日本を代表する大企業にガイジンを連れていく機会があった。昔は自分自身がそういう大企業に属していたが、外部者として訪問するのは新鮮である。
きっちりお化粧して、思い思いのスタイルでスカーフを首に巻いた受付嬢3名。約束の時間を1分過ぎていたため、急ぎ気味に一人に声をかける。 「少々お待ちくださいませ」 取り上げた内線電話がなかなか通じないらしい。ようやく先方と何やら話し、ネームタグを持って立ち上がったかと思ったら、私の前に受付をしていたらしき男性のほうに歩いていった。次か、と思ってじりじりと待っていると、彼女は席に戻り、身の回りの文房具などを荷造りし、やおら立ち上がる。カウンター後方に同じユニフォームを来た女性が立っている。どうやら交代の時間だったらしい。バトンタッチするまで、約2分。 仕掛かりの客1組くらい、対応してから交代してくれればいいのになあ、と思うのは、勤務時間や業務ルールの遵守を重んじる大企業から、すでに私が遠く隔たってしまった証拠であろう。 結局5分強遅れて会議室に通される。名刺交換が終わると同時に尋ねられる。 「何を飲まれますか?」 世の中、贅沢になったものである。コーヒーにミネラルウォーター、コーラにオレンジジュースにジンジャエール、なんでもあり。中島みゆきの「おまえの家」という歌の歌詞が頭の中で流れ始める。 ♪喫茶店に来てる気はないさ♪ けれど思い返してみれば、私が属していた大企業でも、20世紀の頃から同様のシステムを備えた会議室フロアがあった。内線電話が置かれた部屋の片隅のテーブルにパウチっこされたメニューが置いてあって、値段まで書かれている。注文した飲み物とともに経費精算シートが差し出され、その場で部課コードを書き込む。そうだった。大企業は、ミネラルヲーターひとつにも部課ごとに経費を割り振るのた。 会議が終わり、1階に降りる。ちょうど定時の退社時間らしく、大勢の社員が一斉に同じ方向に歩いていく(たぶんノー残業デー、というやつだ)。つい一緒に歩き始めて、タクシーを拾いたい私たちはこの方向ではないことに気づく。人の流れの中に立ち止まり、誰とはなしに声をかけた。 「あのお、タクシーを拾うにはどちらの出口をでればいいんでしょう?」 誰も立ち止まってくれない。「あのお」といいながら、反射的に(こういうとき世話を焼いてくれそうな)女性を目でとらえようとするが、決してこちらに視線を向けようとしない。コトバも挙動もいっさい通じない異国、というより異星に紛れ込んでしまったようで、一瞬泣きたくなる。ついに強引に、一番優しそうな顔をした男性に「すみません」と声をかけると、ようやく目を合わせてくれた。 雨があがった屋外を歩きながら、改めて哀しい気持ちが湧いてきた。社長にお手紙書いちゃおうかしら、と思うのは、私がオバサンになった証拠だろうか。
by miltlumi
| 2013-04-25 18:41
| マンモス系の生態
|
Comments(0)
|
カテゴリ
マンモスの干し肉 マンモス系の生態 私は私・徒然なるまま 機嫌よく一人暮らし アインシュタインの言葉 忘れられない言葉 サラリーマンの生活 慣れてない男たち フォトアルバム 父の記憶 Vacation in Hawaii ! Vacation in Bali 初秋のヨーロッパ Vacation in Hanoi Seoul Trip Ubud in 2013 Ubud in 2014 イレウス奮闘記 NY after 8 years リーダーシップ論 みるとるみ版・映画評 セドナの奇跡 スリランカ♡アーユルヴェーダ三昧2018 バルセロナの1月 以前の記事
2024年 02月 2023年 11月 2023年 10月 2023年 08月 2023年 07月 2023年 06月 2023年 05月 2023年 04月 2023年 01月 2022年 12月 more... メモ帳
最新のトラックバック
検索
タグ
男と女
思い出
言葉
しあわせ
干し肉
ウブド
モチベーション
一人暮らし
腸閉塞
バリ
マンモス
イレウス管
体験記
コロナ陽性
アインシュタイン
村上春樹
断捨離
アーユルヴェーダ
うちさぽ東京
金融業界
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||