少し前、信州のお味噌をいただいた。これが実に美味しい。いつもは全国区大手メーカーの出汁入りのお味噌で十分満足しているのだが、やはり木桶で1年以上寝かせて作った天然醸造のお味噌は、格別である。
さほど量を入れなくても、十分美味しいお味噌汁が作れる。半透明のお汁に半殺しの大豆と麦の粒が泳いでいるのを見るのも、舌で柔らかい粒々の感覚を味わうのも、いと好まし。 お味噌汁だけではもったいないので、鮭とキャベツの味噌炒めや鶏とごぼうの味噌煮などでも楽しんだ。 さらに料理本を参考にして、豆腐ステーキのトッピング用に、生姜と紫蘇のみじん切りにみりんをお味噌に混ぜたものも作ってみた。最初は生姜がきつすぎたが、数日たつうちに素材同士が馴染んできて、なんともまろやかになってくる。これが美味しい。というより、旨い、と言いたくなるような、素朴な美味しさ。 大したおかずがないなあ、という週末の昼食。ふと思い立って、白いご飯にこのお味噌をのせて海苔で巻いて食べてみた。おいしい。ニッポン人に生まれてよかった。そんな感じ。これだけでおかわりできちゃいそう。 そういえば、昔の酒呑みは塩や味噌を舐めながら杯を重ねたという。肴は炙ったイカでいい~どころの質素さではない。でもそれは、海からそのまま汲み上げた天日干しの塩だったり、村はずれの蔵でほんの少しだけ作られる天然醸造だったりしたのではないだろうか。 …などと通ぶったことを言っているが、冷奴や湯豆腐の美味しさに目覚めたのは、ほんのここ数年のことではなかったか。「やっぱり日本食だよね」と思うようになるのは、歳をとるにつれて体重や健康を意識するようになるせいというより、DNAの底の方に潜んでいた大和民族の血が騒ぎ出すためだという気がする。 日経新聞の土曜版で、月に1回掲載される「食の履歴書」。有名人が食べたいと思う「最後の晩餐」はどれも素朴だ。ふわふわの卵焼きとか梅干しのおにぎりにお味噌汁とかラーメンとか。案外そんなものなんだろうな、と思う。 母は、「何が食べたい?」と尋ねるとたいがい「トンカツ」とか「ステーキ」と答えるほどの肉好きである。この敬老の日の連休中、甥っ子の分もあわせてロースやサーロインのステーキ肉をデパ地下で仕入れて、保冷剤たっぷりの断熱袋に詰め込んで持って行った。 兄が合羽橋で仕入れた南部鉄の分厚い鉄板でじゅうじゅう焼いたステーキに舌鼓を打ちながら、ソースはもちろんおろしポン酢。テーブルには母が作った筑前煮と義姉が用意した梅ちりめん&鰹節トッピング冷奴が、しっかりジャパニーズを演出していた。
by miltlumi
| 2012-09-18 10:10
| 機嫌よく一人暮らし
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