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クロマグロとカジノ

 少し前のニュースで、クロマグロの初競りの落札価格が736万円、去年は1億5000万円でした、と言っていた。20分の1か~、と思った次の瞬間、え、にじゅうぶんのいち~!? んなことあるわけないじゃんっ、割り算もできなくなったか!と自分にツッコミをいれ、もう一度計算してみたら、やっぱり20分の1だった。
 なんじゃそりゃー、と今度はTVにツッコミを入れたら、競りの張本人の片一方が、「あれはサカナの値段じゃありませんでした。タダの意地の張り合いでした」と神妙に反省の弁を述べていた。そりゃそーだろー。

 クールジャパンの代表格であるSUSHIが中国でも人気で、かの国ですしチェーンを展開するその某と、「すしざんまい」の一騎打ちだったという。テキがいると俄然闘志が燃え上がる、傍で見ていると阿呆らしいほどのオトコの意地、ここでもか。
 年明け早々、ホテルのお正月レクリエーションイベントでの光景を思い出した。

 遊び疲れ、食べ疲れた母を部屋に残して、夕食後に二人分の「チップ引換券」を手にカジノ特設会場に向かった。ラスベガスには2度ほど出張で行ったことがあるが、カジノの本場でスロットマシンにさえ手を出したことはない。当たるも八卦の賭け事は、生来ケチな私の性分に合わない。でもこのたびは、チップ20枚分がタダ(というか、ホテル代に含まれる)というので、興味本位で繰り出した。
 小宴会場の真中にどでんと据えられたルーレットに直行すると、老若男性たちに混じって中年女性が一人。券と交換にディーラーがくれた40枚のチップを手に、「で、どうやるんですか?」 誰とはなしに尋ねると、隣の女性が赤いネイルで指差しながら親切に教えてくれた。ど素人の常套手段として、まずは赤に3枚。当たり。やった。
  「まあー、すごいじゃない」
 赤ネイルが弾んだ声を上げる。ありがとうございます、と律儀に答え、2倍に増えたチップを手に、次は同じく3枚を黒へ。
  「じゃ、あたしも」
 チップ3枚が赤ネイルによって黒フェルトの上に置かれる。今度も赤。「きゃあ~」と二人で声を揃える。おもしろー。彼女は、昨夜からもう何度も千円つぎ込んでチップ20枚と交換してはスリまくっているという。正月から気前いいねー。おしゃべりに花咲く私たちを尻目に、男性陣はにこりともせずに黙々とチップを張っている。
 見ていて、数字が書かれたマス目の2つ分や4つ分の中央に置く、というやり方も発見。4つのうち1つが当たると12倍。なるほどー。真似して3枚張ったら、ビギナーズラック。2つ張りおじさんもざっくりチップが増える。「すごいですねー」と声をかけたが、返事なし。改めて見回すと、黄色い声ではしゃいでいるのは赤ネイルと私だけで、おじさまたちはまなじりを上げて真剣勝負である。オトコの意地だな。たかが正月の手遊びに、こんだけマジになるかー? 
 ちまちま作戦で40枚が2倍になったとき、景品を見に行って驚いた。50枚でLG21ヨーグルト4個との引換券1枚。希望小売価格126円×4=504円也。チップ20枚で千円だから、50枚は2,500円相当。ホンモノの賭け事は法律違反だから、恣意的に低くしてあるとはいえ、ごぶんのいち。。。あほらし。
 とすると、余計に不可解なのはオトコたちの真剣度合。勝負となると、採算度外視でホンキになってしまうのだ。肩の力、抜いて楽しもうよ、なんて慰めは余計なお世話。本気で真剣でマジなのが、彼らにとっては最大に楽しいのだ。

 というわけで、築地市場の初競りに、なんちゃってカジノ場のオトコたちの姿が重なる。その点、今年は早々に勝負から降りました、という中国のお寿司屋さんは冷静である。次にTV画面に映し出されたのは、クロマグロを町おこしにしている大間町の町長さん。
  「…まあ、美味しく食べてもらえば、…それでいいんじゃないですか」
 力なくこたえる彼の頬には、まさに「漁夫の利」を取り損ねた哀愁が漂っていた。
by miltlumi | 2014-01-20 21:28 | マンモス系の生態 | Comments(0)
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