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ランチタイムが終わる頃

 近頃、ランチに凝っている。その日の予定に合わせて、何時頃どこで何を食べるか、かなり真剣に考える。
 入院して3週間点滴のみの絶食期間中、友達がお見舞いに持ってきてくれたELLE a tableの付録の「食べ歩きおやつBOOK」に載っているカフェを穴の開くくらい読み込んで、病室に持ちこんだPCで検索して場所までチェックして、元気になったらぜひ行こう、と楽しみにしていたのだ。アップルパイとかマフィンとかパンケーキとか、従来ならカロリーを気にして敬遠する店である。
 幸か不幸か入院デトックスで落ちた体重がまだ復活しておらず、一方で胃が小さくなったせいか一度にあまりたくさん食べられない。であれば少量で高カロリーを摂取できるこれら小麦粉・牛乳・砂糖系が最適なのだ。というわけで、おやつランチ解禁。今やELLEのレパートリーを大きく超えて、ブックマークしてあった評判のピザ屋とか食べログランキング上位のパン食べ放題店とか、やりたい放題である。

 午前中に都庁前で仕事だから、麻布十番で途中下車してアメリカンなベーカリーで巨大マフィン。外出予定がないけどお天気がいいので、プラチナ通りのオープンカフェでパニーニとサラダセット。後輩の仕事の相談に乗るのを口実にして、六本木のカフェでパンケーキブランチミーティング。
 今日も美味しいランチが食べられました、と寝る前の一人反省会で神様に感謝する。そして、体重は増えなくていいから体調が元通りになりますように、とお願いする。起きている時間のかなりの部分を「食べること」及び「食べることを考えること」に費やしている。もっと高度なことにアタマを使うべきなのだろうが、カラダあっての物種、一食一食を丁寧に扱うのは大切だと思う。

 若い頃はランチに気を遣うなんてことはほとんどなかった。社員食堂のある会社にいたせいもあるが、それさえ利用せず売店でサンドイッチと菓子パン1つ買ってデスクランチ、という味気ない生活を半年以上続けたことがある。大手町のサラリーマンに混じって、ともかく並ばず手っ取り早く、残業時間を乗り切るための腹持ちだけを考えて、唐揚げ定食や大盛りスパゲティーをかきこんだ時期もあった。
 最近、30代前半の働き盛りの男の子(とつい呼んでしまう)がオフィスでPCに向かっていて、後輩に「昼飯なにか買ってきましょうか?」と聞かれ、画面から一瞬も目をあげないまま「なんでもいいよ」と答えていた。後輩が買ってきたのは、ボリューム満点のトンカツ弁当だった。まあ、人生そういう時期もあってよかろう。

 極私的観察に基づくと、上昇志向の強い金融マンのほうがランチに払う注意の度合が低い。ウォールストリートからメーカーに転職した男性は、日本に出張してきてもハンバーガーとフライドポテトを一番喜んでいた。同じ金融マンでも、トップクラスに登り詰めるとグルメになるのは、「懐足りて衣食を知る」といったところか。
 衣食も礼節も懐も足りたと思われる男性が、忙しくてお弁当を食べながらのランチミーティングが立て続いたとき、秘書に向かって悲鳴を上げた。
  「死ぬまであと何回飯を食えるかわからないんだから、冷たい弁当ばっかりじゃ嫌だ!」
 その気持ち、今では私もよくわかる。

(食べログの回し者ではありませんが、文中に出てくるお店の箇所をクリックすると、お店情報が見られます)
by miltlumi | 2014-06-27 11:03 | 機嫌よく一人暮らし | Comments(0)
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