その昔、多くの職場では女性はマイノリティーであった。男性社員と比べて任される業務が限られるとかキャリアアップを考える上でロールモデルがいないとか、そういう高尚な悩み以前に、まず絶対的に人数が少なかった。
20代後半でカナダに赴任して、男女半々の職場で3年間のびのびと過ごした後、帰任したらやっぱり男性優位だった。翌年度、我が部署に配属になった新入社員の過半数が女性だったのが嬉しくて、同い年の女性2人と共に先輩面して「女子会」(当時そういう単語はなかったが)を主催した。この隠れイベントを聞きつけた課長が「足しにしなさい」と渡してくれた封筒の中には、新入社員のディナー代を補って余りあるお札が入っていた。 時代は移り、肩書きはさておき人数は女性が過半数、という職場はもう珍しくはない。ボスが不用意にも「これだからオンナはだめなんだっ!」と叫んでも、にっこり微笑んで「へ~え、そんなことおっしゃって、いいんですか?」と開き直るだけの勢力を持てるようになった。ボスと次席が外出すると、オフィスには男性社員一人であとは全員女性、なんてことがしばしば起こる。 昔と同じ気分で、女性社員の結束強化とモチベーションアップのため、仕事で関係する他社の女性も交えた女子会を企画した。当日、速やかにレストランに行けるよう、6時過ぎから会議を招集する。集まった女性たちはオフィスにいるときからアピタイザーモードで姦しい。片隅で、招かれなかったカレが一人、恨めし気な視線を泳がせる。ごめんね、「女子会」なもんで。 お店に向かう道すがら、「○○君、来たがってたみたいね」「仕方ないでしょ、女子会なんだから」「がはは」 笑い飛ばす私たちに、マイノリティーの立場に甘んじていた頃の面影は、皆無である。 同様の現象は、普通の会社のみならずプロフェッショナルファームと呼ばれる職場でも起きているようだ。弁護士事務所で、優秀な司法修習生を選んでいたら社員の過半数が女性になってしまった、という例を2つ知っている。 わざわざ女子会で結束しなくても、共に働く女性たちはバイオリズムを一にし始める。同時多発的に結婚・出産・育児が起こる。男女雇用機会均等法後の上司は、粛々として現実を受け止めざるを得ない。共働きの妻が忙しいので早退したいと申し出た男性に「保育園のお迎えに男親が行くとは何事だっ」と怒鳴った上司(封筒くれた人とは別です)がいたが、あれはまさしく前世期の遺物である。 先般、男性看護師のことを書いたら、友達が自分の目撃談を教えてくれた。病院の喫煙コーナーで煙草を吸っていたら、若い男性看護師さんが出入りの業者と思われる男性に声をこう声をかけていたというのである。 「僕ら職場の男だけで男子会っての、やってるんですけど、人数少なくて寂しいんですよね。よかったら参加しませんか?」 彼等は、「男子会」開催の定員にも満たないほどマイノリティーなのである。ここまでくるとさすがに同情の念を禁じ得ない。頑張れ! 男の子たち。
by miltlumi
| 2014-06-06 12:56
| マンモス系の生態
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