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盗み聞き

 次の予定までの時間潰しに、普段は使わないカフェに入った。スタバとちがってコーヒー1杯1コインでは収まらないが、たまにはささやかな贅沢も悪くない。きちんと温められたカップになみなみと注がれたミルクティーをすすりながら読書三昧、と本を開いたとたん、近くのテーブルの会話に耳が釘付け(って言うのかな)になった。
 「婚活サロンなんて言われたら、とても気軽に行けませんよ。合コン行こうと誘われれば大丈夫だけど」
 数日前、婚活関連ビジネスに関わることが決まったばかりである。シンクロニシティー。これぞ良きご縁(?)。本を読むふりをして、ありったけの注意力を耳に集中させる。どうやら新規事業のネーミングと内容の相談らしい。アイディアを出しているのは、もっぱら30代前半独身とおぼしき男性である。

 曰く。仕事もプライベートもマジメなのはダメ。ケッコンとか婚活とか言った途端に、少なくとも男性は引く。いっそちゃらけて「コンカツ道場」ならどうか。「道場」であれば、目的は「勉強」。勉強が目的なら、焦ってる感が薄れる。直接的な結婚相手との出会いを求めてるわけじゃない(やせ我慢だなー)。お料理教室も同じ発想なんですよ(そりゃそーだろーなー)。勉強してるうちに仲良くなる(そういえば、中高生が塾に行く最大のモチベーションってこれじゃなかったっけ)。
 「コンカツ君」とかいうゆるキャラ作って、勉強の最中に登場する。「オマエら固いぞー」とかゲキを飛ばして場を盛り上げる。みんなで柔道着着て参加する。検定試験をして、黒帯一段とか作って。でも、検定きわめてるのに結婚できないってのはまずいですねー(普通の学校とちがって、中退したもん勝ちということか)。

 次々飛び出すアイディアに、心の中で感心してしまう。さらに、私の知らない男性心理の説明に入ると俄然耳ダンボがさらに大きくなる。
 男はぶつかり合い。身体と身体がぶつかり合うことが大切なんですよ。スポーツも、マラソン、テニス、バレーボール、サッカー、ラグビーの順に、男っぽさが増すでしょう。接触が大切。接触によって男性ホルモンが上がるんです。男性ホルモンが出ればより男らしくなる。そうやって変わっていく男を見て、女性が惚れちゃうんです。道場ではゼッタイ接触体験いれるべき。
 ひえー、そうなんだー。どうりでフィギュアスケート男子見てて「セクシーじゃないなー」となんか物足りなかったわけだ。マラソン以上に他選手とのカラダの接触、ないもんね。

 しかし、男女の出会いの機微の話になるとだんだん「異議あり」モードに。
 「人間、ギャップが大切なんですよ。第一印象は悪いほうがいい」 おい、そりゃ、ちがうね。いいとか悪いとかじゃなくて、「強い」ほうがいいのです。私の経験上、仲良くなった異性は、ほぼ必ず「最初に会ったときの印象」をよく憶えている。少なくとも女性は第六感が鋭いし、最初に直感で感じたものを大切にする。第一印象悪かったら、アウトじゃない?
 「最初の印象悪くて、だんだん上がっていくほうがいい。後から意外な一面見つけるとグッとくるでしょ」 ああ、それはオトコの発想。オトコは飽きっぽいから、奥ゆかしげな女性が突然超ミニはいたりしたただけでコロッといっちゃうの。でもその作戦は女性には通用しない。我々は意外性より安定を求める動物だから。

 そして、この言葉に私はテーブルに突っ伏しそうになった。
  「身体カタい女の子は、総じて色気がないですよね」
 なにぃ、身体の柔らかさだとー? 色気ってのは、ただカラダをくにゃくにゃさせりゃーいいってもんじゃないでしょー。じゃあナニかい、キャンドルスピンのリプニツカヤ選手が、フィギュア女子の中で色っぽさNo.1だったとでもいうのかい? 
 小さい頃から身体のかたさでは右に出る者のいなかった私は、憮然として本を閉じた。

 会計を済ませて店を出るときも、彼らの会話は続いていた。まあ、600円のモトをとった気はした。仕入れた情報がビジネスに結びつくかどうかは、よくわからない。
by miltlumi | 2014-02-27 14:38 | マンモス系の生態 | Comments(0)
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