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東証の斉藤氏とオリンパスの菊川氏の共通点

 昨日の日経朝刊1面を見た瞬間、「うぷぷっ」と思わず声を出してしまった。東証と大証の合併記事。斉藤惇氏の顔写真。
 著名なビジネスマンと、単に挨拶をする程度の間柄というのは全然自慢にならない(「こんにちは」だけなら3歳児でも言える)が、斉藤氏のことは一応存じ上げている(個室でグラスを傾けあったこともあるから、お酒の飲めない3歳児よりは優勢であろう。もちろんツーショットではない)。
 その合コンの前にお会いしたのは、ちょうど産業再生機構の解散が確定した頃。68歳の彼にとって、機構が花道と頭から信じ込んでいた無邪気な私は「引退なさったらどうなさるんですか?」と質問した。東証の件はまだ公になっていなかったから、社長に就任もしないうちから早々とインサイダーで捕まることを当然恐れたであろう彼は「町田の自宅で庭いじりするのが楽しみですねえ」とにこやかに応じられた。
 数週間後に社長就任記事を目にした私は、え、庭いじりするんじゃなかったの、と本気で思った。当時はまだマンモス狩り理論の発案前夜であり、いかにも私は世間知らずであった。今思えば、あのような錚々たる経歴をお持ちの斉藤氏が、そうやすやすと引退なさるはずもない。あれから4年後の今、引退どころか、合併によって狩場はさらに拡大する。

 おしなべて言えることだが、マンモス狩りの主戦場である大企業において、役員まで上り詰めた猛者の中でも、特に団塊世代より一つ前の方々は「生涯現役」を標榜する方々が多いように思う。
 指折り数えてみれば、彼らが成人した頃、まさに所得倍増計画がぶち上げられ、社会に出るとともに未曽有の高度成長を体感した。30代の働き盛りの頃にオイルショックを経験し、困難を乗り越える術と根性と達成する快感を身につけた。バブル絶頂期は50歳になるかならないか、おそらく同期の桜を振り切って早々に役員の座に収まるか、射程距離内に入っており、重責を担うスリルと社用車の快適さを味わってしまった。
 「右肩上がり」を実話として体験した、最初で最後の世代である。だから引退は、のんびりと盆栽を愛でる気持ちのいい日々を意味するのではなく、アドレナリンの分泌機会を略奪され途方に暮れてしまう、忌むべき状態なのだろう。
 それはもう理屈ではなく、身に沁みこんだ習性なのだ。団塊世代以降の、へなちょこマンモス狩りとは、肝の入り方がちがう。しかし、その力こぶがあらぬ方向に走ると、ものすごく危険である。

 今日の夕刊。オリンパスの不正がついに白日の下に晒された。菊川氏は斉藤氏より2歳年下。やはり「あの」世代であった。私との接点は、幸か不幸かない。ともあれ彼は、右肩上がり神話の崩壊、ましてや投資運用損などという本業でない戦場での失点など、我慢できなかったのではないか。
 ちなみに、社長の暴走を止めるべき山田監査役は1944年生まれ。とっとと白状してしまった森副社長は1957年生まれで、その報告を受けてびっくりした高山社長は1949年の団塊世代。
 東証の社長には、ぜひ資本主義の原点に立ち返った厳正な処理をお願いしたい。
by miltlumi | 2011-11-08 21:25 | マンモス系の生態 | Comments(2)
Commented by 同期のお坊さん at 2011-11-11 10:28 x
私の上司は80歳、70歳、63歳。いずれもかつてのマンモス狩りの名人XYたち。日々リピートされるマンモス狩りの自慢話を繰り返し拝聴するのが私の仕事。。。へなちょこマンモス狩りの気持ちは複雑、この名人たちは話す能力はあっても、聞く能力がない。。。XYの宿命か?
Commented by miltlumi at 2011-11-11 11:21
それはそれは、お疲れ様でございます。「あの世代」が3人も現役でいらっしゃるなんて。。。 一種の介護だと思って、にこにこと相槌を打つしかないですね。あるいは演劇の練習だと思えば、毎日同じセリフに同じ相槌を打つのも、ひとつの芸術と思えるかも・・・!? 
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