関西旅行中、久しぶりに激しい花粉症に悩まされた。嵐山とか有馬温泉とか鞍馬寺とか、思いっきり杉花粉が舞い飛んでいる場所はもちろん、平地でも、口を半開きに間抜けた顔で、出そうで出ないくしゃみを待つという情けない状態。
それが、花粉のピークを迎えているはずの東京に戻ったら、ほとんど問題ない。関東地方の花粉には免疫ができているのだ。昔は東京でも花粉症だったが、季節初めに薬を飲まずに免疫ができるのを待つという治療をしていたら、軽症になった。友人も同じ治療法を実践している。 あと1週間も関西にいたら、きっとあちらの花粉にも免疫ができていただろう。花粉全国制覇に向けた第一歩だったのに、惜しいことをした。ともあれ、慣れというのはすごい。人間の身体は逞しいものである。 そういう意味では、10日ぶりの東京の駅の暗さには最初驚いたが、2日で慣れてしまった。オフィスビルの稼働エレベーターが半減しても、待ち時間が倍になった気はしない。 ローソンのドリンク棚がほぼ空になっているのを見ても、新浪さんが頑張って東北地方に物資を送ってるんだな、と思うくらいである。旅行前に食料を買いだめていたおかげで、まだ1度もスーパーに行っていないから、品薄の状況を見てまたびっくりするのかもしれないが、幸い乳幼児を抱えていない私は、淡々と水道水を飲むだけだろう。なければないで、慣れる。 昔の仕事仲間3人、Skypeで原発の情報交換をしながら、「今更後戻りはできないからなあ」とため息をつく。そうだろうか。私の花粉のように、案外すぐ慣れてしまうのではないか。 少なくとも駅の照明は今のままで十分、と思うのは私がまだ健康なせいだろうか。そもそも、お天道様が届かないところは暗いのが自然の道理。不必要なまでに煌々と照らすのは、闇が敵の襲来を意味した太古の時代の恐怖がDNAに染み込んでいるせいではないか。 クルマや電車も、もちろん今の世の中には不可欠だが、本来動物は自分の足で歩くのが一番自然。全面的には無理でも、歩く機会を少しだけ増やしたらどうか。その分オフィスに着くのが遅くなっても、そのせいで韓国・中国メーカーにやられてしまうほど生産性にインパクトがあるか。 少し前まで慣れ親しんでいた、少し不便な生活に戻れないのは、戻ったら現代資本主義社会から取り残されるのでは、という恐れのせいだろうか。あるいは、そこまで深くも考えず、単に「以前の生活に慣れるわけがない」と思い込んでいるなら、ちょっと考えものではないか。 人間も自然の一部だということを、ここでもう一度よくかみしめてみたらどうだろう。石器時代までは後戻りできないけれど、行き過ぎた生活の一部分だけでも、ほんの少し自然に寄り添ってみられないだろうか。 「明日は暖かくなりそうだから、計画停電はしません」というニュースに、ささやかな情緒を感じる。
by miltlumi
| 2011-03-29 17:24
| 機嫌よく一人暮らし
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