人気ブログランキング | 話題のタグを見る

解決しないという解決 (下)

(上)はこちら・・・
(中)はこちら・・・
 本来「勝ちたい」という闘争欲求は、女性より男性のほうが強い。なのにあえてこのように勝ち負けをはっきりさせないのは、どうしてだろう。それは、勝ちたくないからではなく、負けたくないから、ではないか。
 負けた暁に待っているの己の死のみ、という昔の戦争ならともかく、今日び、文字通り相手の息の根を止めるまで徹底的にやってしまうような戦いはむしろ珍しい。企業や国家は、ある程度力の差が明らかになればそれ以上の深追いはせず、「まあこのへんで勘弁しといたろか」ということになる。その際、どっちが勘弁してやったのかわからないようにしておけば、少なくとも外野から「アイツ負けたんだぜ」と後ろ指を指されることにはならない。勝ちたい気持ちが強いからこそ、圧勝の見込がない場合はいっそ結果をうやむやにしてしまうのではないか。
 それでも、当事者同士はどちらに分があったのかちゃんと認識していて、目に見えない借方・貸方帳簿を共有している。次にまた戦う機会がめぐってきたとき、「あのときの貸し、忘れてないだろうな」と暗黙の裡にプレッシャーをかける。
 こういう腹芸ができなくて、「ここでハッキリさせましょうよっ」などと上司に喰ってかかる正直者は、たいがい出世の道を閉ざされる。まことに、オトナの世界は難しい。

 女性は、自分の気持ちに正直であり、その正直な気持ちに従って行動する傾向が強い。産む性として自己防衛本能が発達している分、自分のコンディションにセンシティブであり、身体や心が発するシグナルを尊重して行動するくせがついているせいだと思う。
 だから、パートナーの本当の気持ちをちゃんと確かめたいし、逆に自分の気持ちが冷めてしまったらそれをはっきり伝えたほうが礼儀だと思っている。本来明確な営利目的を持っている企業で働くときも、その目的達成にそぐわない非効率な会議や意味不明の人事には我慢がならない。
 しかし、そういうきっぱりした正直な態度が絶対に功を奏するとは限らない。時には曖昧な態度のほうがまるく収まることもあるのが、この世の中の面白いところである。

…ということが理解できたのは、ようやくつい最近のこと。色んな所で正論振り回していた私は、なんと世間知らずだったことか。
 もう一つ(遅ればせながら)気づいたのは、モノゴトをまるく収めることの大切さ以前に、自分としてどうしても白黒はっきりさせないといけないと思う大切なことと、そこまで拘る必要のないことを区別して、後者は適当に手を抜けばいい、というプライオリティーづけ。性格上、曖昧な要素はできるだけ排除したほうが気持ちはすっきりする。けれど、別に私自身に大きな影響を与えるわけではないことにまで徹底追及路線で突き進むのは、エネルギーの無駄である。当事者がそれでいいと思っているなら、ふーん、そーなんだぁ、と放っておけばよいのだ。
 いずれにしても、この歳になってようやく常識的なことを学んだ私は場外として、外交官や政治家やビジネスマンの皆様には、解決すべきことは解決し、解決せずにおいておくことは置いておき、ぜひ大人の戦略・戦術で他国・他社・他人との関係をうまく構築していっていただきたいものである。但し、余談ですが、女性との関係は、週刊誌にすっぱ抜かれる前にちゃんと白黒はっきりつけたほうが、おそらく身のためだと思います。
by miltlumi | 2012-10-10 12:08 | マンモス系の生態 | Comments(0)
<< インドの簡易冷蔵庫とメキシコの... 解決しないという解決 (中) >>