入社1年目の初夏のこと、2年先輩のチューターが、1ヶ月英語研修に行くことになった。私が所属する「北米課」は、New Jersey州にある米国販売子会社とのリエゾンを担当していたので、英語力は高ければ高いほうがいい。だからこうした研修は当たり前なのだが、とり残される私は不安なこと甚だしい。配属されてまだ3ヶ月、一通りの業務は教えてもらったものの、まだまだ見よう見まね。
ただ、同じチームには29歳の先輩女性がいた。蛇足だが、入社当時のMy 7不思議のひとつは彼女のことだった。髪が長くて化粧っ気の薄い顔立ちがとても可憐で、親切でおしとやかなのに、29歳にもなってどうしてケッコンしていないんだろう。「クリスマスケーキ」説が、まだ死語になっていない時代だった。 それはさておき、私のチューターであり、チームリーダーである彼の不在中は、彼女と二人でどうにか業務をこなすしかない。研修は都内だし夕方以降なら電話は通じるから、とチューターに諭されながら、3人でにわか引継を行った。 しかし、それでも心配だったチューターは、米国側のカウンターパートである男性日本人赴任者及び現地の女性スタッフ数名に英語でテレックスを打った。 「私はX月X日から1カ月間英語研修に行って不在にするので、その間はMs.XXとMs.XXが業務を担当します。 …云々かんぬん。」 そしてその最後のパラグラフ。 「Since they(29歳の彼女と私)are just pretty girls, please don’t hesitate to call me anytime, if any urgent or critical issues happen.」 わーい、Pretty・カワイイって言われちゃった♪と能天気かつアサッテな反応をしたのは地球上で私だけ。太平洋の向こう側の女性達は、このあからさまな男女差別的・屈辱的発言に激怒して即刻Human Resource division…ではなく、彼女らのボスである日本人男性のもとに駆け込み、ブーイングの嵐。日本時間朝一番、彼がチューターに国際電話をかけてきて、ウーマンリブの国を相手に国際的事業を展開する上での心得をとんとんと説いたのは言うまでもない。 このことは、「Pretty girl事件」として、北米課内はもちろん隣の欧州課やアジア課でもしばらく語り草になった。蛇足だが、もう一人のPrettyな先輩は2年後に社内結婚し、私はフリルつきの手作りエプロンをお祝いに贈った。 時は流れ、最近「結婚しました♡」報告をくださった私の女友達は、36歳・37歳・36歳・38歳(うち2回目は1名だけ)。蛇足だが、私は28歳で結婚した。マトモな年齢でしょ? ある銀行では、一般職採用の女性を大量に総合職ダッシュの職系(仕事は総合職だが、転勤がないなどの条件がつく)に転向させた。彼女らを育成して、しかるべきポストにつけたいのだが、昇進昇格をちらつかせればガンガン仕事をして管理職ポストをとりに行く男性総合職と違い、彼女らのドライバーが異なることに、計画を推進している男性は戸惑っていた。 昭和は遠くなりにけり。平成の時代に求められているのは、男性の認識だけでなく、女性の覚悟だ。
by miltlumi
| 2010-06-21 21:10
| マンモス系の生態
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