人気ブログランキング | 話題のタグを見る

今さらのアナ雪(下)

 一方、アナのほうはもっとわかりやすい。エルサの秘密を知る由もないまま(=重要な企業秘密は蚊帳の外)そのとばっちりを受けて一般社会から隔絶されていた(=閉鎖的な内勤業務だけ)のが、突然外界への門戸が開かれて有頂天(初出張?初赴任?)となる。そこで出会った他国の王子様に一目惚れして、いきなり結婚の約束(Due Diligenceなしで合併覚書締結)。
 こうした展開にまつわるラーニングポイントは、以下のとおり。

 教訓その3。ビジネス界では性悪説を腹に据えておくこと。
 女性は一般的に男性より正義感が強く(心理学の研究調査でそのような結果が出たとどこかで読んだ)、また世間知らずである。そのような女性がビジネスの現場、特に他社との交渉といった社外とのフロントに立ったとき、相手もフェアに行動するだろうという根拠のない性善説に囚われることが多い(少なくとも私はそうだった)。
 ところが男は、自分の目的達成のためならどんなに汚い手(?)も平気で使う。自国で王座に就く望みのないハンス王子の策略は、その典型。まんまと信じてしまったアナがバカだった、と言わざるを得ない。信頼関係はビジネスの基本だが、むやみに他人を信用すると馬鹿を見る。まずは疑ってかかる、性悪説から入るほうが無難である。
 などと偉そうなことを言う私も、ハンスの素顔が明らかになった瞬間、思わず「え~っ」と声を上げてしまった。ディズニーワールドに浸って「ステキな王子様♡」とのほほんと画面を眺めていた私は、まだまだ世間知らずである。

 教訓その4。「同志」を見極めよ。
 世間知らずな私がもう1ヶ所、「え~っ」と声を上げてしまったシーンは、アナを甦らせる抱擁を与えたのがクリストフではなくエルサだった場面だ。ここでもディズニーにやられた。信頼できる人は俗世間での地位とかに関係ないんだよねー、スヴェン、もっと速く走れ!と手に汗握ってクリストフを応援していたのに、最後のどんでん返し。
 これも示唆的である。ごく少人数の女性が孤軍奮闘していた時代は去り、少しずつではあるが女性の同志が増えてきている。社内外問わず、頼れる者は実は同性。メディアが「女性社員同士の足の引っ張り合い」などと面白おかしく騒ぐこともあるが、あれこそが男性による女性への暗黙の「揚げ足取り」である。女性の嫉妬など可愛いもので、ビジネス界における男性の嫉妬ほど怖いものはない。それこそ神経戦の戦術ノウハウにかけては年季がちがう。
 もちろん、真の意味で女性を応援してくれるビジネスマンもいるが、羊の皮をかぶった狼クリストフがいないとも限らない。相手を見極める冷静な目を養うことが肝要だ。

 それにしても、ディズニー童話も変わった、と思う。白雪姫もシンデレラも眠れる森の美女も、みんな最後は「王子様と幸せに暮らしました」だったのに、ここではアナを救ったのが王子様ではなく、野趣あふれるクリストフでもなく、同性の姉であるエルサだったとは。
 人生の大先輩であるビジネスウーマンが、ふと漏らした言葉が思い出される。
 「オトコは裏切るけど、仕事は裏切らないからね」

 「アナと雪の女王」が日本人女性に大受けだったことが、結局のところ妙に納得できた。 (おしまい)


by miltlumi | 2015-11-02 21:30 | マンモス系の生態 | Comments(2)
Commented by kearyioa at 2015-11-03 06:57
読ませて頂きました。
テレビのバラエティ番組で、エルサの行動は、オネエであることをカミングアウトした人達の人生に通じる、という話を聞いたことがあります。
なるほど、ビジネス社会とも通じる映画だったのですね。

男の嫉妬心は、ホントに面倒で、世界のあらゆる争い事の根源はそこに集約されて、まさにこの世はジェラシックパークなんじゃないかと、いつも思っています。

miltlumiさんのテキストは読み応えがあって楽しいです。
Commented by miltlumi at 2015-11-03 15:17
Kearyuioaさん、コメントありがとうございます!
エルサの行動とカミングアウト人生。。。なるほど。色んな解釈があるものですね。
それにしても「ジェラシックパーク」、笑えます(笑)(笑) 
ほんとビジネスにおけるオトコの嫉妬はコワいです。
ともあれ、これからもご愛読のほどよろしくお願いいたします♪ 
<< 小姑のこごと 今さらのアナ雪 (上) >>