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オトコ脳について考える

 男らしい男性と面と向かっていると、なんだか落ち着かない、不思議な気分になることがある。ここでいう「男らしい」とは、胸板が厚いとかハンマー投げがうまいとかマンモス狩りが得意だとかいうことではない。脳みそが典型的に男、という意味である。

 一緒にいて、ふと会話が途切れ、しばらくお互い黙ったまま、という時間が生じる。恋愛関係にない限り、それも火がついてから3ヶ月以内でない限り、そういう沈黙の間、お互いの瞳をじっと見つめ合う、などというこっ恥ずかしい芸当は出来るものではない。
 それぞれアサッテの方向を向き、相手について、あるいはまったくちがう事柄、たとえば「今日の夕飯のおかず、冷蔵庫に何が入っていたっけ」とか「明日の会議のプレゼン、あのページをやっぱり最後に持って行こう」とか、何やら思索に耽る。…と思っていたのだが、男性の場合そうではない。
 そういうとき男性は、何も考えていないのである。

 男脳女脳の話が巷にあふれ、それぞれの思考の遺伝的なちがいがあれこれと取沙汰されている。その中で、私がいちばん驚いたのは、なんと、男性が休んでいるとき、その脳みそ全体の実に7割が、完全に活動を停止するということ。それに対して女性は、脳みその9割が活動状態にあるそうだ。
 もともと人間は脳みその1割しか使っていない云々の議論があり、「脳みそ全体」とは何を指すかという問題はある。ただ、いずれにしろそれは分母の話。分子だけで見て、男が3に対して女が9、というのは、あまりに顕著な違いである。カンタンに言えば、女性は男性の3倍、モノを考えているのだ。
 あなおそろしや。

 黙したまま語らぬ男性に対して、「今、何考えてるの?」と尋ねたことのある女性は、私だけではないと思う。古今東西、そう問われた男性の答えはたいがい同じである。
 「何も考えてないよ」。
 またまた~。考えてないなんてあり得ないでしょ。何か考えてるに決まってるじゃない。隠しごとでもあるかしら。で、そのあとの女性の思考は二手に分かれる。
 やだこの人、私のこと好きになっちゃったのかしら。なんてって告白しようか悩んでるんだわ(楽観タイプ)。
 やだこの人、私のこと退屈だと思ってるのかしら。席を立つ言い訳を巡らしてるにちがいないわ(悲観タイプ)。
 両方とも、ブー。正解は「本当に何も考えていない」。

 心理学者や脳科学者が証明したこの科学的事実を知って以来、私は楽観主義も悲観主義も捨て去り、ただその表情をじっと眺める。この人は今、正真正銘なんにも考えていないのだ。完全停止している脳みその姿を想像する。
 茫洋としたススキ野原の上をそよぐ風。いかん、葉が動いているではないか。
 低い雲の垂れこめる空の下に広がる砂漠。いずこからラクダが…。いかんいかん。
 常に9割動く女性脳を持った私は、「何も考えてない男性の脳みそ」に関して、どうしても何も考えられない。ちがう。「何も考えられない」と考えているのだから、やっぱり何か考えている。男性脳には、決してなれない。

 ちなみに、このブログは夕飯の支度をしているとき思いついた。ワカメを水に入れてもどしながら次はきゅうりを刻もうと計画し、同時にそういえばあの人からメールの返事が来てないなあと思いつつ、である。その間ずっと頭の中にユーミンの「メトロポリスの片隅で」がBGMで流れていた。


by miltlumi | 2016-10-10 11:59 | マンモス系の生態 | Comments(2)
Commented by zelan at 2016-10-13 19:44
昔知人男性が何も考えてない風だったので、「考えてないでしょ」と言うと「考えてない」と案の定答えたので、「何か考えてないとヒマではないのか」と問うた処、「まわりの事実を観察しているので全然ヒマでない」と言われてギャフンとなった(死語)ことを少し思い出しました(笑)。いずれにせよ男女脳は随分と違いますね。
Commented by miltlumi at 2016-10-16 15:22
その男性は、まだ少しは女脳を持ってるかも。
私がとある男性に「考えてないでしょ」って言ったら、「考えてない」
しかも、考えてなくても「え…、ひま?」って感じで、あれをヒマだとも思ってなかったです(笑)
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