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足裏の黒いヤツ(下)

 同い年の彼女が、転んでしたたか向う脛を打ってしばらくしたときのこと。
 「びっくりしたわよ~。足の裏が真っ黒になるのよ」
 「げげ~っ、何それ」
 腹の中が黒い、という話はよく聞くが、足の裏が黒いって、どういうことよ。

 …というツッコミはさておき、要は新陳代謝の問題である。内出血した血は、普通リンパの働きで、内出血が浸みだした部分からちゅうちゅうと吸収されていく。が、吸収速度が遅いと、血液が重力に従ってどんどんと降りて行き、ついに足の裏に到達して、それが貯まって黒くなるというのである。
 そんなバカな。多忙な彼女とちがって、私は毎週きちんとスポーツジムに通って鍛えてるもんね。1日の終りに足がむくむなんてこともないもんね。あのときは密かに優越感に浸ったのだが…。
 あれからそれなりに年を重ねてしまった今、私の新陳代謝力や如何。

 遺憾ながら、着実に代謝は落ちていた。しかし、黒くなったのは、足の裏でも、もちろん腹の中でもなく、足の内側の側面。内くるぶしの真下から土踏まずの上あたりがだんだん青黒くなる。黒というか黒紫というか。ああ、もう重力には勝てない。トシをとってしまった。
 改めて、もう若くはないことを自覚する。悲しい。仕方ないけど、やっぱり悲しい。

 そうか。転んだ瞬間、心を満たしたあの悲しみは、無意識のうちに「もう若くない」という認識を持ったせいだったのだ。だいたい、よそ見をして注意力散漫だったことも、咄嗟によける瞬発力がなかったことも、みんな「若くない」ことの証拠なんだ。
 自分の感情の裏にあった無意識の思考が明るみに出て、すっきりはした、けどね。

 こういう悲しい出来事は、自分だけの胸に秘めておくと悲しさが募るので、ブログで公開しようと思い立つ(何でもブログネタにするなんざ、転んでもタダでは起きない精神丸出しである)。いっそのこと黒くなった足の現物も見せたろか、と自虐精神が働き、患部をカメラに収める。しかし、青黒いくるぶしだけが大写しになった画像は、改めておぞましい。
 いくらなんでもこれをブログにUPするのは公序良俗違反だろう。やめやめやめ。

 あれから1週間。
 毎晩の自己流リンパマッサージの努力も虚しく、黒い足からはまだ脱却できていない。

追記:
 昨日、高校時代の友達から「同学年だった〇〇くんって、知ってる?」とFacebookメッセージで訊かれた。
 よく覚えてなかったので、卒業アルバムをひっぱり出してチェックしてみると、〇〇くん、すっきり系の、けっこうステキなタイプである。
 即刻、カメラで撮って送ってあげた。
 …つもりが、誤ってその写真の前に撮っていた、例の黒紫のくるぶし写真をUPしてしまった。
 げげっ!!と思って即座に削除した。
 …つもりが、とき既に遅し。瞬間に見てはいけないモノを見てしまった彼女から、速攻メッセージが。
 「すごい写真送られてきた(^_^;)」(原文のママ)
 Kさん、見苦しいモノを見せてしまって、本当に申し訳ありませんでした。


by miltlumi | 2017-04-27 17:47 | 私は私・徒然なるまま | Comments(0)
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