(その1)はこちら・・・
ようやく病院に行く日。「よく歩きましょう」という主治医のアドバイスに従って、病院まで徒歩で出掛ける。予約なしの診察受付時間開始ぴったりに受付をして、診療科の窓口で多少誇張を入れながら事情を説明する。 「先生の言いつけを忘れて腹筋運動をしたら、傷口が痛むんです」 診察時間開始後10分で名前を呼ばれた。「こんにちは…」と言いながら、警察に自首する犯人のようにしおらしく先生の前の丸椅子に腰かける。デスクの上のカルテには、先ほどの看護師さんが手書きしたらしき「腹筋運動して、痛み」というメモが乗っかっていて、既に先生は苦笑している。 「腹筋、やっちゃったんですか?」 「はい。先生から3ヶ月はだめと言われていたのをころっと忘れてまして…云々」 結論から言えば、腹筋は裂けていなかった。「裂けちゃいますからね」という安直な説明から一転、先生が丁寧に説明してくれる。 腹筋とは、正しくは腹直筋といってお腹の真ん中を挟んで左右に配置されている。その間を筋膜がつないでいる。私が受けた開腹手術(おへそから10㎝ほど真っ直ぐ縦に切断)では、その筋膜を縦に切ってから縫い合わせたのである。筋膜が完全にくっつかないうちに力がかかると、膜がのびてしまう。のびると、お腹の中の内臓を押さえる力が弱まって、おなかぽっこり状態になる。つまり、腹筋の筋肉そのものが裂けちゃうわけじゃないのだ。ほっ。しかし、ほっとしたのも束の間、次の先生の言葉に崖の下に突き落とされる。 「一旦のびてしまった膜は『二度と元には戻りません』」 ぐわーん、というより、ぽよよーん、という擬態語が脳裡にこだました。二度と元に戻らない…。せっかくスリムな体重になったというのに、腹だけはぽよよーんと膨らんで5ヶ月のおめでた状態が、この先一生続くのか。。。 「そうでなくても、歳をとるとだんだん筋膜が緩んでおなかが出てくるんですけどね」 慰めだかなんだかわからないような慰めを先生が続ける。 「とにかく今すぐ急を要するという状態ではありません。本当に筋膜が切れた場合は、そこから腸がぴょっこり飛び出して鬱血する、そうなるとまずいですが、見たところそのような症状ではありません。とにかく、気をつけてくださいよ」 ということで、質問投稿サイトで皆が嘆き合っている「術後おなかぽっこりが元に戻らない」状態とは、なんらか無理をしたせいで筋膜がのびて、本来がしっと合わさった腹直筋にぎゅっと締めつけられるべき内臓が野放図に膨張し、おなかがぽよよーんと出てしまった、という意味なのであった。そして、そうなったおなかは基本的にもう元には戻らない。ははは。残念でした~(ヒトゴトではない)。 ・・・(その3)に続く
by miltlumi
| 2014-08-12 20:27
| イレウス奮闘記
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