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手抜きの基準

 Manhattanは、なんてアンチバリアフリーなんだろう。8年ぶりのNYに対する最初の感想がこれだった。34丁目のPENN Stationから42丁目のマダムタッソー博物館(蝋人形目当てではなく、1階の観光バスカウンターでWoodbury Commonsアウトレット往復チケットを受け取るためだ)に立ち寄って、55丁目のホテルまで歩いて、実感した。何しろ歩道がぼこぼこなのだ。キャスターつきの大きなスーツケースと一緒だったから、なおさらだ。

 あの街は東西南北StreetとAvenueが碁盤の目のように走っているから、南から北に向かえば100m毎に横断歩道を渡る。そこには、東京の主だったエリアではもう当たり前になっている点字ブロックなど影も形もない。歩道の一部に傾斜がついていて、一段低い車道になだらかに踏み出せるようになってはいるが、そことて完全に平坦ではなく、べこりと陥没して水たまりになっていたり、なぜか歩道と車道の境に2㎝高さの仕切り板のようなものが埋め込まれていたりする。
 歩道そのものも、でかいマンホールのふたの周りはアリジゴク状に傾斜しているしコンクリートを無秩序に塗り固めた時の仕切り線はできているし、ちゃんと足元を見ていないとどこにキャスターが引っかかるかわからない。
 我が港区の駅の周辺道路の歩道は、点字ブロックはもちろんベージュっぽいオレンジの瀟洒なレンガ敷きにどんどん置き換わっている。単なるカッコつけかと思ったら、保水性と透水性を具えたヒートアイランド対策のレンガだという。おじさんたちが黙々とその賢いレンガをひとつひとつでこぼこのないよう丁寧に敷き詰めているのだ。不器用なアメリカ人に爪の垢でも飲んでもらいたい。

 …と思っていたら、Woodbury Commonsに向かう片側5車線のハイウェイは、黒々したアスファルトがきっちり平坦に敷かれていた。なんだ、やればできるじゃないかアメリカ人、とバスの中で一人ごちる。
 つまり彼らは、必要があればやる。歩道がボコボコなのは、わざわざ税金を費やして整備する必要なしと判断しているのだ、きっと。
 そういえば車椅子の人もちらほら見かけたが、歩道で転倒しそうな危なっかしい場面には遭遇しなかった。車椅子ならあの程度のでこぼこは耐えられるのかもしれない。ちゃちなキャスターしかついていないでっかいスーツケースをひきずって21ブロックも歩く物好きを、NY市の土木工事課長は想定していないのだ。

 ところで、NYで泊ったホテルのバスルームの水栓パネルが上下逆さまについていた。なんじゃこりゃー、日本じゃあり得ない!と思わず写真を撮ってFacebookにUPしたら、外国暮らしの友人から次々にコメントが。
 @ロシア:日本では大問題なことが海外に出ると割と普通で、本当に忍耐強くなるというか何というか…。
 @米国:この程度は極普通。基本的にどうでもいい事にいい加減なのが世界標準。日本はどうでもいい事にも手を抜かないから残業が増える。
 @シンガポール:日本人のきっちりした仕事に感動すると共に、だから日本人って疲れてるのかも?とも思う。

 みなさん、おっしゃるとおり。手取り足取り、「転ばぬ先の杖」どころか「転ばないところにも杖」を配置して、転んだときに態勢を立て直すことのできない子供が増える日本、もっと手を抜いたほうがいいのかもしれない。
by miltlumi | 2014-10-04 14:20 | NY after 8 years | Comments(0)
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