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呼ぶもの

 英語にはいささか自信があったのだが、この歳になるまで全然知らなかった単語がある。
 Calling。天職、と訳す。ご存じでした?

 元はと言えば、昨秋受講したコロンビアビジネススクールのネット通信教育である。リーダーシップを学ぶ講座の中での「あなたにとって仕事とは?」というセッション。いかにもアメリカのビジネススクールにありがちな展開で、「仕事(Work)には3つの種類があります」と来た。
 その1。Work as Job。Jobとは、生活のため、物質的な利益を得るために働くこと。
 その2。Work as Career。Careerとは、物質的もしくは精神的報酬(Reward)を得るために働くこと。組織の中での「Advancement」を伴う。例えば、高給、特権、権力、ステイタス。
 その3。Work as Calling。Callingとは、より本質的な喜びを得るために働くこと。単なる金稼ぎ(Job)やAdvancement(Career)ではなく、Fulfillment。

 面白いもので、この手の説明においては和訳するよりも英単語そのままのほうがニュアンスが伝わり易い場合がある(と私が勝手に考えているだけだが)。
 Advancementを和訳すると、昇進・昇級、進歩、いわば前進。先のブログに書いた猪型、というより猿型、のイメージか。
 対するFulfillmentは、和訳すると実現、達成、成就であるが、これだと「学業成就」のお守りみたいだし、目標に向かって前進して達成するAdvancementと何がちがうのよ、と言われてしまいかねない。でも、Fulfillmentはやっぱりちょっとちがう。偏差値の高い大学に合格するとか売上100億円達成!といった世俗的な「達成」ではなく、もっと精神的充実感を伴う達成、とでも言おうか。
 極私的解釈を加えると、Careerの「達成」は他人・世間一般の価値観がモノサシになっているが、Callingの「達成」は自分自身の価値観だけが指標である。言い換えれば、Careerの追及の結果得るRewardは外部からもたらされ、CallingによるRewardは自分自身から湧き上がる。
 それにしても、Callingって、コロンビア大学の造語だろうか。聞いたことないなあ。

 つい先日、この単語を偶然見かけた。職探し中の若者をある人に紹介したら、その人が若者をインタビューしたあとで送ってきたメール。
 「I guess XXX(若者の名前)is unclear yet as to what his calling is.」
 おや、この人もコロンビアビジネススクールを受講したのかしらん。いきなり親近感が倍増した。ところが、ふとネット辞書を引くと、あたり前の普通名詞として「Calling:天職、職業」と出ているではないか。コロンビアの専売特許ではなかったのだ。

 Calling。天職。ライフワーク、とも呼べるかもしれない。Wikipediaによると「ライフワーク」とは「作家や研究者、表現者などが、生涯の仕事として人生を捧げたテーマのこと」とある。「作家や研究者、表現者」であって、「サラリーマンや官僚」でないところが興味深い。後者にとっての仕事がJobやCareerである場合のほうが多い、という社会通念のせいか。けれど本来は、どんな仕事でもCallingになりうるはず。
 Jobはお金がもらえなくなったらオシマイだが、自分がお金をもらっているのはどんな価値観の実現に対してなのか、を考えれば、Callingにつながる。Callingは、その価値観を追求し続ける限りエンドレス、まさにライフワークである。


by miltlumi | 2015-05-05 09:02 | マンモス系の生態 | Comments(2)
Commented by Cat Burcket at 2015-05-19 17:47 x
天職(Calling)という言葉は、中学か高校の歴史の教科書にも出てたと思います。キリスト教のがらみの身分湖底に対するルネサンスだったか中世だったかの概念として。
Commented by miltlumi at 2015-05-21 18:33
Cat Burcketさん、コメントありがとうございます。
「Calling」はやはりキリスト教から来ている言葉なんですね。
でも、日本人にもなんとなくしっくりくる感じがします。
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