というより猿型、のイメージか。
 対するFulfillmentは、和訳すると実現、達成、成就であるが、これだと「学業成就」のお守りみたいだし、目標に向かって前進して達成するAdvancementと何がちがうのよ、と言われてしまいかねない。でも、Fulfillmentはやっぱりちょっとちがう。偏差値の高い大学に合格するとか売上100億円達成!といった世俗的な「達成」ではなく、もっと精神的充実感を伴う達成、とでも言おうか。
 極私的解釈を加えると、Careerの「達成」は他人・世間一般の価値観がモノサシになっているが、Callingの「達成」は自分自身の価値観だけが指標である。言い換えれば、Careerの追及の結果得るRewardは外部からもたらされ、CallingによるRewardは自分自身から湧き上がる。
 それにしても、Callingって、コロンビア大学の造語だろうか。聞いたことないなあ。

 つい先日、この単語を偶然見かけた。職探し中の若者をある人に紹介したら、その人が若者をインタビューしたあとで送ってきたメール。
 「I guess XXX(若者の名前)is unclear yet as to what his calling is.」
 おや、この人もコロンビアビジネススクールを受講したのかしらん。いきなり親近感が倍増した。ところが、ふとネット辞書を引くと、あたり前の普通名詞として「Calling:天職、職業」と出ているではないか。コロンビアの専売特許ではなかったのだ。

 Calling。天職。ライフワーク、とも呼べるかもしれない。Wikipediaによると「ライフワーク」とは「作家や研究者、表現者などが、生涯の仕事として人生を捧げたテーマのこと」とある。「作家や研究者、表現者」であって、「サラリーマンや官僚」でないところが興味深い。後者にとっての仕事がJobやCareerである場合のほうが多い、という社会通念のせいか。けれど本来は、どんな仕事でもCallingになりうるはず。
 Jobはお金がもらえなくなったらオシマイだが、自分がお金をもらっているのはどんな価値観の実現に対してなのか、を考えれば、Callingにつながる。Callingは、その価値観を追求し続ける限りエンドレス、まさにライフワークである。


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by miltlumi | 2015-05-05 09:02 | マンモス系の生態 | Comments(2)

ボクたち男の子

 その昔、多くの職場では女性はマイノリティーであった。男性社員と比べて任される業務が限られるとかキャリアアップを考える上でロールモデルがいないとか、そういう高尚な悩み以前に、まず絶対的に人数が少なかった。
 20代後半でカナダに赴任して、男女半々の職場で3年間のびのびと過ごした後、帰任したらやっぱり男性優位だった。翌年度、我が部署に配属になった新入社員の過半数が女性だったのが嬉しくて、同い年の女性2人と共に先輩面して「女子会」(当時そういう単語はなかったが)を主催した。この隠れイベントを聞きつけた課長が「足しにしなさい」と渡してくれた封筒の中には、新入社員のディナー代を補って余りあるお札が入っていた。

 時代は移り、肩書きはさておき人数は女性が過半数、という職場はもう珍しくはない。ボスが不用意にも「これだからオンナはだめなんだっ!」と叫んでも、にっこり微笑んで「へ~え、そんなことおっしゃって、いいんですか?」と開き直るだけの勢力を持てるようになった。ボスと次席が外出すると、オフィスには男性社員一人であとは全員女性、なんてことがしばしば起こる。
 昔と同じ気分で、女性社員の結束強化とモチベーションアップのため、仕事で関係する他社の女性も交えた女子会を企画した。当日、速やかにレストランに行けるよう、6時過ぎから会議を招集する。集まった女性たちはオフィスにいるときからアピタイザーモードで姦しい。片隅で、招かれなかったカレが一人、恨めし気な視線を泳がせる。ごめんね、「女子会」なもんで。
 お店に向かう道すがら、「○○君、来たがってたみたいね」「仕方ないでしょ、女子会なんだから」「がはは」
笑い飛ばす私たちに、マイノリティーの立場に甘んじていた頃の面影は、皆無である。

 同様の現象は、普通の会社のみならずプロフェッショナルファームと呼ばれる職場でも起きているようだ。弁護士事務所で、優秀な司法修習生を選んでいたら社員の過半数が女性になってしまった、という例を2つ知っている。
 わざわざ女子会で結束しなくても、共に働く女性たちはバイオリズムを一にし始める。同時多発的に結婚・出産・育児が起こる。男女雇用機会均等法後の上司は、粛々として現実を受け止めざるを得ない。共働きの妻が忙しいので早退したいと申し出た男性に「保育園のお迎えに男親が行くとは何事だっ」と怒鳴った上司(封筒くれた人とは別です)がいたが、あれはまさしく前世期の遺物である。

 先般、男性看護師のことを書いたら、友達が自分の目撃談を教えてくれた。病院の喫煙コーナーで煙草を吸っていたら、若い男性看護師さんが出入りの業者と思われる男性に声をこう声をかけていたというのである。
  「僕ら職場の男だけで男子会っての、やってるんですけど、人数少なくて寂しいんですよね。よかったら参加しませんか?」
 彼等は、「男子会」開催の定員にも満たないほどマイノリティーなのである。ここまでくるとさすがに同情の念を禁じ得ない。頑張れ! 男の子たち。
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by miltlumi | 2014-06-06 12:56 | マンモス系の生態 | Comments(0)

ピンクに白の水玉模様

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 うちの近くのビルが建て替えられることになった。取り壊しがほぼ終わり、ビルの回りを囲っていたクリーム色のパネルが取り外されていったとき、現れたのは瓦礫と化したコンクリートの塊と、それを取り除くでっかいパワーショベル。
 それがなんとピンクに白の水玉模様。

 思わず膝の力が抜けて、へらへらと笑いそうになった。工事現場にピンク。マッチョな男たちが主役の舞台に、なんという不似合。日立建機は何をふざけているのだろう。いや、おそらく彼らは真剣だ。
 ピンクという色は、言うまでもなく恋の色である。人を優しく愛情あふれる穏やかな気持ちにさせ、恋愛意欲を高める。彼氏募集中の女性は必ずピンク色のものを身に付ける、というのは戦略思考のある女性の常識である。また、ピンク色は攻撃的な感情を抑制すると言われ、外国では刑務所の壁や囚人服をピンクにするところも少なからずあるとか。
 つまり、工作機器メーカーおよび機種選定した建設会社では、苛立たしい騒音にあふれた埃っぽい工事現場の雰囲気を少しでも和らげ、とび職の方々の気持ちを穏やかにして不要な摩擦軋轢を避けるべく、一見場違いなピンクを採用したにちがいない。彼らの思考も、ようやく女性の恋愛戦略並みになったということか。おまけに白い水玉模様まで施す必要がどこまであったかはわからないが。

 男性がピンクのYシャツを着るのが当たり前になったのはいつ頃からだろう。工事現場ような物理的なパワーではないにしろ、権力・知力・交渉力などを駆使した仁義なき戦いが繰り広げられるビジネスの現場で、ピンクを身に纏うのは、自分の気持ちを穏やかに保つためか、相手の戦闘意欲をそぐ作戦か。少なくとも、第三者的立場にいるまわりの女性たちの目には、「優しそうな人♡」と映っていることに間違いはない。
 そしてピンクはついに、近寄るのも憚られるような(?)、ニッカボッカを意気に着込んだ任侠な男たちの世界にまで進出するに至ったというわけである。

 ある意味、すごいことだ。色彩心理学などお構いなしだった世界で、積極的・活動的な赤でも、明るく元気なオレンジ色でもなく、ピンクが採用されたということは、攻撃性よりも愛情を重んずるという大きな価値観の転換である。
これを、ピンク色のポケットチーフを挿したスマートなビジネスマンが決定したのならともかく、赤いネクタイを締めた思いっきりマンモス狩り系なモーレツ野郎が決裁したとしたら、なんともイロニカルなことである。
 
 件の工事現場では、ダンプカー出入りの際の通行者誘導の際、「お気をつけてお通りください」という常套句が、なぜかより優しく丁寧に響いている気がする。
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by miltlumi | 2014-05-30 13:17 | マンモス系の生態 | Comments(0)

盗み聞き

 次の予定までの時間潰しに、普段は使わないカフェに入った。スタバとちがってコーヒー1杯1コインでは収まらないが、たまにはささやかな贅沢も悪くない。きちんと温められたカップになみなみと注がれたミルクティーをすすりながら読書三昧、と本を開いたとたん、近くのテーブルの会話に耳が釘付け(って言うのかな)になった。
 「婚活サロンなんて言われたら、とても気軽に行けませんよ。合コン行こうと誘われれば大丈夫だけど」
 数日前、婚活関連ビジネスに関わることが決まったばかりである。シンクロニシティー。これぞ良きご縁(?)。本を読むふりをして、ありったけの注意力を耳に集中させる。どうやら新規事業のネーミングと内容の相談らしい。アイディアを出しているのは、もっぱら30代前半独身とおぼしき男性である。

 曰く。仕事もプライベートもマジメなのはダメ。ケッコンとか婚活とか言った途端に、少なくとも男性は引く。いっそちゃらけて「コンカツ道場」ならどうか。「道場」であれば、目的は「勉強」。勉強が目的なら、焦ってる感が薄れる。直接的な結婚相手との出会いを求めてるわけじゃない(やせ我慢だなー)。お料理教室も同じ発想なんですよ(そりゃそーだろーなー)。勉強してるうちに仲良くなる(そういえば、中高生が塾に行く最大のモチベーションってこれじゃなかったっけ)。
 「コンカツ君」とかいうゆるキャラ作って、勉強の最中に登場する。「オマエら固いぞー」とかゲキを飛ばして場を盛り上げる。みんなで柔道着着て参加する。検定試験をして、黒帯一段とか作って。でも、検定きわめてるのに結婚できないってのはまずいですねー(普通の学校とちがって、中退したもん勝ちということか)。

 次々飛び出すアイディアに、心の中で感心してしまう。さらに、私の知らない男性心理の説明に入ると俄然耳ダンボがさらに大きくなる。
 男はぶつかり合い。身体と身体がぶつかり合うことが大切なんですよ。スポーツも、マラソン、テニス、バレーボール、サッカー、ラグビーの順に、男っぽさが増すでしょう。接触が大切。接触によって男性ホルモンが上がるんです。男性ホルモンが出ればより男らしくなる。そうやって変わっていく男を見て、女性が惚れちゃうんです。道場ではゼッタイ接触体験いれるべき。
 ひえー、そうなんだー。どうりでフィギュアスケート男子見てて「セクシーじゃないなー」となんか物足りなかったわけだ。マラソン以上に他選手とのカラダの接触、ないもんね。

 しかし、男女の出会いの機微の話になるとだんだん「異議あり」モードに。
 「人間、ギャップが大切なんですよ。第一印象は悪いほうがいい」 おい、そりゃ、ちがうね。いいとか悪いとかじゃなくて、「強い」ほうがいいのです。私の経験上、仲良くなった異性は、ほぼ必ず「最初に会ったときの印象」をよく憶えている。少なくとも女性は第六感が鋭いし、最初に直感で感じたものを大切にする。第一印象悪かったら、アウトじゃない?
 「最初の印象悪くて、だんだん上がっていくほうがいい。後から意外な一面見つけるとグッとくるでしょ」 ああ、それはオトコの発想。オトコは飽きっぽいから、奥ゆかしげな女性が突然超ミニはいたりしたただけでコロッといっちゃうの。でもその作戦は女性には通用しない。我々は意外性より安定を求める動物だから。

 そして、この言葉に私はテーブルに突っ伏しそうになった。
  「身体カタい女の子は、総じて色気がないですよね」
 なにぃ、身体の柔らかさだとー? 色気ってのは、ただカラダをくにゃくにゃさせりゃーいいってもんじゃないでしょー。じゃあナニかい、キャンドルスピンのリプニツカヤ選手が、フィギュア女子の中で色っぽさNo.1だったとでもいうのかい? 
 小さい頃から身体のかたさでは右に出る者のいなかった私は、憮然として本を閉じた。

 会計を済ませて店を出るときも、彼らの会話は続いていた。まあ、600円のモトをとった気はした。仕入れた情報がビジネスに結びつくかどうかは、よくわからない。
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by miltlumi | 2014-02-27 14:38 | マンモス系の生態 | Comments(0)

クロマグロとカジノ

 少し前のニュースで、クロマグロの初競りの落札価格が736万円、去年は1億5000万円でした、と言っていた。20分の1か~、と思った次の瞬間、え、にじゅうぶんのいち~!? んなことあるわけないじゃんっ、割り算もできなくなったか!と自分にツッコミをいれ、もう一度計算してみたら、やっぱり20分の1だった。
 なんじゃそりゃー、と今度はTVにツッコミを入れたら、競りの張本人の片一方が、「あれはサカナの値段じゃありませんでした。タダの意地の張り合いでした」と神妙に反省の弁を述べていた。そりゃそーだろー。

 クールジャパンの代表格であるSUSHIが中国でも人気で、かの国ですしチェーンを展開するその某と、「すしざんまい」の一騎打ちだったという。テキがいると俄然闘志が燃え上がる、傍で見ていると阿呆らしいほどのオトコの意地、ここでもか。
 年明け早々、ホテルのお正月レクリエーションイベントでの光景を思い出した。

 遊び疲れ、食べ疲れた母を部屋に残して、夕食後に二人分の「チップ引換券」を手にカジノ特設会場に向かった。ラスベガスには2度ほど出張で行ったことがあるが、カジノの本場でスロットマシンにさえ手を出したことはない。当たるも八卦の賭け事は、生来ケチな私の性分に合わない。でもこのたびは、チップ20枚分がタダ(というか、ホテル代に含まれる)というので、興味本位で繰り出した。
 小宴会場の真中にどでんと据えられたルーレットに直行すると、老若男性たちに混じって中年女性が一人。券と交換にディーラーがくれた40枚のチップを手に、「で、どうやるんですか?」 誰とはなしに尋ねると、隣の女性が赤いネイルで指差しながら親切に教えてくれた。ど素人の常套手段として、まずは赤に3枚。当たり。やった。
  「まあー、すごいじゃない」
 赤ネイルが弾んだ声を上げる。ありがとうございます、と律儀に答え、2倍に増えたチップを手に、次は同じく3枚を黒へ。
  「じゃ、あたしも」
 チップ3枚が赤ネイルによって黒フェルトの上に置かれる。今度も赤。「きゃあ~」と二人で声を揃える。おもしろー。彼女は、昨夜からもう何度も千円つぎ込んでチップ20枚と交換してはスリまくっているという。正月から気前いいねー。おしゃべりに花咲く私たちを尻目に、男性陣はにこりともせずに黙々とチップを張っている。
 見ていて、数字が書かれたマス目の2つ分や4つ分の中央に置く、というやり方も発見。4つのうち1つが当たると12倍。なるほどー。真似して3枚張ったら、ビギナーズラック。2つ張りおじさんもざっくりチップが増える。「すごいですねー」と声をかけたが、返事なし。改めて見回すと、黄色い声ではしゃいでいるのは赤ネイルと私だけで、おじさまたちはまなじりを上げて真剣勝負である。オトコの意地だな。たかが正月の手遊びに、こんだけマジになるかー? 
 ちまちま作戦で40枚が2倍になったとき、景品を見に行って驚いた。50枚でLG21ヨーグルト4個との引換券1枚。希望小売価格126円×4=504円也。チップ20枚で千円だから、50枚は2,500円相当。ホンモノの賭け事は法律違反だから、恣意的に低くしてあるとはいえ、ごぶんのいち。。。あほらし。
 とすると、余計に不可解なのはオトコたちの真剣度合。勝負となると、採算度外視でホンキになってしまうのだ。肩の力、抜いて楽しもうよ、なんて慰めは余計なお世話。本気で真剣でマジなのが、彼らにとっては最大に楽しいのだ。

 というわけで、築地市場の初競りに、なんちゃってカジノ場のオトコたちの姿が重なる。その点、今年は早々に勝負から降りました、という中国のお寿司屋さんは冷静である。次にTV画面に映し出されたのは、クロマグロを町おこしにしている大間町の町長さん。
  「…まあ、美味しく食べてもらえば、…それでいいんじゃないですか」
 力なくこたえる彼の頬には、まさに「漁夫の利」を取り損ねた哀愁が漂っていた。
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by miltlumi | 2014-01-20 21:28 | マンモス系の生態 | Comments(0)

女らしいひと

 女らしい女性、という人種にたまに出会う。ひえー、オンナらしいなー、たまんねーなー、逆立ちしたってマネできねーなー、と半ばヤケになって思う。
  
 極私的「女らしさ」の定義その1。彼氏、もしくは夫のことを「キライ」と言う。
  「もう、大ッキライなんだけど」
  「全然、まあーったく好みじゃなくて」
  「そばにも寄ってきてほしくない」
 そんなんだったらどうしてコドモがいるのよ、と突っ込みたくなるが、女らしい方々はそれでもそういうことができるらしいのだ。
 私だったら、大ッキライな人とケッコンなんてゼッタイしないし、顔が好みじゃない人と一緒にいても気持ちよくない。好きな人のことは、思いっきりノロケちゃいたい。

 定義その2。彼氏、もしくは夫から高額なプレゼントをもらうことを厭わない。というよりむしろ、自分から要求して憚らない。
  「○○、買って」
  「え、どうして?」
  「欲しいから」
 しかも買ってもらったものを女友達に披露するとき、ひとつも嬉しそうな顔をせず、「当然よね」と言う。誕生日でもないのに、たまたま店先で見た○○が欲しくなったからって、理由もなくおねだりするなんていかがなものか。あるいは、たとえクリスマスだったとしても、うん十万円の○○を買ってもらって「当然」顔するなんてどういう神経してるんだか。

 しかし、(私にとっては)理解不能な行動は、おそらく男性たちには「効く」のである。何しろ彼らは逃げるモノならマンモスでもウサギでも追いかけて仕留めたがる狩人なのだ。物理的にとっとと走って逃げなくても、コトバでキライとか寄らないでとか言われたら、相手に何万光年も向こうに逃げれたような気になって、慌てて追いかける。
 そして、分不相応なモノをねだられると、「もっとでっかいマンモスを倒さなきゃ」と大いにモチベーションをアップさせてしまうのだ。よっぽどのケチじゃない限り、女性におねだりされて断るオトコはいない、と思う、多分。私はねだったことないから知らないけど。

 一方、男らしい男性、というのは、十中八九ほとんどが恐妻家である。コワイコワイと言いながら、彼らはいつもものすごく嬉しそうにしている。
 年収が9ケタの男性が言う。「うちの女房は恐くてさあ、もっと稼いできなさいよ、と言うんだよ」 …。使いきれないほど稼いで来られても、困るだけじゃん。欲しければ自分で稼ぎなさいよ。
 別の男性は、シンデレラよろしく日付が変わる前にとっとと帰っていく。「今度門限破ったら離婚だって言われてるからさ」 …。門限って、女子高生じゃあるまいし。オトコにはオトコの付き合いってモノがあるだろうに。たまにはハネ伸ばしたいだろうに。
 彼らの「愚痴」を聞くとき、常に私は彼らの側に立っている自分に気づく。 

 ダンナがティファニーを買ってきたら「そんな無駄使いしないでよ」と言い、私の貯金でせっせと住宅ローンの繰り上げ返済をし、門限どころか午前様で帰ってきてもお茶漬けの用意をしていた私は、良妻であった。かくして、逆三行半(笑)。
 女らしくない私の、必然的帰結であった、と最近しみじみと思う。
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by miltlumi | 2013-12-29 11:38 | マンモス系の生態 | Comments(0)