その1.はこちら・・・
その2.はこちら・・・ 繰り返しになるが、内田樹の言葉をもう一度引用する。 「『あなたって人間がよくわかったわ』というのは愛の終りに告げられる言葉である。「よくわかったから、結婚しましょう」というように言葉が続くことはない」 この台詞が、オンナ言葉として記述されているところに注目したい。 10年前一世を風靡した(と私が固く信じている)「話を聞かない男、地図が読めない女」という名著に詳しいが、他人に対する観察眼は遺伝的に男よりも女のほうが優れている。従って、一般的に他人のことはなかなかわからないとはいえ、相対的には「あなたのことがわかる」度は女性のほうが高い。だからこそ、内田氏はおそらく無意識のうちに冒頭の台詞を女言葉で表記したのであろう。 「よくわからない」「だからもっと聴きたい」という「懇請」がコミュニケーションを先に進める、と内田氏は言うが、もしかすると女性の「コミュニケーション術」はもう少し高度かもしれない。 友人が、奥さんが恐くてしょうがない、うちではひたすら妻に従うほか生き延びる術はない、と言っていた(この手の恐妻家の話は、大概のろけの裏返しと思われる)。結婚前は全然わからなかった、職場で甲斐甲斐しく尽くしてくれ、なんとなくいい感じなのでケッコンしてみたら、気づいたらこうなっていたという。 想像するに、彼の奥さんは内田氏の説を逆手にとった非常に賢い女性で、(「その1」に書いたように)結婚前はわざと相手に「わからせない」ようにしたのではないか。彼は素直に、「わからない」から「わかりたい」と思ってケッコンしてしまった。そして、妻のことが「わかりかけた」ときには、逆に妻に「あなたのことが、よお~くわかりましたっ」と言い渡されるのを恐れるほどに力関係が固定化されていたのである(あくまでも、想像です)。 きっと、奥さんは既にかなり「わかっている」。その上で「わからない」ふりをして、「わからないから教えて」とコミュニケーションを促すのである。いわゆる、お釈迦様の手の上の孫悟空ですね。 百戦錬磨の男性に、奥さんに一番やってもらいたくないことを尋ねたときの答えは、これ。 「はっきり言わずに、私、実は知ってるのよ、みたいな素振りを示されることだな」 万が一にもスネに傷がある場合、ももももしや、バレているのでは…という懸念ほど、男性を恐怖に陥れるものはない。夜遅く帰ってきても、にっこり笑って出迎えてくれて、「お茶漬けでもいかが?」なんて言われたら、毒でも盛られているのではと茶碗を持つ手もわなわなしちゃいそうである。 妻が「わかってる」のか「わかってない」のか「わからない」ことが、品行を方正にする抑止力となる。そして、家庭円満。 ちなみに件の恐妻家は、まったくの濡れ衣をかけられたことがあるという。必死で弁明する彼に、奥さんは最後通牒をつきつけた。 「カンタンなことよ。相手を殺して、あなたも殺す。そうして、私も死ぬわ」 やっぱり、彼はタダのノロケ話をしていたのである。 ・・・その4.に続く
by miltlumi
| 2013-07-12 07:39
| 私は私・徒然なるまま
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