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イングリッド・バーグマンとキャロル・ドウェックと中森明菜

 「私が後悔しているのは、やらなかったことであり、やったことではありません」
 イングリッド・バーグマンのこの言葉が好きだ。何かをやろうかやるまいか迷っている人を見ると、その背中を押すのにいつもこの言葉を引き合いに出す。

 と言いながら、私自身が本当にそう思っているのか。やって後悔したことはないのか、と問われると、もじもじしてしまう。「やらなきゃよかった」と思うときが、実は、これまでも今も、少なからず、ある。
 それはどういうときかと言えば、もちろんやったことがうまくいかなかったときである。
 意図した結果に結びつかなかった。失敗してしまった。苦い思いを噛みしめながら、ついつぶやく。
 「あー、もう、こんなんだったら初めからやらなければよかった」 
 イングリッドの言葉が心の片隅でかすかにこだましているのだが、「やってよかった」とはどうしても思えない。縮小均衡、だとはわかっていながらも、「やらない」という選択肢ばかりに心が惹かれてしまう。

 最近ポジティブ心理学の勉強を始めて、改めてわかった。キャロル・ドウェック教授の言う典型的な Fixed mindsetだったのである。自分の能力は固定して変わらない、という思い込み。成長意欲の欠落。
 「やらない」よりも「やる」ほうがいい、というのは、やれば必ず成功するから、ではない。やって失敗しても、その体験を振り返って、どうすればよかったかを考えて、次に生かす。そうしたら、次は前よりも少しは上手にできるはず。そうやって少しずつ上達していく。こうして学びを成長につなげていくからこそ、「やる」ほうがいい、のである。何もやらなかったら、何も失敗しない代わりに、何の成長もない。

 ところが私は、「失敗した」ということに呆然として思考停止してしまって、そして何よりその体験に関わる人たちに自分のハズカシイ姿を晒してしまったという羞恥心ばかりが先に立って、「やらなければよかった」となるのである。
 正直に言うと、思考停止の背景には「自分は出来る。自分は完璧」という根拠のない思い込みがあるのだ。これこそFixed mindsetの罠。

 以前、一回り近く年上の、世間的には成功者と目される経営者が「人生の目的は人間として熟成することだ」とおっしゃっていた。…ということを以前もブログに書いたような気がして、見返してみたら、6年前に書いていた。彼の言っていた、いわばGrowth mindsetをすっかり忘れていたとは。
 改めて思う。人生って、タイヘン。人間生きている限り学び続け、成長し続けるなんて。

 「恋も二度めなら少しは上手に…」という中森明菜の歌がふと思い浮ぶ。二度めどころか20回やっても恋なんかうまくいかない。だからって恋することを止めたら、人生何の楽しみもない。ということはわかっているので、性懲りもなく恋はする。このGrowth mindsetを恋愛以外にも適用すればいいのだ。たまに、「もう恋なんてしない」って思うこともあるけどね。


by miltlumi | 2016-03-29 09:21 | リーダーシップ論 | Comments(0)
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