Tomb stone(トゥームストーン、墓碑)、と聞いて、「ふふ、オレ3つ(もしくはそれ以上、あるいはそれ以下)持ってるもんね」とほくそ笑んだ方は、立派なマンモス系である。
元々は株式等を発行した会社が募集完了後に出す公示広告のことを言うらしい。そこから転じて、株のトランザクションに係るディールが成立したときに、売り手・買い手及び双方のアドバイザーに配るガラスやプラスチックの置物のこともTomb stoneと呼ばれる。 私が最初のTomb stoneを手にしたのは、もう10年以上前。社内のプロジェクトチームの一員として、米国の会社に戦略的投資を実行した後だった。米国側のチームメンバーからのFedexに、何が入っているのかしらとルンルンしながら包みを開けると、まさに墓石のようにずんと重たくて、意味不明な形をしたガラスの物体。げっ、なにこれ。 リビングルームに置くには趣味が悪すぎるし、漬物石にするには小さすぎる。大体、重い癖に中途半端にハンディな大きさのこんなものをオフィスや家庭に置いてたら、近隣者と言い争いになったときに凶器に変身してしまうリスクがあるではないか。無邪気な私は、速やかに「燃えないゴミ」のボックスに直行させたのだ。 金融業界の、しかも立派な個室を持つ方々とおつきあいするようになって、あの漬物石もどきが窓際にずらーっと並んでいるのを目にしたとき、アレは捨てちゃいけなかったんだ、ということにようやく気付いた。しかも、石に彫られる社名は、主幹事からきっちり順番に並べるそうで、つまるところマンモス狩りで重要な役割を果たした順が明記されているわけだ。嗚呼、墓石もまた、牡鹿の頭の剥製を壁に飾る狩り自慢の表われ(同じ趣旨のエントリーはこちら)。 男の人って、ほんっとに「形」から入るのが好きだよね。それとも、女性でも外資系コンサルのパートナー&マネージングディレクターくらいになると、立場上墓石集めしているのだろうか。 でも振り返ってみると、同じ金融業界でも、私が働いていたPEファンドでは、投資実行したからってその都度わざわざ墓石を発注したりしなかった(同業他社はどうか知らないけど)。投資した会社の価値を上げて株式を売却しないと本当のクローズにはならないので、入口段階でお墓作ってるヒマはないのだ。 もしかして、Tomb stoneに重要な意味を置くのは、瞬間風速的にディールに絡むタイプのお仕事に従事する金融マンの特徴だったりして? そういえば、現役銀行員だった小椋佳が作った歌に「Tomb stone to the sky」というのがあった。墓石は空へ。潔いなあ。
by miltlumi
| 2010-08-12 08:57
| マンモス系の生態
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