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社長の資質

 勇気ある女性が、ものすごおく有名なやり手の社長に尋ねたそうだ。
 「髪の毛と背と、もらえるとしたらどちらが欲しい?
 その社長は、ハゲでチビ、だったんです。この率直な質問に彼が気分を害したかどうかは知らないが、答えだけはしっかり明言なさったという。「髪の毛」と。
 それを聞いた私と友人は、どうも承服しかねた。私は以前も白状したように、一族郎党全員ハゲなので、頭髪の薄い男性へのアレルギーは全然ない。友人のご尊父様はロマンスグレイの素敵な方だが、彼女とて「身長のほうが重要でしょ」とのこと。調査によると、Fortune500の社長の半分以上が6フィート以上だとか。
 かの社長氏がパパイヤ鈴木のような髪の毛を所望していて、それさえ手に入れば一石二鳥、と目論んでいるなら別だが、本来彼が求めるべきは、やはり身長ではないか。社長たるもの、ベンツSクラスの後部座席にどっしりと腰を落ち着けたら、助手席のヘッドレストが倒れてるのに前から姿が見えなくなっちゃって、黒革張りシートで足がブラブラしてるなんて、威厳も何もあったもんじゃない。それから、トレードショーのキーノートスピーチで、前座が下がった後おもむろにステージに登場して、しかつめらしい表情を浮かべてマイクロフォンの角度を下げる、あれ、すごく屈辱的。
 そもそも禿げるのは男性ホルモンが多いから。禿げは男らしさの象徴なのだ。ある男性(これまた有名な会社の社長候補と言われている。40代前半)は、「ハゲたら剃る」と宣言しておられた。これぞ男の中の男、将来の社長に相応しい、潔い態度ではないか。

 とはいえ、髪の毛も身長もほとんど先天的なもので、それがないと社長になれないとなると、世の中救われない。後天的な努力によって身につけられる社長の資質とは? 
 私なら、「ユーモアのセンス」と答える。不透明な時代を見抜く先見性とか適材適所のための人を見る目とか、色々あるけれど、24時間気の抜けない厳しいビジネスの世界で、ふっと場のテンションを和らげ、社員が明るく前向きに難題に取り組める雰囲気を作るのも、社長の大切な資質ではないか。

 社長への初めてのプレゼンで、カチンカチンに緊張している部長を目撃したことがある。正面には、議題と発表者である彼の氏名がでかでかと映し出されたスクリーン。上背があって真黒いくせ毛をおしゃれにセットした社長がのしのし登場し、スクリーンを一瞥。部長の表情がさらに固まる。そこで、社長の最初のひとこと。
 「あんたんとこは、葬式のとき『エサシケケ』って看板出すのか~」
 部長の苗字は「江刺家」。葬式だろうと結婚式だろうと、そりゃあ「江刺家家」って書くしかないでしょ。天下の社長は、こんな変化球で部下の緊張をほぐすんだあ、と感心している私に、隣の課長が「社長、天然だよ」とささやいた。
 ユーモアのセンスもやはり先天的な資質だろうか。
by miltlumi | 2010-08-14 21:11 | サラリーマンの生活 | Comments(0)
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