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花いちもんめ

 女性ビジネスリーダーを育成するプログラムにご縁があり、受講者の発表会を傍聴した。ある人が発表の途中、感極まって涙ぐむ場面があった。せっかく上司から機会を与えられたのに、その意図を読み切れずしかるべき行動をとらないでいるうち、別の人に仕事をさらわれて初めて、自分がやるべきだったことに気づいた、というのである。
 そのときの悔しさを思い出してつい流れてしまった涙を必死にこらえながら発表を続ける姿に、掛け値なしに感動してしまった。他人に仕事を奪われた悔しさではなく、上司の期待に沿えなかった自分の至らなさに対する悔しさが、じんじんと伝わってくる。
 その経験をきっかけにして、リーダーとしてどうあるべきかに気づいてマインドセットを変え、具体的に何をすべきかが明確になり、スキルもついて成果に結びつくようになった、という。

 負けて悔しい花いちもんめ。
ふと、こんな歌を思い出した。人は、悔しい思いをして初めて成長する。負けたら、今度こそ勝とう、と奮い立って、お釜かぶってでも、お布団かぶっても、再び挑戦する姿勢が大切。
 ビジネス界で成功者と言われる人たちの多くは、たいがい人生の早い時期に、歯噛みして悔しがる体験をしているように思える。悔しい、頭に来た、という激しい感情が起爆剤となることは、今更言うまでもない。

 そういう私は、振り返ってみると、夜も寝られないくらい悔しい思いをした覚えがない。悔しい思いをしないよう、慎重に「負ける機会」を避けてきた気さえする。
 今でも鮮明に憶えているのは、小学2年生の時に彫刻刀でケガをしたときのこと。3つ年上の兄が器用に使っているのを真似てみたくなり、こっそり手にしたところ、左手の親指と人差し指の間をざっくり切ってしまった。そのとき、悔しい、ちゃんと使えるようになりたい、と再度挑戦する代わりに、あっさり断念してしまった。
 あの頃、外で木に登ったり物置の屋根から飛び降りたり生傷の絶えなかった兄に対して、うちの中でお人形さん遊びばかりしていた私を、母はいつも「あなたはうちで大人しくしてて、よい子ね」と褒めてくれた。
 彫刻刀事件は、危ないことに手を出さずに大人しくするのが「よい子」だという、今思えば間違った認識を決定的に私に刷り込んだ。

 この歳になればもう自分の性格を母のせいにするわけにはいかないが、未だに私はリスクをとる行動が苦手だ。
 鬼がいるとかお釜がないとかとか言って、負けそうなことには最初から挑戦しない。だから、「負けて(出来なくて)悔しい」思いはしない。
 悔しい気持ちに免疫がないから、余計にリスクをとるのが恐くて、背伸びをしなくなる。

 子供を持つ親のみなさんには声を大にして言いたい。お子様には、何度だって「花いちもんめ」をやらせてあげてください。新しい物事に「ちょっとおいで」と呼ばれた時、「危ない」と留めるのではなく、「お釜なくても行って来い!」と背中を押してあげてください。痛い思い、悔しい思いをたくさん味わって免疫を作って、今度こそ、と発奮する機会を次々に与えてあげてください。
 たぶん、子供の頃に体験した感情は大人が感じるよりもずっと強烈で、大人になってから大きな意味を持つと思うから。

<追記>
ブログアップ後、関西ご出身の方から「歌詞がちがうので通じません」とのコメントをいただきました。
ご参考までに私の出身地(神奈川県西部)で歌われていた歌詞を以下に記しておきます。
 ***
 となりのおばさん ちょっとおいで
  鬼がいるから行かれない
 お釜かぶってちょっとおいで
  お釜ないから行かれない
 お布団かぶってちょっとおいで
  お布団ないから行かれない
 あの子が欲しい
  あの子じゃわからん
 この子が欲しい
  この子じゃわからん
 相談しよう
  そうしよう
(相談→じゃんけん→移動)
 勝って嬉しい花いちもんめ
  負けて悔しい花いちもんめ
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by miltlumi | 2015-07-04 11:47 | リーダーシップ論 | Comments(2)
Commented by cazorla at 2015-07-04 23:55
こんなに長い詩があったんですね。
うちのほうでは 後半部だけ。
お釜とかお布団 私もわからなかった。

で そう 私も負けず嫌いだから
負ける場面は避けて ここまできてしまいました。
Commented by miltlumi at 2015-07-05 10:32
Cazorlaさんの地元も、この歌詞じゃなかったんですね~。
負けず嫌いであるがゆえに負ける場面を避けるって、私だけじゃなかったんだ。ちょっと安心しました(笑)
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