友人の大学教授の要請で、就職活動開始直前の大学3年生10人に話をする機会があった。「転職経験をもとに、会社を選ぶポイントは何ですか?」という質問に対し、すかさず「自分が好きなモノ・コトに拘ること」と答えたところ、隣に座っていた教授から「あ、でも、好きなことが何かわからない場合もあるから、まずはやってみて…」というフォローをいれられた。
超氷河期の今、確かに「好きな」仕事に就けるラッキーな学生は何%くらいいるだろう。そういえば、仕事で出会う他社の人達の中にも、「仕事はつまんないですから」と開き直る人は少なくない。 それでも、本当に真剣に仕事に取り組もうと思ったら、やはり自分の好きなことでなければ、続けていけない、と思うのは、私の驕りだろうか。 これは、しかし実体験に基づいた私の偽らざる実感である。会社訪問解禁が大学4年の10月1日だった古き良き時代(でも男女雇用機会均等法施行前だった。歳がばれるが)、ノンポリの私は、好きも嫌いも深く考えず、とりあえず4大卒女子が入れそうな会社を適当に選んで面接をし、某家電メーカーに就職した。 その会社を辞めた最大の理由の一つが、「家電が嫌い」という致命傷。気づいたのはずっと前だった(どうせなら面接前に気づけよ)が、どうにかこうにか自分をごまかしながらやってきたものの、ついに言い訳のタネが払底し、年金権利も早期退職金受給資格もないまま、辞めることになった。 それでも、嫌いだから辞めるなんて、コドモみたいな行動は社会人としていかがなものか、と言われるかもしれない。しかし幸か不幸か、入社当時の会長の、入社式での常套句が「この会社が自分に合わないと思ったら、とっとと辞めてくれて構わない」というような会社であった。さらに言えば、新人時代の私のチューターは、常日頃から「面白くなければ仕事じゃない」と豪語していた。 もっと白状してしまうと、新人として配属された当日、課長の訓示を受けた後、「何か言いたいこと、訊きたいことはありますか?」という社交辞令を真に受け、信じ難いことに「私は滅私奉公をするつもりはありませんから」という、サラリーマンとしてありうべからざる失言を吐いた私に対して、その課長は「そういう態度、僕は大好きだ。人生仕事だけじゃない」と褒めて(?)くれたのだ。 すごい会社だったな、と改めて思う。22歳のひよっこ時代からそういう環境で育ったおかげで、仕事だからといって、好きじゃないことをやり続ける忍耐力を養う機会を逸した。 結果、今や気ままな自由業。気持ちよくやっている仕事もあれば、うまく回らないプロジェクトもある。なぜうまく進まないんだろう、と胸に手を当てて考えたら、PJの目的そのものを好きになれないことに気づいた。 好きでもないことに夢中になれる、あるいは夢中になっているうちに好きになれる、そういうスキルを身につけるにはもう手遅れだ。
by miltlumi
| 2011-11-16 21:09
| マンモス系の生態
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