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アメリカン・ジェントルマンシップ

 ジェントルマンの定義をご存知ですか?
「ジェントルマンとは、なにをしてもジェントルマンである男を言う。」
(塩野七生著「男たちへ」)
「ジェントルマンの定義をすべて満たすような男はジェントルマンではない。」
 (中野香織著「スーツの神話」より。出典不詳だそうです。。。)

 平民の私は、本物のジェントルマンに出会ったことはない(出会ったとしてもそれがホンモノかどうか判断できる能力がない)。でも、本場イギリスはさておき、とある時期にアメリカで出会った二つの経験。

 その1。離婚ほやほやのとき。心の傷を癒すため(?)一人でマウイ島に旅行した。プールサイドはアメリカ人のカップルや家族連れでいっぱいだった。季節はずれだったせいか、オアフ島でなかったせいか、日本人はほとんど見なかった。だから日本人の女性(しかもヒマワリ柄のでっかい浮き輪にしがみついて一人で泳いでいる)はちょっと目立ったかもしれない。
 プールと読書に飽きると、ホテル内の土産物屋さんをつぶさに見学する。自分用に、竹の模様を透かし彫りしたキャンドルスタンドを買い求めた時、店番の男性が聞いた。
 「Are you traveling alone?」
 「Yes. I’ve just divorced.」
 にこやかに答えられた自分に、ちょっと感心してしまった。「これなら大丈夫だ」と思った。そして彼もさらりと続けた。
 「Oh, I’m sorry. My wife died three years ago. You know, this is life.」

 その2。旧姓に戻ったことを社内に知らせた翌日、NYに出張した。同じグループ会社のいつものメンバーに加え、プロジェクトを共同推進する他社の新しいメンバーもいる会議に出席した。「初めてのメンバーもいるから、自己紹介しよう」という呼びかけで、円卓の順に所属と名前を言っていく。私の番になった。
 「Effective from yesterday, I’m back to my maiden name, XXXX.」
 会議に出席している日本人は私一人。離婚が日常茶飯のアメリカ人達の間で一瞬空気が凍った。そして2秒後、グループ会社のAlというひげもじゃの巨漢が立ちあがり、私に向かって大きな手を差し出した。
 「Congratulations!」
 救われたような表情の皆がそれに唱和したとなると、私も思わず右手の親指を立てて笑顔で応えてしまった。会議が終わって二人きりになった時、今度は真剣な表情で、Alが私に尋ねた。
 「Are you OK?

 アメリカ流ジェントルマンの定義。他人の状況や気持ちを慮って、当意即妙にパーソナルな言葉をかけることのできる男性。
by miltlumi | 2010-04-18 10:26 | マンモス系の生態 | Comments(3)
Commented at 2010-04-19 17:14 x
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Commented at 2010-04-19 18:34
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Commented at 2010-04-24 23:03 x
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