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旅先で読む本

 海外旅行の前は、バケーションを思い切りバーケーションらしくするための準備が色々ある。準備をしながらワクワク感を醸成していき、出発日当日に気分の高揚が最高値に達するよう、十二分に注意を払う。あまり早くから準備を始めると出発前にピークアウトしてしまう。ぎりぎりに準備すると不完全燃焼で離陸しちゃうみたいで、かつ忘れものをする可能性が高いという実利的なマイナス面もあり、よろしくない。
 数ある準備のうち、洋服選びは例外として(女性たるもの、どんな服を何枚持っていくかは最大のHeadacheかつPleasureである。…こうやって英語を使い始めること自体、既に気持ちが国境を越えつつある証拠だ)、最大に留意するのは、何冊どの本を持っていくかということ。

 椰子の木が茂るプールサイドで、あるいは石畳の路地の奥のカフェで、時間に追われることなく心行くまで読書にふけるのは、バケーションならではの醍醐味。期待に胸ふくらませながら開いた本がつまらなかったら、目も当てられない。特に重くてかさばるハードカバーは、絶対に面白そうなものを選ばないと、旅先のゴミ箱に突っ込んでしまいたくなる悲劇を免れない。
 幾多のTrial & Errorの結果、リスクヘッジのために、ほぼ安全牌と思われる作家(江國香織・村上春樹など)の新刊か、一度読んだことのある文庫本を1・2冊リストに加えることを基本ルールとした。それでもカナリア諸島では、アフターダークがあまりに面白くなくてすごいショックだった。同行した友達に、不幸の手紙よろしく「面白くないからあげる」と渡し、2日後に「何書いてあるのかわかんない」と差し戻された。一方、面白いかどうかわからないから上巻だけ持って行った「ダヴィンチコード」でリカバリーショット。やはり友達に渡して、「どうして下巻持って来なかったの?」と怒られた。

 初めて読んだ本は、その内容とそれを読んだ場所が分かち難く結びつく気がする。ダンス・ダンス・ダンスは、マルタ島で読んだ。だから今でも、北海道の吹雪のシーンを読むたびに脳裏に浮かぶのは、地中海の燦々とした太陽とライムストーンの城塞だ。逆に去年行ったローマには、塩野七生の「ローマは1日にしてならず」上・下を持参した。ひねりもウィットもないが、観光ガイド代わりにも使えて、それはそれで結構面白い。沖縄で読んだ吉本ばななの「アムリタ」もTPO的にしっくりきた。

 今年は、一定の出来栄えが期待できる「1Q84 book3」があったが、4月の発売から1ヶ月以上もの「つんどく」に耐えきれず、既に読み終わってしまった。初めての作家だから冒険はすまいと、自宅で読み始めた領家高子の「鶴屋南北の恋」は大穴。あと半分近くだが、中断してハワイ島に持って行きたいくらいだ。でもやはり明日くらいには読み終えてしまうだろう。今回の安全牌は、ディケンズの「荒涼館」になりそうだ。
by miltlumi | 2010-05-19 21:21 | Comments(0)
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