思いっきり遅ればせながら「アナと雪の女王」を観た。あの有名な歌のシーンだけはTVで見たことがあったけれど、その前後の脈絡を初めて知って、愕然とした。あれ、全然歓迎すべき場面じゃないじゃん。 大ヒットした歌とともに漏れ聞いていたのは、この映画は旧弊からの「女性の解放」を示唆していて、まだまだ男性中心の現代日本社会で鬱屈している女性の深層心理に訴えかけ、自らを解き放ったエルサの快哉の歌声に観客が呼応している、という説である。もしかしたら私の聞き違い、誤解が混じっているかもしれないが、とにかくそういう話だと思っていた。 でも実際には、あの場面は、ざっくり良いか悪いかと言えば、「悪い」方ではないのか。だって、エルサが激情に任せて秘めたパワーを全開させた結果、国じゅうを凍える冬に陥れたってことでしょう。 それまで長い間、生まれ持ったパワーを使うことが禁忌とされ、広い世界はおろか血を分けた妹からも遮断され、長い間自分自身を抑圧せざるを得なかったエルサに対して、同情の念を抱かないわけではない。とはいえやはり「女王」という公の立場としては、国民の幸福を第一に考えるべき。妹の結婚に反対するという私情に囚われて全てを氷と化し、挙句の果てに一人ノースマウンテンに籠もってしまうのは、いかがなものか。 天岩戸に籠もった天照大神と一見似ているが、こちらは素戔嗚尊の暴挙がこの世の安寧を乱すことに腹を立てた、公序良俗を希求するがゆえの引き籠りなわけで、エルサの私情とはちょっとちがう。 ふと思った。もしかすると、この映画の裏テーマは、良くも悪くも男性が築き上げた現代ビジネス社会のルールに無知な女性が、それを一つ一つ学んでいく過程なのではないか。そう考えれば、エルサはもちろんアナの行動は具体的な教訓を暗示していると、合点がいく。 まずはエルサについて。 教訓その1。持てるパワーは制御すること。 エルサは、戴冠式で「抑えて抑えて」と思っていたのに、結局パワーを制御することができなかった。真面目な女性は、パワー全開、力の限り仕事をしてしまいがちである。その結果、周りがついてこられずに「暴走」と見られたり、ぶっちぎりの著しい成果を上げて男性陣の嫉妬を買ったり、何よりも自分自身が疲弊してしまう。 手練手管に長けた男性は、いつもはパワー7割程度、ここぞというときに120%くらいにアクセルを吹かす。「パワー制御」はビジネスの世界では必須のスキルである。 教訓その2。感情で動かないこと(エルサ)。 これはもう言うまでもない。ビジネスに私情を挟むのはご法度である。 余談だが、うちの母は習近平氏が嫌いだ。「にこりともしない不気味な表情を見ると胸が悪くなる」といつも言っているが、オバマ大統領との会談ではちょっとだけ笑みを浮かべた。口角をわずかに上げ下げすることさえ、彼にとっては外交交渉術なのである。 世間知らずの母はさておき、ビジネスウーマンにとって感情のコントロールは大きな課題だ。
by miltlumi
| 2015-11-01 22:00
| リーダーシップ論
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