カテゴリ:NY after 8 years( 12 )

手抜きの基準

 Manhattanは、なんてアンチバリアフリーなんだろう。8年ぶりのNYに対する最初の感想がこれだった。34丁目のPENN Stationから42丁目のマダムタッソー博物館(蝋人形目当てではなく、1階の観光バスカウンターでWoodbury Commonsアウトレット往復チケットを受け取るためだ)に立ち寄って、55丁目のホテルまで歩いて、実感した。何しろ歩道がぼこぼこなのだ。キャスターつきの大きなスーツケースと一緒だったから、なおさらだ。

 あの街は東西南北StreetとAvenueが碁盤の目のように走っているから、南から北に向かえば100m毎に横断歩道を渡る。そこには、東京の主だったエリアではもう当たり前になっている点字ブロックなど影も形もない。歩道の一部に傾斜がついていて、一段低い車道になだらかに踏み出せるようになってはいるが、そことて完全に平坦ではなく、べこりと陥没して水たまりになっていたり、なぜか歩道と車道の境に2㎝高さの仕切り板のようなものが埋め込まれていたりする。
 歩道そのものも、でかいマンホールのふたの周りはアリジゴク状に傾斜しているしコンクリートを無秩序に塗り固めた時の仕切り線はできているし、ちゃんと足元を見ていないとどこにキャスターが引っかかるかわからない。
 我が港区の駅の周辺道路の歩道は、点字ブロックはもちろんベージュっぽいオレンジの瀟洒なレンガ敷きにどんどん置き換わっている。単なるカッコつけかと思ったら、保水性と透水性を具えたヒートアイランド対策のレンガだという。おじさんたちが黙々とその賢いレンガをひとつひとつでこぼこのないよう丁寧に敷き詰めているのだ。不器用なアメリカ人に爪の垢でも飲んでもらいたい。

 …と思っていたら、Woodbury Commonsに向かう片側5車線のハイウェイは、黒々したアスファルトがきっちり平坦に敷かれていた。なんだ、やればできるじゃないかアメリカ人、とバスの中で一人ごちる。
 つまり彼らは、必要があればやる。歩道がボコボコなのは、わざわざ税金を費やして整備する必要なしと判断しているのだ、きっと。
 そういえば車椅子の人もちらほら見かけたが、歩道で転倒しそうな危なっかしい場面には遭遇しなかった。車椅子ならあの程度のでこぼこは耐えられるのかもしれない。ちゃちなキャスターしかついていないでっかいスーツケースをひきずって21ブロックも歩く物好きを、NY市の土木工事課長は想定していないのだ。

 ところで、NYで泊ったホテルのバスルームの水栓パネルが上下逆さまについていた。なんじゃこりゃー、日本じゃあり得ない!と思わず写真を撮ってFacebookにUPしたら、外国暮らしの友人から次々にコメントが。
 @ロシア:日本では大問題なことが海外に出ると割と普通で、本当に忍耐強くなるというか何というか…。
 @米国:この程度は極普通。基本的にどうでもいい事にいい加減なのが世界標準。日本はどうでもいい事にも手を抜かないから残業が増える。
 @シンガポール:日本人のきっちりした仕事に感動すると共に、だから日本人って疲れてるのかも?とも思う。

 みなさん、おっしゃるとおり。手取り足取り、「転ばぬ先の杖」どころか「転ばないところにも杖」を配置して、転んだときに態勢を立て直すことのできない子供が増える日本、もっと手を抜いたほうがいいのかもしれない。
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by miltlumi | 2014-10-04 14:20 | NY after 8 years | Comments(0)

転んだあとの杖

 このたびの海外旅行は、生まれて初めて保険を掛けた。腸閉塞の手術後4ヶ月、少し食べ過ぎると切断したお腹の筋膜がちくりと痛み、コルセットで保護していないとぽよよんとおなかが出てしまい、まだ完全復活とはいえない。
 主治医からの「行ってもいいけど、食べ過ぎないでくださいね」「アメリカでEmergencyに入れられたりするとひどいことされますよ」という不吉な忠告と、アメリカでの盲腸手術代は200万円という噂を聞いて、日頃何かにつけて不注意な私も、さすがに転ばぬ先の杖、という気持ちになった。

 結果的には、幸い保険のお世話になるような大きな事故はなかった。ということはつまり、小さな事故は発生したのである。

 その1。World Trade CenterからChina Town、SOHO経由Union Square・Washington Square・Madison Square Parkを総なめしてCentral Parkまで歩いた日、右足の親指に水ぶくれができた。つい爪切りで皮膚をV字にカットして水を抜いたら、翌日さらに深層部に水がたまった。爪切りがまずかったかと、今度は安全ピンで水を抜く。3日目もやはり水がたまり、初めて「水まめはつぶすな」と誰かが言っていたのを思い出す。
 いつもなら安全ピンで治るのに、というのはただの言い訳で、実はただでさえ人の言うことを聞かない性格が加齢のせいで記憶力さえ減退している証拠である。
 遅まきながら、ものは試しとそのままにしてみた。すると、水はたまったままだが歩いても特に痛くない。やはり人の言うことは信じるものである。

 その2。ホテルの部屋でキャスターつきのチェアに座ったまま横移動しようとしたら、左足の薬指にキャスターが触れた。まともな反射神経の持ち主なら、即座に椅子を止めるか足を引っ込めるのに、まずい、と頭ではわかっていながら体が動かず、そのままずるずる薬指はおろか小指までキャスターに轢き込んだ。さらにドン臭くも、アタマも身体もフリーズして、数秒間自分の体重と椅子の重量を2本の足指で受け止め続けてしまった。
 疲れて気力がなくなっていたのだ、というのはただの言い訳で、実はただでさえのろまな反射神経が加齢のせいでさらに機能不全に陥っている証拠である。
 ようやく尻を持ち上げてキャスターから指を引き抜くと、早速青黒くなり始めている。今度は頑張ってアタマを働かせ、製氷機からもらってきた氷をグラスにいれて足先に置いて冷やす。そのまま30分も冷やしたら、痛みも引いて青痣にならずに済んだ。

 その3。Bostonに着いて最初に訪れたPublic Garden。真っ青な空の下、緑の木々の間に輝く池の水面に、逆光で輪郭を天使のように煌めかせた鴨たち。シャッターチャーンス!と駆け寄って、歩道と芝生を隔てた低い柵を飛び越えた。と思ったら、柵の支柱のげんこつ状の鋼鉄に思いっきり右足の膝をぶつけてしまった。一瞬地球上のすべてが止まったような痛さ。
 池と鴨に気を取られていたのだ、というのはただの言い訳で、実はただでさえ鈍い運動神経が加齢のせいでさらに鈍重になっている証拠である。
 我慢して歩き続けていたが、痛みがどんどん増してくる。Pharmacyに飛び込んで湿布を探す。5枚で$7.99は高い気がするが、背に腹は代えられない。5枚のシートを1日2回取り替えて2日半。追加購入せずとも、無事膝の痛みは治まった。

 歳をとるにつれ、「転ばぬ先の杖」をどれほど用意しても、やっぱり転んでしまう。大切なのは、やってしまったあとにどれだけ迅速に対処できるか。
 「転んだあとの杖」、である。

<膝を強打した直後、痛さにめげずに撮影した写真↓>
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by miltlumi | 2014-09-28 12:28 | NY after 8 years | Comments(0)

洋服屋のチェーン展開

 チェーン店舗の大々的な展開は、カフェに限らない。
 NYのユニクロ旗艦店。5番街と53丁目の角という一等地にそびえる。一度は失敗した米国進出の巻き返しを図ろうと、ものすごく力を入れていると聞いていた。行ってみたらたしかにぴかぴかのガラス張りに、NYスペシャルの「SPRZ」のロゴ、MoMAとのコラボ商品の陳列。地域限定商品による差別化は図っているものの、基本は日本のユニクロと変わらない。
 すぐ近くにGAPやGUESSなど同類項カッコでくくられるブランドや、ZARAやH&Mといった外資ブランドもおしゃれなディスプレイを競い合っている。そういうブランドや”NY”を意識するあまり、かえってユニクロらしさが影をひそめてアメリカンブランドと似たような個性のない感じに思えるのは、私だけだろうか。

 いずれにしろ、Panera Breadとちがって、ユニクロ商品は日本でさんざん食べ尽くし、もとい着尽くしているから、ちらりと見ただけでおなかいっぱいになってしまう。NYに住んでいる古い知り合いに会ったら、上下ばしっとユニクロのTシャツとジーンズで決めていた。
  「もう普段着はユニクロばっかりよ。5番街の店は、でもアジアやヨーロッパからの観光客でいっぱい」
 まあ彼女にとってのユニクロは、私にとってのGAPみたいなものだから、地場のブランドよりちょっとおしゃれ、ということなのだろう。

 Bostonでもユニクロは頑張っていた。観光客のメッカ、Quincy Marketのすぐ南側にあるSouth Marketの角地にしっかり店を出している。道を隔てた向こう側には、またもやGAP。Boston1号店のこの店は7月にオープンしたばかりで、来年中に立て続けにあと5店舗出店する計画らしい。Bostonの陸の玄関口であるSouth Stationの壁面には、でかでかと「UNICLO・ユニクロ(カタカナ表示のままなんです)」のロゴがいくつも並び、Global Brand、Coming soon云々という宣伝文句が躍っている。
 Bostonという街は本当にこじんまりしていて、ダウンタウン界隈はどこでも徒歩で行けてしまう。South Stationから地下鉄で6つめの駅にあるハーバード大学だって、距離にしたら3㎞強、歩こうと思えば歩けちゃう程度である。そこに、6店舗、ねえ。まあでも考えてみれば、Tiffanyだってちょっと前までは銀座の中央通り沿いのたった1㎞の中に3・4店もあったっけ。

 絶え間なき右肩上がりの成長を是とする、というよりも必達目標とする、相も変わらない20世紀型資本主義。地球上すべての大地に支店を出すまで留まるところを知らない、貪欲な覇権主義。Scorched earth(焦土作戦)、という言葉が口を衝いて出る。恐いね。みんながみんな、おんなじ服を着ておんなじものを食べるなんて、不気味じゃないか。
 実際には、そういうモーレツな会社が何十社もしのぎを削っているおかげで、消費者は選択肢が増えるだけで「みんながみんなおんなじ」ということにはならないのだろうけれど。

(写真は、グローバル展開とは縁もゆかりもない、(たぶん)世界中でただ1軒の
ペーパーカンパニー@Beacon Hillのショーウィンドー)
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by miltlumi | 2014-09-26 20:50 | NY after 8 years | Comments(0)

カフェのチェーン展開

 甘い物に関しては勤勉な私は、旅行前に「地球の歩き方・ボストン」のカフェ&スイーツの頁を丹念に読み込み、地図にもしっかり○印をつけた。美味しそうだけれどちょっと離れた所にある店は、残念ながら×印をつける。しかし、その準備の多くはある意味無駄であった。

 最初に気づいたのは、Faneuil Hallの近く。朝、ホテルの部屋でコーヒーを飲んだだけで、外で朝食を調達しようと歩いていたら、「Panera Bready Bakery」という看板が目に飛び込んできた。どこかで聞いた名前と思いながら入ると、なかなか美味しそうなラインナップ。オーソドックスにベーグル&クリームチーズとフレンチバニラフレーバーのコーヒーを買って、広場で食べながらガイドブックをめくったら、遠くて行けないと思って×印をつけた店だった。この観光中心地にちゃんと支店を出していたのだ。得をしたような拍子抜けしたような。Paneraの店は、その後そこ以外にも何店舗も見かけた。見かけるたび、有難味が薄れていった。
 同じことが、メキシカンのファストフード(蛇足だが、昔はファーストフード、と言っていたのに、いつの間に「ファスト」と詰めるようになったのだろう)チェーンのBolocoでも起こった。ガイドブックによるとホテルのすぐ近くというので、ラッキーと思っていたら、あそこにもここにもある。「チェーン」というからにはあちこちにあるのは当然だが、なんだか損した気分になる。
 かくして、ガイドブックに麗々しく書かれているわりには「結局どこにでもあるやん」ということで私の中で希少性を失った店は、「ボストン一美味しいコーヒーが飲める」Thinking Cup、「ボリュームたっぷりのブリトーが楽しめる」Chipotle、「創業以来の味が守られている」Legal Sea Foods(写真)など。ちなみに昔日本にもあったDUNKIN’ DONUTSに至っては、NYでもBostonでもそれこそ1ブロックごとにあるんじゃないかと思うくらいそこらじゅうにある。a0165235_954844.jpg

 この手の小売業は知名度がものを言うから、積極出店が常套手というのはわかる。しかしやはり、徒歩で歩き回れるエリア内に何店も、というのはいかがなものか。いかにもアメリカ的大量生産大量消費型資本主義の権化のようで、なんとなく興醒めである。
 そういえば、クアラルンプールやソウルに行ったときも、地場のローカルフードに混じってMcDonald・KFC・Pizza Hutといったアメリカ資本のチェーン店ががんがん進出しているのを見て、なんとなく暗澹たる気持ちになった。
 こうやって、「その地でしか食べられないもの」は影をひそめ、世界中どこに行っても均一な品質の没個性的メニューが様々な民族の腹を満たすようになる。
 スケジュールの詰まった短期出張なら、予想可能な安定した味を手っ取り早く摂取できるグローバルチェーンの存在は心強いだろうが、異国情緒を楽しみたい旅行者にとって、STARBUCKSやDUNKIN’ DONUTSのロゴを見てもあまり心躍らない。

 その点、Bostonのイタリア人街にあるMike’s Pastryなどは立派である。あれだけ繁盛しているのに、どこにも支店を出していない。典型的なイタリアのファミリービジネスである。世界広しといえども「BostonのNorth Endに行かないと食べられない」というほうが一消費者にとっては余程嬉しい。だから私は、6泊7日の滞在中に3回足を運び、5種類のスイーツを買い求めた。
 念のため、と思ってMike’s PastryのHPを見てみたら、支店こそ出していないけれど、Online shopが開設されていた。あのCannoliを冷凍にして、Fedexで東京まで送り届けてくれるのだろうか。
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by miltlumi | 2014-09-24 09:02 | NY after 8 years | Comments(0)

ボストンのイタリア街

 アメリカ人のヘルシー志向と対照的だったのは、Bostonのイタリア人街である。
「地球の歩き方」を予習しているとき、North Endというエリアにどうやら美味しいケーキ屋さんが集まっていることに気づき、楽しみにしていた。Bostonに着いた翌日、Freedom Trailを歩きながら寄り道したら、つまりNorth EndはNYのLittle Italy(最近はすっかりさびれてしまったらしいが)にあたる場所だった。

 Hanover という(なぜか)ドイツっぽい名前の目抜き通り沿いには、ジェラートやピザの店が並び、通りに面して開け放たれたフロアのテーブルにはトマト色のパスタの皿(もちろん量はがっつり昔ながらのアメリカサイズ)が見える。 
 お目当ての「美味しいケーキ屋さん」の看板商品はイタリア伝統菓子のカンノーリ。加えてリコッタクリームパイやブラウニー、シュークリームにジェラートなどなど。もちろん、鹿爪らしいカロリー表示は皆無である。
 地元客と観光客でごった返す店は、いかにもイタリアのマンマという体のでっぷり太った黒髪のおばさんが効率よく客をさばいている(イタリア人は、郵便の配達に1ヶ月もかけるというのに、こと食べ物に関してはちゃんと効率を追求するようだ)。その隣で、マンマの尻に敷かれていますと言わんばかりの哀しげな瞳をした主人が、痩せた指先でおつりのお札を数えている。a0165235_1445191.jpg
 ちなみにこの日はカンノーリを差し置いて、名前に惹かれて、ついBoston Cream Pieというものを注文してしまった。カスタードクリームが絶品だった。

 すっかり気に入ったこの通りで改めてパスタとカンノーリを食べようと、日曜日に再び出掛けて行ったら、運よく地域のブラスバンドが街を行進している真っ最中であった。そのメンバーたるや、…写真のとおりである。a0165235_1445371.jpgバトンガールといえば、普通は引き締まったナイスバディーのミニスカ、のはずが、すっかりイタリアンマンマ体型。そして、トランペットや打楽器担当もボリューミーなおじさま・おばさま方。a0165235_14462168.jpg
この開き直り方(別に当人たちは開き直っているつもりはないのだろうが)が天晴である。とりあえず美味しいもの食べて、楽しく音楽を奏でようや。って、そんな感じ。

 陽気なイタリア人に触発されて調子に乗った私は、Chocolate Ricotta Cannoliを立ち食いしたあと、もう一度店に入ってTurtle Brownieを注文した。アメリカの普通のブラウニーに比べても、その大きさ2倍くらい。ホテルに持ち帰って食べたら、それはブラウニーというカテゴリーを越えて、しっとりずっしり未知のチョコレートケーキの世界であった。
 というわけで、Boston最終日、3度めのNorth End。今度はChoco-Chip Cannoliと、Ricotta Cream Pie。至福。
 
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by miltlumi | 2014-09-20 14:51 | NY after 8 years | Comments(0)

アメリカ人のヘルシー志向

 久しぶりに訪れたアメリカで気づいた、以前との大きなちがいは、ヘルシー志向が際立っていたこと。

 アメリカといえば、どでかいハンバーガーに山盛りのフライドポテトとコーラ、あるいはシュガーコーティングでがちがちになった巨大なドーナツ、ガロン単位で売られる(そして一気に消費される)スーパーのアイスクリーム、だったはず。もちろん、それらは依然として健在であった。何がちがうかと言えば、一部ベーカリーではそのカロリーをばっちり表示していること。日本のスタバで「シナモンロール(557kcal)」とある、あれは本国でもちゃんと実行しているのだ。
 このたびの旅行では、本場アメリカのマフィンやベーグルやチーズケーキを食べまくる、というのが最大の楽しみだったが、浮き浮きと入ったベーカリーで「Chocolate Chip Muffin 650kcal」「7-grains muffin 490kcal」などといちいち書かれていると、気勢を削がれること甚だしい。ついすごすごとオートミールクッキーなんぞを手に取ってしまう。
 これではまるでJTの「煙草は発がん性があります」の脅迫文みたいではないか。売上が落ちるのではないか。カロリー表示のない店に客が流れるのではないか(実際私はそういう店では何の躊躇いもなくToasted coconuts donutsを注文した)。自分のことに気を取られて、アメリカ人たちがこの表示にどう反応しているのか観察するのを忘れていた。

a0165235_21593217.jpg もうひとつ、食べ物のヘルシー化の象徴は、屋台のスムージー。NYの風物詩であった屋台のホットドッグ屋が、今や半分以上は野菜と果物をその場でミキサーにかけて供するスムージー屋に取って代わられている。しかも屋台の分際で(失礼)$4とか$5とか、決して安くない。
 平日朝のベーグル・ドーナツ・マフィン屋台は健在だったが、それらと並んで朝からりんごやオレンジの果物を売る屋台も目立った。
 一番目のカロリー表示と相俟って、アメリカ人はようやく小麦粉とバターと砂糖の世界から脱却して、菜食の重要性を認識するようになったらしい。

 3つめの証拠は、ジョギングする人たちがやたらと多かったこと。Bostonでは、夕方のCharles River Esplanadeなどは週末の皇居周辺みたいであった。走っているのはたいがいダイエットの必要がない引き締まった体型の人達であるが、たまに幕下の力士レベルの中年女性なども交じる。
 ジョギングのみならず、川岸の広場では、青空ヨガ教室に100人近い人達が集っていた。街中にもそこらじゅうに「Yoga class」の看板が出ている。
 さらにはNYもBostonも、30分以内の利用なら基本料金のみのレンタサイクルのシステムが設置されていた。地元民が利用するわけではないだろうが、圧倒的なクルマ社会のアメリカで自転車のシステムが導入されただけでも大きな進展である。

 余談だが、15日間の滞在で私の体重はプラス1kg。ベーカリーのあのにっくきカロリー表示のおかげと感謝(?)している。
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by miltlumi | 2014-09-18 22:00 | NY after 8 years | Comments(0)

ベーカリーでの会話

  「Oh my god! Look at this!」
 New Yorkのベーカリーのレジ。黒人のおばさん店員がいきなり叫んだ。何かやばいことをしたかと思ったら、彼女の視線は私の指先。「So gorgeous!」と続く彼女の声に、ゴールドラメのジェルネイルのことを賞していることがわかった。両薬指には大小の花のシールも貼ってある。彼女の指先はといえば、ごくシンプルな赤いマニキュア。
 日本では最近すっかりジェルネイルが定着して、花のシールを貼るどころか1㎜以下のか細い線でアーガイル模様を作ったり渦巻模様を描いたり、ネイルサロンは独創的なアートを競っている。私もしばらくサロン通いをしていたが、1本だけポロリととれてしまったときの処置に困って(それだけのためにサロンに行くのは、時間とお金がモッタイナイ)、ジェルネイルキットを購入した。自分でできるネイルアートには限界があり、単にラメをグラデーションにして100円ショップで売っているネイル用シールを貼るだけである。それでもアメリカ人の目には十分ゴージャスに映るらしい。

  「Thank you. I’ve done it by myself. This flower is just a seal.」
 あとから、「シール」は日本語だから「Sticker」と言うべきだったか、と思い直したが、そのとき彼女は私の意味不明の英語も気にせず、さらに驚嘆の言葉を続けた。
  「No kidding! You are so talented. Look at this!」
 後半の言葉は、向こうの棚にマフィンを補充していた他の店員への呼びかけ。仕事をほっぽり出してやってきた彼女も、「Wow!」と言って、代わる代わる私の指先を手に取って賞賛してくれる。

 アメリカだな、と思った。
 アメリカ人が、公共の場で知らない人にも「Hello」と言うのは、気心知れない異民族同士、へたな衝突を避けるために自分に敵意がないことを示しているのだ、と言われる。でも、実際にはそれ以上の意味がある。
 出張先のオフィスで、つきあいのない部署の女性が廊下ですれ違いざまに「You look great in this dress.」と褒めてくれたり、デパートのエレベーターでいきなり隣に立っている女性が「I like your shoes.」と私の足元を指差したり、そうやって見知らぬ人が気軽に声をかけてくることが、アメリカでは日常茶飯事なのだ。
 たぶん、自分の考えや気持ちをストレートに表現するくせがついているのだろう。もちろん、「アンタのその服の色、趣味悪いわね」みたいなネガティブなことは言わない。口に出して言うのは、自分や他人が幸せになれるようなポジティブな言葉。
 「言霊」というのは日本の言葉だが、そのスピリットをより身近なかたちで体現するのは、アメリカ人のほうが得意なのかもしれない。

 さんざんネイルで盛り上がったあと、精算しようとしたら、レジが開かない。$3.99のグリーンサラダとミディアムサイズのスープ(たぶん$4.39)とチャパタ(価格不明)。彼女は何度かレジをがたぴしやった末、諦める。
  「えっと、3.99たす4.39たす…。ああっ」
 3回この独り言を繰り返し、「もう$8でいいわ」と開き直った。$10札を出したら、カウンターの上に出して数を数えていたらしいダイムとニッケルをざらざらと手渡された。
  「???」
  「今レジが開かないから、おつりのお札も出せないの」
 ひいふうみい、と数えてみなくても、きっと$2分あるのだろう。たとえなくてもまあいい。にっこり笑って店を後にした。
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by miltlumi | 2014-09-17 21:12 | NY after 8 years | Comments(0)

MoMAのガードマン

 MoMAに行った。ボストン美術館と同様、作品のカメラ撮影は一部を除きほとんどOK。といっても撮影禁止の作品はどれだかわからず、少なくとも私自身は構えたカメラを遮られたことは一度もなかった。
 ガードマンは、ちゃんと要所要所に配置されている。飲み物禁止と知らずに持って入ってしまったフタつきのコーヒーカップを鞄の中でごそごそやっていたら、女性のガードマン(ガードウーマン、か)がやってきて、「そうそう、そうやって鞄の中から出さないようにね」と優しく指導してくれた。ぶっきらぼうに取り上げたりしないところが、寛大である。

 美術通でもない私でさえ知っている作品が次から次へと並んでいる。日本の美術展のように作品の前に「立ち入り禁止」の縄も柵もない。もちろん作品に触れることはご法度だが、触れない限りは、どれだけ近づいても制せられることはない。
 120年以上も前にゴッホその人が描いた生々しい絵筆の跡や点描派のスラーのそのまさに点々を、1cmの間近からじいいいっと見つめることができる。これまた日本の美術展のように、立ち止まると後ろの人に押されるような無粋な混み方はしていないので、特等の見物場所を他の人と譲り合いながら、いつまででも眺めていられる。

 ゴッホの「星月夜」はMoMAの一番人気らしく、部屋の真ん中に設えられた壁に1枚だけ、どーんと展示してあって、その壁の横にぴったりとガードマンが張り付いていた。私がカンバスに近寄って行っても、何も言わない。慣れたものである。
 いったんゴッホから離れて他の絵も一回り見て、再び「星月夜」に戻った。先ほどよりもさらに人が少ないので、渦を巻く夜空に吸い寄せられるように、再びずずずぃーっと近づいてみる。ガードマンは私の顔を覚えていたのか、同じようにずずずぃーっと近づいてくる。先ほどよりも大胆な挙動不審に、「オマエ、触れたらタダじゃおかないよ」という声なき声を身体じゅうから発している。しかし、私は前髪がカンバスに触れそうになるくらい近づきながら、決して作品には触れない。ガードマンと私の、無言の応酬が続く。
 ようやくおなかいっぱいになって絵を離れるとき、ふとガードマンと目が合った。私に対する彼の視線は、しかし決して険しいものではなかった。

 別の部屋に移ると、何人もの見物客がしきりに窓の外にカメラを向けていた。野次馬根性で近寄ってみたが、人垣に邪魔されてよく見えない。諦めて戻ろうとしたら、持ち場を離れて窓の方に遠征していた別のガードマンと目があった。彼は小さく首を振って肩をすくめる。そうしてお互い、黙って微笑み合った。
  「あいつら何に夢中になってんのか、全然わからないね」
  「ほんと、窓の外に何が見えてたのかしらね」
 先ほどと同様無言の、でも今度はどこか親密な会話が交わされる。束の間の連帯意識。
 二人のガードマン。それだけで、MoMAが一層身近になった。
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by miltlumi | 2014-09-16 15:10 | NY after 8 years | Comments(0)

New Yorkの名所

お馴染みRockfeller Center。
クリスマスシーズンじゃないときは、ツリーのかわりに夏の花で出来たクマ(?)のあたま。
毎朝おじさんが梯子にのぼって花がら摘みをしているそうです。
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NY公立図書館の裏にあるBryant Park。
おそらくTimes Square出勤前であろうゴールデンなおじさんが、仕事の打ち合わせ電話。
写真ではちゃんと見えないけれど、ゴールデンのヘルメットと箒も持参なさってました。
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そして、5th Avenueの新名所?ユニクロ。 
英語以外の言葉をしゃべる観光客と地元New Yorkerで賑わってました。
NYで会った友人も、ユニクロのTシャツとホワイトジーンズ。
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by miltlumi | 2014-09-15 13:03 | NY after 8 years | Comments(0)

9月の空

9月の初めに旅をする醍醐味は、夏から秋へと移り変わる季節に遭遇できること。
陽射しはまだまだ明るいけれど、少しずつ夏の激しさを失って
空と雲は、日に日に秋の気配が濃くなっていく。

9月8日の、朝と、昼と、夜の景色。

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by miltlumi | 2014-09-09 19:54 | NY after 8 years | Comments(0)