学生時代の男友達と1年ぶりに会った。このブログを愛読してくださっていて、開口一番「世の中『マンモス男』ばかりじゃないことを今日はわかってほしい」と宣言した。
曰く、学生時代の彼は相当に成績優秀で、超一流の会社に入って将来を嘱望されてマンモス道まっしぐら、のはずだった。が、その道を外れたのは、社会人3年目、長距離恋愛の彼女からの1本の電話だった。 「来週の水曜から金曜まで東京に行くから、木曜日に鎌倉行こうよ」 木曜日に鎌倉? 横須賀線で1時間だから、定時で上がっても着くのは7時じゃないか、と戸惑う彼に、彼女はあっけらかんと言った。 「有休、あるでしょ」 マンモス系組織における有給休暇は、インフルエンザで39度の熱が2日たっても下がらないとか、北海道の親が危篤で朝一番の飛行機で戻っても始業時間に間に合わないとか、そういう緊急事態にしか発動されない伝家の宝刀。そ、それを、平日の真っ昼間オンナと鎌倉行くのに使っていいわけ!? しかし彼は、彼女の魅力に負けて決行した。そして発見してしまったのだ、平日の昼間の観光地が、いかに人が少なくてのどかで贅沢な気分が味わえるかを。 その彼女とめでたく結婚した彼は、以来有休をとりまくり、挙句の果てに社費留学して欧米の大学で長い夏休みを何度もとりまくって、世界各国、彼女とふたり旅行三昧の人生。そしてついに、社内のすみっこの静かな部署への片道切符を渡されたそうだ。 もちろん彼は後悔しているわけでは決してなく、唯一残念なのは、世界中を旅した体験を分かち合える人が、マンモス男ばかりの社内には見当たらないことだそうだ。 ほとばしるような彼の打ち明け話に、私はひとこと。 「それって、元祖マンモスの王道じゃないですか?」 元々、男がマンモスを狩るのは単なる手段であり、究極の目的である女に食べさせるためだった。それが、狩りの時のアドレナリン放出快感に惑わされて、しかも産業革命以降は資本主義という小難しいルールのせいで知的面白みが増し、いつしかマンモス狩りが目的化してしまった。次に技術が発達して、うちで待っているだけだった女たちも簡単に扱えるマンモス狩りのツールが世に普及すると、男たちの目的だったマドンナその人が、マンモス狩りのライバルになるという皮肉な状況まで生じるようになった。 という悲劇に比較すれば、資本主義マンモス狩りで実力を誇示して意中の女性を仕留めるかわりに、単純にマンモス狩り現場から退場してひたすら彼女と時間を共にするという戦略をとった彼は、元祖マンモス系、というよりマンモスさえも不要とする超マンモス系(この「超」は「とても」でなく「超える」という意味ね)ではないか。大英帝国博物館に展示したくなるような貴重な存在である。 ちなみに彼の結婚式は、旅行中に立ち寄ったトルコの島で出くわした地元民の結婚式会場に飛び入りして、新婦のウェディングドレスを借りて記念撮影をして、披露宴のご馳走をおすそ分けしてもらった、40分間だったそうだ。
by miltlumi
| 2010-09-04 15:10
| マンモス系の生態
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