今回の入院は、10年前の子宮筋腫以来であった。10年ひと昔、入った病院こそ違え、明らかに社会的に変わったことがいくつかある。その際たるものは男性看護師である。
入院初日、まだ痛み止めの効果も出るか出ないかのうちに、年嵩の女性がベッドサイドにやってきた。 「内科のシチョウの○○です」 シチョウ? 市長? 状況から言って彼女が婦長であることは想像に難くないが、それが「師長」であることに気づいたのは数日後だった。女の園であったこの職場に男性が進出した今や「看護婦」という単語は死語であり、「看護師」と呼ばれる。だからそのボスは「師長」。 病院では昼間と夜勤、1日に二人が交代で一人の患者を担当する。ただ、ナースコールを押したときに担当看護師の手がふさがっていると、別の看護師が来たり、夜の点滴の見回りにちがう看護師が来ることもある。 夜中、LED懐中電灯を持って猫のように入ってきた看護師が男性だったことが何度かある。うとうとしながら、夜勤は体力のある男性看護師のほうが多いのかなあ、などと勝手な解釈をしていた。 しかし手術の前日、外科病棟に移って最初の夜担当の看護師が男性だった。男性看護師が女性患者の正式担当になることはないと、なんとなく勝手に思いこんでいたから少し戸惑った。でも丸眼鏡の彼はいかにも優しそうで、同級生になっても絶対に恋愛対象にはならないで、「お友達」になってしまうタイプである。 「明朝の手術の準備は女性看護師が担当しますので」 こちらの心のうちを読み取ったかのように、問わず語りにそう告げる。なるほど。この業界では、従事できる業務の差別は男性側にある。ちょっと意地悪な気分で、へへへん、と思った。男女雇用機会均等法施行前年に社会人になった立場としては、入社1年目の工場実習や販売実習に男性新入社員しか参加させてもらえなかったことをいまだに根に持っている。ここでは逆に、女性しか参加させてもらえない業務があるのだ。 もっと言えば、「男性看護師には看てもらいたくありません」と突っぱねる保守的な女性患者だっているにちがいない。そういうとき、彼はすごすごと引き下がるのだろうか。「オンナなんか相手に出来るか!」とオヤジな社長に門前払いをくらった女性営業職の気持ちを、今日び男性が味わう番である。 術後、傷口にあてたガーゼを取り換えてもらおうとナースコールを押したとき、やってきたのは男性看護師であった。あられもない話だが、傷口はおへその下である。ややっと思ったが、ここで男女差別をしてはいけない。働く社会人としての冷静さが打ち勝って、あえて私は彼の処置に身を委ねた。 男女平等で働くこと。それは法制度や企業ルールの整備だけではなく、一人一人の心理的ハードルの問題だ。 ちなみに、当病院の男性看護師はみな草食系っぽい面持ちで優しそうな表情で痩せ型で、マッチョやら毛深い腕やらごっついタイプは皆無であった。人を外見で判断してはいけない、とよく言われるが、この職業ばかりは男性は顔も採用基準とせざるを得ないだろう。少なくとも完全な男女平等社会になるまでは。
by miltlumi
| 2014-05-12 20:43
| イレウス奮闘記
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Comments(4)
う~ん、やはり、ここまで来たら、術前術後の体験記もぜひお願いします。でないと、読む側としたら欲求不満になりそうなので^^);
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miltlumi at 2014-05-13 14:52
Burla catさん、コメントありがとうございます! 手術そのものの体験は実はあんまりおもしろくないんですよね~ 何しろ麻酔で寝てたから(笑) でも、その前後については追って書かせていただきます♪
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zelan at 2014-05-16 00:36
英国式リフレクソロジーに行くと、施術者のご希望は?と聞かれ、即座に「女性で」と答えている自分はある意味立派な性差別主義者である。でもイケメンが従事している事業所においては、別(笑)。イケメンとそうでないメンが両方いるときはギャンブルになる。人間ってあれこれ余計なこと考えて、忙しい。
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miltlumi at 2014-05-16 07:47
Zelanさん、たしかに~。ガーゼ取り換えてくれた男性看護師さんも、ちょっと可愛いタイプだったから我慢できたのかも(笑)
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