小さい頃、家族と喫茶店に入って注文するのは「プリンアラモード」か「チョコレートパフェ」と決まっていた(何しろスパゲティーといえば「ミートソース」と「ナポリタン」しかない時代だったのだ)。
高校1年のときに初めて男の子とそういうお店(といっても、イトーヨーカドーに併設されたDenny’sでした)に入ったときは、めいっぱいオトナのふりをして、相当地味(だと私なりに考えた)クリームソーダを注文した。しかし彼は私の上を行っていた。 「アイスコーヒー。ガムシロップ別でね」 なにそれ。高校生のくせに。小学校の頃から親に「子供がコーヒーを飲むとばかになりますよ」と言われ続け、特別な日の給食に出てくるコーヒー牛乳しか飲んだことのなかった私は、無条件に反発を感じてしまった(コドモだね)。しかもガムシロップ別って、なにかっこつけてんのよ。目の前に座っているスポーツ刈りの学ラン姿が、どうにも空々しく感じられた(タダの偏見ですけど)。それ以外にもおそらく理由はあっただろうが、結局その男の子とはそれきりだった。 噂によると、彼は自分が300円のコーヒーだったのに、私がそれより50円(80円だったかな)高いクリームソーダを注文したと、憤慨していたらしい。お小遣いが月3000円の時代。彼も、私も、みんな慣れていなかった。 晴れて喫茶店でコーヒーを注文したのは、大学受験に受かって入学式を間近に控えた春先だった(大学に合格したのが、18年間コーヒー断ちしたおかげかどうかは、証明不能である)。アイスコーヒー。もちろんガムシロップは別で。 そうやって人は大人になっていく。大学1年。東京の私立高校出身の男の子に連れて行ってもらった渋谷パルコの地下のコーヒー専門店。「僕、キリマンジャロね」とお姉さんに声をかける彼に、もはや「何かっこつけてんの」とは思わなかった。大学2年。ラ・マレー・ド茶屋で「本物の彼」とお茶したときは、なんだかとっても出世した気分になったっけ。 社会人になって、渋谷・葉山はもちろん、外国でも、色んなものを飲んだ。夏、トロントのハーバーフロントで乾いた風に吹かれて氷を鳴らしたコーヒーフロート。留学先の下宿を探す友達と道草したロンドンのアフタヌーンティー。マンハッタンの冬の朝、スーツ姿の金髪と一緒に並んで買った水筒みたいに大きなカップの薄いコーヒーとシナモンベーグル。イスタンブールのグランド・バザールでパシュミナを値切りながらご馳走してもらったアップルティー。こうして、色々なことが当たり前になっていく。 少し前、友達のうちに行ったら、チャイを淹れてくれた。インドにはまだ行ったことがないけれど、とても美味しかった。遠くまで来たな、と思った。
by miltlumi
| 2010-09-14 19:12
| 慣れてない男たち
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